●免疫システムはどんな医療にも勝る病気に強いメカニズム
そもそも人体を構成している細胞は60兆もあることを考えてみましょう。
60兆の細胞がそれぞれ自らの役目を務めながら秩序を守り、ひとりの人間の
体を機能させているのです。
もし、人体がひとつの国だったらと想像すると、賞賛に値するくらい従順な
国民と精密な国家システムです。これが本当に国ならすぐにテロが起きたり、
クーデターによって国家体制が変わったりしそうなものです。
ところが、人体は違います。生まれてから次々と細胞を増やしながら、人体
そのものの機能を増やし、何十年も生命活動を維持し続けるのです。
そう考えれば、従順さを忘れ、悪さをする細胞がでてきても不思議はありま
せん。それも40数年経ってから初めて起こされた暴動であれば、それまで起き
なかったことの方が驚きです。
暴動だってなんの理由もなく起きません。人体を取り巻く環境が汚染されて
いたり、本来人体にとって適さない状態が続くことで、60兆の細胞のなかに不
満分子が生まれ、決起したのがガンだとすれば、原因を究明し、それ以上不満
分子を増やさないようにすることが先決です。
人体にとって適さない状態とは何でしょう。あいまいな言葉ですが、それは
多くの人がかかえているストレスだといえます。
ストレスを受けたままの状態では、いくら従順な細胞であっても正常に機能
していくのに耐え切れなくなるのでしょう。はじめはきちんと働かなくなり、
次にサボリだす。さらに進めば害を及ばす行為に走るわけです。そういった不
満分子がさらに不満分子を増やしコロニーを作る。
それがガン細胞の増殖で生じる腫瘍です。
もともと、ガン細胞だって正常な細胞だったのです。それがストレスのかか
った状態に体がさらされることによってガン化する。一般社会とよく似ていま
す。社会情勢が不安定になると、犯罪が起きやすくなり、一般民衆の生活を脅
かします。犯罪者を取り締まろうとしても、次から次へと新たな犯罪が生まれ、
イタチごっこが続くわけです。
ガン細胞も同じことです。手術、放射線、抗ガン剤でガンばかり取り去ろう
としても、根本の原因である人体を取り巻く環境、体内環境を改善しないこと
にはガンを治すことはできないのです。
毎日のようにガン細胞はできています。しかし、免疫システムによってガン
細胞は死んでいきます。人体には生命を脅かすほど深刻な状態にならないよう
な防御機構が確立されているので、少々ガン細胞ができてもすぐに対処できる
のです。つまり、免疫システムが十分に働ける状態さえ保っていれば、人体は
深刻なガンには簡単におかされないようにできているのです。
脳神経外科医 沼田光生(ぬまたみつお)