■『亀屋ミュージック劇場』


イナダ組「亀屋ミュージック劇場」  (2001年 第23回公演)


STORY
 昭和の終わり頃の浅草にあるストリップ小屋『亀谷ミュージック劇場』を舞台に繰り広げる人間模様。
 立ち退き問題や借金でつぶれそうなストリップ小屋。年老いたストリッパーや訳ありのストリッパー。
 きっぷだけ良い支配人。何故か小屋に出入りするうだつの上がらない刑事。
 そしてかっては人気を博したが今じゃ落ち目めな芸人の師匠。

   どう考えてもつぶれるしかないストリップ小屋『亀屋ミュージック劇場』に
 一人の若者がお笑い芸人を目指しやってくるところから物語は始まる。

 なんとか見習いのかたちで芸人を目指すことになり小屋で働きだす。
 そして小屋に居るそれぞれが抱えるしがらみや問題を目にする。

   そんなおり、ダメな師匠のせいで小屋の権利書をおかしな地上げ屋に取られてしまう。
 しかもその地上げ屋は師匠のかっての相方であった。途方にくれる小屋の面々。
 自分の身を売り小屋を助けようとする年老いたストリッパー。出入りする刑事との恋仲。
 地上げ屋と師匠の過去の出来事。

   さまざまな人の葛藤を若い芸人を目指す一人の男の目をとうして昭和と言う時代、
 そしてなくなっていく者への悲しさを描きだしていく。


私・的・感・想


イナダ組の「亀屋ミュージック劇場」
これは、本当に好きで、事あるごとに見ているので、何回観たかわからないですf(^_^);


これは、昭和の終わり、平成になる前のお話。浅草で「昭和の芸人」が全盛だった頃のお話。
その頃のストリップ小屋というのは、今のような過激なものではなく
踊り子が誇りを持って踊っていた時代。
しかも今の有名な芸人は、昔は全てストリップ小屋で修行をしながら有名になっていったものでした。
そんな、ストリップ小屋で踊り子と芸人が織り成す、笑いと人情の物語。
面白くて笑えて、人の優しさに触れて涙する。そんなお話です。


このお芝居は、NACSからは大泉氏と、音尾氏しか出てませんが、


音尾氏には、中盤に心が締め付けられるほど、せつない別れのシーンがあります。

音尾氏の役は、家庭がありながらストリッパー(リリー)と不倫をしている、うだつのあがらない刑事役です。
しかも、ギャンブルや、子供の養育費で、切羽詰ってしまい、多額の借金を抱えてしまいます。
そのため不倫相手の他の店に売ろうとしたり、挙句の果てには店に火をつけようとします。

それを、大泉演じる師匠に見つかってしまい、ここまできてしまったのなら、
「家族をつれて逃げちまいな(夜逃げ)」と言われ、家族を選んだ彼は、
リリーとの別れ際、普段クチばっかり達者な彼が、一瞬無言できつく抱きしめることによって
愛情が全て伝わってきて、観ているこちらもせつなくなります。
ここらへんの演技が、すごく男気を感じさせるんですね。
音尾琢真と言う人間の、演技の幅の広さを感じさせられるシーンです。



一方、大泉氏の役は、過去に消せない心の傷を追っている師匠の役です。
この役もまた、それを表にはいっさい出さずに、おちゃらけてばかり。

実はこの師匠、過去に相方の人生を自分のせいで狂わせてしまった過去を持っていたのです。
その為、自分はどんなに落ちぶれてしまっても、この浅草で芸人をつづけているそんな役柄です。
中盤にその内容を語るシーンがこれがまた、心にグッと来るシーンです。
岩尾さんもこの舞台に客演しているんですが、一緒に唄を歌うシーンなどはかなり涙です。

終盤に逃げた刑事が川で水死体で見つかったと言う記事を見つけます。
そこに地上げ屋がやってきて、それが地上げ屋のせいと知ったリリーは、
逆上し包丁を振り回すうち、師匠を刺してしまいます。

この段階で、今までずっとおちゃらけていた師匠が初めて、刺された腹を押さえながら、
地上げ屋(昔の相方)に対して、「帰れぇ!」と叫ぶのです。
そこまでの感情の持って行き方、ジワジワと怒りを静かに高めながらも、
黙っていて最後に叫ぶ、そんな演技を魅せてくれました。


最後、血で真っ赤に染まりながらも、リリーの最後の舞台を見届ける師匠の姿が昔の芸人魂なんだろうな。
と感じさせられました。


この物語、それぞれの役者の演技がどうと言うのでなく
イナダさんの作った脚本にすごく惚れています。

この後に『カメヤ演芸場物語』があるんですが、私はやはりこちらが好きですね。


以上、今回の舞台感想日記でした<(_ _)>



■関連日記/ 2005年10月22日


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