旅の途中、寄り道の日々

旅の途中、寄り道の日々

Before Story


Parallel World ~the liars~




著作・管理・編集:NEROWIZ

この作品には、管理者『NEROWIZ』の著作権が発生しております。無断での使用、又は作者を偽っての公開を禁じる物とします。
この作品はフィクションです。物語中に登場する個人・団体名は、現実の同名の個人・団体とは何の関係もありません。
また一部暴力的な表現や罵詈雑言が使われおりますので、それに嫌悪感を感じる方は注意してください・・・稀、ではありますが。
作品を読み終えたら是非、感想やコメントを残して下さい。
悪い点でも良い点でも構いません。
どちらにしろ恐らく管理人は狂喜乱舞すると思われます。
悪い点と良い点の指摘は非常に有難い物です。悪い部分は指摘しないと直らないと言いますし、良い部分も指摘しないと伸ばす事も難しい・・・と個人的にも思います。
今後の作品作りに活かしたいと思いますので是非ご協力お願い致します。
また内容は予告なく変更する事がございます。ご了承下さいませ。


争いと陰謀と日常と。
身を置くことは立場故に運命。
汝嘆こうとも。
封印されし涙は落つることはあらず。
之は、汝の始まりにして鍵となる前菜。
其は、汝により紡ぎだされた惨劇なり―――

(ゼヴェルビッチ=V=M=ベルトナーゼ著、「汝に罪を封印す」より抜粋)



気がつけば、一人。
瓦礫の山に一人、立っていた。
右手には一振りの長剣があり。
左手には黒く染まった刻印があった。

そう。
天を仰ぎ、涙する。
我が父、母、兄――
我によって滅され、浄化された者たちに、我は唄おう。
歓喜と興奮に満ち溢れた鎮魂歌を・・・。


瓦礫に咲いた花が揺れた。
夕日に照らされたその花は。
それはとても悲しげで。
それはとても儚くて。
それは、我が手には届くことの無い美しさだった。
・・・花を手にすることが許されぬ手。
黒く染まった我が刻印。
歓喜に打ち震え、喜びの余り気が狂いそうなこの身を沈める為に。
我は誓った。
「永遠なる封印に我が身を置こう。その中で暗黒を見続けるとしよう。」
風が吹く。
「故に我、その対価を求めんとす。」
渦を巻く。
「我が左手なる刻印を崇めんとする者よ。」
髪を、衣服を巻き上げる。
「我と共に生き、我が永久なる友とせん。」
空間が捩れ、虚無を成す。
「主神よ、この行いを、我が術を見たならばっ!」
魔力が編まれ、漆黒を成してゆく。
「どうか我に、天衣無縫なる使い魔を・・・!」
それは形を成した。
漆黒の鎧に身を包み、
漆黒の双剣を背に背負い、
漆黒の髪を持ち、
そして、禍々しく輝く金の目を持つ者。
「・・・よくぞ、我の元に参られた・・・。」
「・・・。」
「我が名は・・・」
「よい・・・敬語もやめて戴きたい。」
「・・・?」
「主よ。例え我が身削られ、磨耗しようとも。・・・貴方を、護り抜こう。」
・・・だんだんと記憶にノイズがかかる。
それは頭を埋め尽くし。

それから。

・・・記憶が。

無く・・・なった・・・。



「ふぅ・・・」
最近、だが。
嫌な夢を見るようになった。
父、母、兄・・・
肉親を次々斬殺し、詠唱魔法によって家を完膚なきまでに破壊し。
そして、・・・漆黒の騎士を召還する。
あれは・・・?

自分の幼少期の記憶は無い。
だが、あの時の・・・俺・・・は、間違い無く七、八歳だろう。
どうしてだろうか。
俺の記憶には全く覚えの無い・・・それでいてリアリティのある夢。
妄想という可能性は0%だ。
だが、事実という可能性も無きに等しい。
ベッドの上で一人、頭を抱える。
第一、俺は一人っ子では無かったか。
・・・理解できない。

俺の記憶に誰かが上書きしたのだろうか?

・・・頭を振ってその結論を消去する。
そんな馬鹿馬鹿しいことがあるはずが無い。


こうしていても、理解できることは永遠に無いだろう。
そういうときは寝るに限る。
寝て、忘れてしまおう。

・・・ナニモカモ、ワスレテシマエ・・・。


・・・黒い黒い静寂のセカイ。
「また、ここか・・・」
一人呟く。
「ソウ、マタ、ココダ・・・。」
背後からする声に振り返ると。
そこには。
・・・俺の知らない俺がいた。
目は赤と金に輝き。
顔は禍々しいオーラに包まれ。
体は返り血でマッカニナッテイル。
手からはボトボトと血を落とし。

・・・漆黒ノ鎧ニ・・・身ヲ包ミ。

・・・・・・漆黒ノ双剣ヲ、背ニ背負イ。

・・・・・・・・・漆黒ノ髪ヲ、持チ。


「グギャゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲケケケケケケケケケケケケ!」


そうだ、俺は・・・俺は・・・っ!


目を、覚ますと。
眩しいくらいの白い朝のヒカリニ。
カラダガ・・・トケソウニ・・・ナッタ。
「く・・・ぁ・・・」
体を起こすと、いつもと違う部屋が目に入る。
・・・そうか、俺は『学園』の寮に入ったんだっけ。
「よう、ようやく起きたか。」
しかし、俺の周囲にいる人間は変わっていない。
「おぉ・・・おはよう、ダン。」
「ったく、新入生の最初の授業から遅刻するかと冷や冷やしたぜ。」
「流石にそりゃ無い。俺はいつだって――」
「よく言うぜ・・・入学式初日から遅刻してきた癖に。」
「うぐ・・・あれは不慮の事故で・・・っ!」
「・・・確かお前の言い訳は、『道で困ってたおばあさんを道案内してあげたら歩道橋からバランス崩した妊婦さんが落ちてきて、その人を助けたら路地裏からヤクザが出てきて、アクション映画バリの逃走劇を行った末にたどり着いたのがこの学校だった』だっけか?」
「・・・。」
「まぁ、あれだ。」
「何だよ。」
「授業には間に合ったとは言え朝食の時間は過ぎてるからな。飯が下げられる前にお前のも食っといてやったぜ。感謝しろよ。」
「マジで?超ありがてぇ!感謝感謝・・・するわけねぇだろうがっ!」
俺の飯を返せー、とダンに襲い掛かる。
こんな。
愉快に笑えている俺が。
アンナコトヲシタナンテ。
シンジラレルワケガ・・・ナイ。



「ふむ・・・」
数奇なる運命と言うべきか。
今回もまた、彼は私の生徒となったようだ。
いや、ここまで偶然が続けば当然と言うべきだろうか?
何にせよ、これは非常に都合が良い。
電話を取り、ダイヤルをプッシュする。
「・・・もしもし、君か?引き続き監視を頼む。・・・ああ。そうだ。くれぐれも過激な発言は控えてくれ。」
通話を終え、窓から外を見てほくそ笑む。
「・・・待っていろ。すぐに、始末してやろう。」
懐から写真を出し、眺める。
「我が愛しき者よ・・・!」
そろそろ腰を上げる時だろう。
そうすれば、来年頃には・・・。
そう思い、再度番号を押す。
「・・・政府か?こちらはコード00001。首相を頼む。」
首相に繋がれている間の待機時間。
笑いを堪えきれずに一人、爆笑をする。
「ククク・・・ハハハハハハハッ!いいぞいいぞ、我と同じく苦痛を味わえ!身内を殺される痛みを!身を切られるような思いを!」
闇夜の月に高笑いが響く。
それは狂気の具現。
悲しみと憎しみと愛情によって織り成された交響曲。

そして一年後。

セカイは・・・

動き出す。




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目次に飛びます。
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