みなさま、お久しぶりです。 2008年1月15日 ですから 2年半以上 のご無沙汰になりますね。さて、今回久方ぶりに更新しようとしたのにはちゃんとした理由があります。まずは、今日が 文字・活字文化の日 であり、 読書週間の初日 であること。そして、この『 濫読屋雑記 』が 開店5周年目 に当たることの2点であります。多分、 この機会を逃すとナァナァになってしまい、放置ブログ化してしまう可能性が限りなく高くなるので、欝で薄弱となっている精神を奮起させてパソコンの前に座っている次第であります 。
さて、この2年半以上の間、一応はブログの掃除はしていたのですが、なかなか更新する気力が起こりませんでした。それでも、私の駄文を読みに来てくださった皆さん、そしてお気に入りに登録してくださった方々、とくに Me169 さんにはブログの更新の要望をまで出していただいて本当にありがたかったです。 ありがとうございました 。 以前のように更新ができるとは思いませんが、ぼちぼち本と図書館に関する話題を綴っていきたいと思っております。
さて、再開初日、何について語りましょうか。やはり、読書週間初日ですから本についていつものように語りましょう。では、最近読んだ デイビィット・ベニオフ 著/ 田口俊樹 訳『 卵をめぐる祖父の戦争 』(早川書房、2010年8月)について、内容と読んだ感想をつらつら述べていきたいと思います。
時は、1942年。第二次世界大戦真っ盛りのソビエト連邦の主要都市、 レニングラード (現: サンクト・ペテルブルグ )が舞台です。ちなみに現在はロシアとCIS諸国となっているソビエト連邦では、第二次世界大戦のことを「 大祖国解放戦争 」呼称しています。脱線しましたが、その レニングラード はこの大戦中、世界最長の900日の包囲戦、1941年9月8日~1944年1月18日間、を戦い抜くことになります。当然、市民の死者は凄まじき数に上りソ連政府の発表では67万人、一説では100万人とも言われています。当然、包囲下に置かれたレニングラードでは食料が欠乏、さらに冬の寒さが追い討ちかけてこのような膨大な死者の数になったわけです。
前置きが長くなりましたが、このような状況下の レニングラード が舞台のこの『 卵をめぐる祖父の戦争 』とはどのようなお話なのでしょうか。
時は1942年1月、当時17才だった主人公 レフ は、住まいである<キローフ>という名前の共同住宅の屋上で、消防団員の一員として配置についていました。そこへ一つの落下傘が落ちてきたのです。ついにドイツ軍の空挺部隊の攻撃か、と思いましたが落下傘は一つだけ。そこで、消防団員の仲間と共同住宅を駆け下り、落下傘を追いかけます。そして、見つけた落下傘には凍死したドイツ兵の死体が。みんなそれ、とばかりにドイツ兵の身ぐるみをはがしにかかったのですが、そこへ軍用トラックが急行してきます。そして哀れレフ一人だけが逃げ遅れ、兵士に逮捕されてしまいます。夜間外出禁止令違反も、消防団の職場放棄も、当然略奪罪も死刑です。この時、 レニングラード では警察組織は機能してなくて犯罪=死刑という極限状態にあったのです。そんな絶体絶命のピンチにあった彼は、獄中で一緒になった饒舌で奇妙なユーモアの持ち主の脱走兵、 コーリャ と知り合います。そして翌日、獄中から引き出された彼らは、 NKVD (秘密警察)の大佐から、その命と引き換えに、 娘の結婚式のウェディングケーキの材料として卵1ダースを5日以内に持ってこいという、人を喰ったような、笑うに笑えない極秘命令を受けるのです 。こうしてふたりの、卵を求めての一大冒険が始まる、というのがこのお話の冒頭部分です。
そして、その二人が卵探索の旅の途上で出会うのは、飢餓によってむしばまれた市民、コーリャの愛人、ドイツ兵の慰み者となる少女たち、そして パルチザン (ソビエト軍(赤軍)をモデルとして作られた共産主義のゲリラ(非正規戦)部隊。ソ連政府の統制および指揮を受け、ドイツ軍の後方、特に道路や線路など輸送機関の破壊を最大の目的としていた。)の少女と敵国ナチスドイツの殺人集団、 アインザッツコマンド (ナチス・ドイツの保安警察及びSD長官(のち国家保安本部(RSHA)長官)ラインハルト・ハイドリヒにより創設された部隊。武装親衛隊:SSやゲシュタポが主体となりナチスドイツ占領下のパルチザンの掃討やユダヤ人虐殺を担当した。)の残虐非道な少佐など。二人の心が壊れてしまっても仕方ないような筆舌に尽くしがたい体験、 レニングラード のヘイマーケットの人食い夫婦がすりつぶした人肉でソーセージを売っていたとか、住んでいた共同住宅<キローフ>が爆撃で跡形もなく崩壊した、犬が爆弾(戦車の下に潜り込んで爆発する、対戦車犬)になっていた、凍りついた兵士の死体が立て看板になっていた、顔半分を失ったパルチザンが悲しい眼を殺人者に向けて、雪の上で体をゆらゆら揺らしていた、というような身の毛のよだつ体験が数々が続きます。 馬鹿馬鹿しさを通り越してどこか滑稽で仕方ない物語の進展と、決して避けて通れない戦争の厳しく無残な現実。そんな中にあっても下ネタと文学談義と恋愛指南といったふたりの掛け合いは限りなく明るく、これがかえって戦争への痛烈な風刺になっています。
構成は作者同名の小説家が祖父の戦争体験談を聞き書きしたという体裁をとっています。どこまでがフィクションでどこまでが事実なのか、読後に読者を煙に巻く著者、 ベニオフ 。さすがハリウッドでは映画『 トロイ 』や『 X-MEN 」シリーズのスピンオフ作品『 ウルヴァリン:X-MEN ZERO 』の脚本家として活躍しているだけあり、映画にしてもさぞさまになるだろうという小説だと思います。帯にも書いてありましたが、本当に良質の「 傑作歴史エンタテイメント 」です。
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