12月に入りました。師走ですね。 私の勤める高校では、今日から2学期の期末試験が始まりました。試験中は午前で生徒は下校するので、よっぽど家で勉強するのが嫌な生徒か、友達同士でワイワイやりながら勉強する生徒以外は図書館に来ません 。 ですので、今日は静かなものでした 。このような時に、書架の本の移動やら生徒がいるときにできない仕事をまとめて片付けるのですが、幸いというかその様な重労働は2年生が修学旅行中に1年生の図書委員を使って(3年生は受験の最中ですからね)終わらせておいたので、 また~りとした1日を過ごすことができました 。
その様な理由で、 今日はお昼、3時のお茶の時間にゆっくりと本を紐解くことができました 。これまで、比較的古い本ばかり紹介してきたので、今日は装備する前の新刊本を読んでみました。その本が、 畠中恵 著『 【送料無料】若様組まいる 』(講談社、2010年11月)です。
この本は畠中さんの書いた『 アイスクリン強し 』(講談社、2008年10月)のお話の少し前を描いた小説です。ちなみ『 アイスクリン強し 』の紹介を簡単にしておきますと、ビスキット、チヨコレイト、アイスクリン、シユウクリームなどのお菓子が、南蛮菓子から西洋菓子へと呼び名が変わり、新たな品々が数多登場した明治時代初期。東京で、士族出身の孤児として築地の外国人居留地で生まれ育った 皆川真次郎 (通称 ミナ )は、念願の西洋菓子屋・風琴屋を開きます。そこには ミナ の親友の、若い元幕臣の警官達が甘い菓子目当てにやってきます。そんな菓子作りの修業に精を出したい ミナ に、厄介事が次々と降りかかり・・・。という展開でお話が進んでいきます。本屋さんのレビューでは『 著者の魅力全開!明治の築地居留地で、西洋菓子屋の若主人と元幕臣の警官達「若様組」が繰り広げる「スイーツ文明開化」騒動記。 』と書いてありました。
さて、紹介した文章の中に出てきた「旧幕臣」、旗本の子息で警察官になった「 若様組 」の警察官たちがこの『 【送料無料】若様組まいる 』の主人公になります。内容の方に入っていきますと、時は1887年(明治20年)、徳川の世であれば「若殿様」と呼ばれていたはずの旧幕臣の子息、 長瀬健吾 たちは暮らしのため、 巡査になることを決意します 。そして、試験を受けて芝愛宕の巡査教習所で訓練を受けることになります。ところが、 ピストル強盗の噂が絶えない物騒な昨今、教習所でも銃に絡む事件が発生。若様組の他、薩摩組、直参で徳川について静岡に行った士族達の静岡組、商家の子息達の平民組といったさまざまな生徒に、何やら胡散臭い所長や幹事、教師や武道師範たちを巻き込んで、犯人捜しが始まる 、といった感じでお話が進んでいきます。
このお話、主人公は旧幕臣の子息で20歳の若様組の頭という 長瀬健吾 という人になります。彼が、 士族は商売は向いてないし、賊軍出身だから官吏になっても出世は見込めない。だから巡査になってはどうか、といって巡査への道に若様組の面々を誘うわけです 。そんな若様組の面々は、美男子だが血の気の多く手の早い 園山 さんを筆頭に個性派ぞろいで読んでいて楽しいです。また、前作『 アイスクリン強し 』の主人公 ミナ こと 皆川真次郎 が西洋菓子を持って文中の端々に出てきたり、これも前作のヒロイン、若様組のマドンナ、女学生の 小泉沙羅 さんが若様組の 福田 さんの恋人、 百合 さんを見合いから救うなど、 前作の登場人物も端々で活躍しています 。
また 私的には、鉄砲が出てくるのが良かったですね 。明治といいますか戦前の警察官、町の巡査はサーベルしか携帯してなかったのですが、それでも射撃訓練は受けていました。明治初期にはこのお話の鍵になるピストル強盗などが跋扈していたからです。有名なところでは、清水定吉という日本初の拳銃強盗犯が1882年(明治15年)から、覆面をして拳銃を使用、東京市で80件以上の強盗を行い5人を殺害しました。拳銃を使用した強盗事件は日本犯罪史上初めてのことであり、当時の首都は震撼しました。しかし日本橋区馬喰町の商家に押し入った直後の1886年(明治19年)12月3日未明に同区浜町で逮捕されます。その際に、清水に不審尋問をした久松警察署小川佗吉郎巡査が清水の発砲で重傷を負い、その後回復し2階級特進で警部補に昇進しますが、4か月後に傷が悪化し翌年、死亡しています。その年の9月、清水は死刑に処されて事件は解決しました。といった様に明治初期は治安が悪かったのです。作中でも西洋菓子職人であるミナがピストルの射的の名手である理由は、外国人居留地で西洋人からピストルの射的の指南を受けていたからです。当時、外国人は居留地の外を出歩くときは必ず拳銃を男女問わず携行していたそうです。
最後にこの『 【送料無料】若様組まいる
』は前作を知らずとも読めますが、先にも書きましたが ミナ
が所々に登場していたりするなど随所にニヤリとする部分があるので、 やはり前作も目を通した方がより楽しめると思います
。また、巡査教習所の授業の内容も興味を惹きます。武道や法律関係、巡査になるにはなかなか厳しいのだな、と感じました。 日常として授業の様子や苦労っぷりは出ていて面白いです。話は紹介であったように教習所での事件が主軸として描かれていますので。 そしてそれぞれに重い物を背負った登場人物、一筋縄ではいかない個性的な若様たちが出張る話のためか、賑やかにポンポンと小気味良く進んでいくので非常に楽しめました
。 最後も、すっきり終わる作品なので、読み物として純粋に面白く読める一冊でした
。 個人的には、続編が出ると良いなと思います
。
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