寒い日々 皆様の体調は如何でしょうか? 空気も乾燥しているので、インフルエンザも心配ですね。私の勤める高校でもインフルエンザによる出席停止者が出てまいりまして、保健部から注意するよう生徒に指示が出ています。そんな状況なのですが、 実は図書館というところはウィルスにとっては住み心地が良い環境なのですよね 。ご存知のように本は湿気を嫌いますし、とくに我が学校の図書館は北向きでクーラーの暖房を入れても室温が20度手前しか上がらない寒い部屋ですので、空気の入れ替えなんてできません。それでも一応、冬場は観葉植物を置くなどしていますが、気休め程度しかならないのでしょうね。3学期は授業数の関係で調べ学習が多くて、図書館に40人程度の生徒がやって来て、時間当たりの人口密度が高くなるので、風邪などの危険性がますます増すのですが・・・。 仕方ないですね 。
そんな、冬特有の問題を考えながら今日も仕事の合間に読んでいたのは、日曜日に名古屋の 三省堂高島屋店 で購入した本の中の1冊、 菊池良生 著『 【送料無料】警察の誕生 』(集英社、2010年12月)です。
ご存知でない方がいるかもしれないので、ちょっと書いておきますが、 私は大学・大学院時代に主に旧帝国海軍を中心とした政治史と軍事史を専攻していました 。その関係で、軍事・海上保安・警察関係の方面に今でも興味・関心があります。 勿論メインは、海軍・海上保安ですが、その周縁部にも常に学術情報の収集を続けている次第であります 。
そんな理由で購入した『 【送料無料】警察の誕生 』ですが、中身の内容はといいますと以下のようになります。まず、序章が「 江戸の「警察」組織 」、次の第1章が「 古代ローマ「警察」制度 」、第2章が「 中世の「警察」制度 」、第3章が「 中世の都市の発展 」、第4章が「 嫌われるウィーン市警備隊 」、第5章が「 パリ「警察」の成立 」、第6章が「 警察大改革前のイギリス旧警察 」、第7章が意味深な章名「 「ありがたき」警察 」で、最終章が「 近代警察の誕生 」で終わっています。この本の作者の 菊池 先生は、明治大学の理工学部教授で、専攻は オーストリア文学 だそうです。ですので、近代警察の発祥の地、イギリスや日本が近代警察の導入の見本としたフランスと並んでオーストリア・ハプスブルグ帝国の警察制度が紹介されているようです。
さて、本文の紹介&解説&私見を書いていきましょう。 序章から第4章までは私の関心外なのと文章の長さの関係で省略して、第5章をちょっと紹介してみます 。第5章「 パリの~ 」では、フランスでの警察組織の成り立ちが紹介されています。16世紀半ば、パリでは「 王の夜回り 」と呼ばれた国王から給金を貰っていた小規模な職業的な巡回パトロールと、中世以来の市壁防衛の街区システム以来の伝統である「 同業者組合の夜回り 」がありました。それにプラスして臨時の制度として後に「 ブルジョアの夜回り 」が発動されます。 この法的に市民権を持つブルジョア=市民からなる夜回りは、自警組織として街区の自治の象徴でした 。 それゆえに、無給で武器も自弁で 「 同業者の夜回り 」 も同様に商人や手工業者の自治活動の一環であり、手弁当の組織でした 。ですので当然、 都市の拡張と共に市民や商工業者の間でこうした自弁の夜回りを嫌う傾向が出てきて、それは、地位の高い連中に特に顕著になってきました 。そのような連中は金で自分の代理を送り込み、これが夜回り要員の傭兵化となり、治安の悪化に繋がっていきます。 そこに目を付けたのが国王です 。 古都パリの自治権を奪うチャンス到来とばかりに 、「 同業者の夜回り 」 を廃止して市民や商工業者の義務を金納化させて 「 王の夜回り 」 に一本化して 、 強化しようとしたのです 。これに対して、 パリ市は猛然と反対するも、市民の自衛の意識の希薄化と夜回りへの拒否感によって 「 同業者の夜回り 」 は廃止されてしまいます 。
これが、1559年のことです。さぁ、ココから一気に中央集権化、といきたかったのでしょうが、時代は三十年戦争、宰相リシュリューとルイ13世の死、さらに幼少のルイ14世の即位とルイ13世時代の中央集権的国家再編への反動であるフロイドの乱と激動の時代が続き、警察権の掌握どころではありませんでした。ようやく、ルイ14世が宰相マゼランの死後、親政を開始して、絶対王政確立への道を突き進むことになるのです。それが、1666年にパリで開かれた 警察改革諮問会議 であり、その最初の成果が同年12月に発布された パリ市の警察条例 でした。この条例は、 パリ市の危機的状況、人口の異常な増加と、それによる治安の悪化、さらにペストの脅威が加わって (街の清潔さを強権で確保するには警察権力の確立が必要だったため)、 作られたものです 。これは 、これまで高等法院のイニシアチブにより、街区から選ばれた名望家や上層階級が広く参加して治安と警察問題を議論していたことへの介入でした 。そして、 パリの街区にいた村の駐在さんみたいに市民に近かった治安維持官、警視を核にして街区住民の自治に近い形で維持されていた治安は、市民が参加できなくなって、国王直接の管轄事項になってしまったのです 。
さらに国王側は、警察条例の発布後に間髪要れずにパリ市の自治権への介入を行います 。 警察長官職の新設です 。これは、中世以来の自治都市パリの既存の伝統や特権をいっぺんに覆すクーデターでした。 国王側は、中世以来、パリの様々な身分・官職・諸団体がそれぞれ分有していた諸権利を「王権」のもとに一元化するために警察長官に強大な権限、犯罪防止・摘発のみならず言論統制、経済活動の監視・保護、さらには、都市計画、保健衛生などの都市行政全般にわたる広範囲な権限を与えたのです 。こうして、 警察が都市行政全般を管轄する方式は、その後のヨーロッパ大陸の警察制度の雛形になります 。そして、この警察長官に稀代の財政家で政治家であるコルベールが任命した逸材が就任して、フランス絶対主義は確立していくのです。
このように、 「警察」について考えるということは、すなわち「自由」について考えることなのだと感じます 。 この本の中で他国、オーストリアやイギリスなど各国の警察の歴史を追う中で最も印象的だったのは 、「 民衆が勝ち取った自治は、多くの場合、民衆自身の手によって投げ出される運命にある 」 ということです 。 警察のない自由を追い求めていくと、必ず不自由に陥るという、不思議なパラドックスがそこには成立していることに本書を読んでいると気づかされます 。 規制とは、自由にとって必要悪な存在なのであることがよくわかった一冊でした 。
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