風邪をひいてしまいました。そのため、今週は散々な気分で過しました。風邪に欝が加わったので、それはひどい目にあいました。それでも、今週は卒業式がありましたし、来週かには司書部の研修会があって、学校を休むことが出来ませんでした。元々、有給休暇が少ないですしね。
パトレシア・C・リーデ 著、 田中亜希子 訳『 【送料無料】囚われちゃったお姫さま 』(東京創元社、2008年6月)を取り出してみます。
まずは、この本の作者である パトリシア・C・リーデ さんについて簡単に紹介をします。彼女は、1953年アメリカのイリノイ州シカゴ生まれです。1977年ミネソタ大学でMBAを取得後、財政アナリストや会計士の仕事をしながら執筆活動を続けます。1980年には、後にThe Scribbliesとして知られるようになる作家集団を結成します。1982年に最初の作品を出版、その後、専業作家になり、この「 魔法の森シリーズ 」の第1巻が 全米図書館評議会(ALA)のヤングアダルト部門の最優秀図書に選ばれます 。現在では「 魔法の森シリーズ 」全4巻を始め、いくつものファンタジーを書き好評を得ています。現在はミネソタ州ミネアポリスで3匹の猫と暮らしているそうです。このように、アメリカで新進気鋭のファンタジー作家の作品であることを頭の片隅において置いてください。
さて、本書の内容ですが、主人公はリンダーウォール王国の末の姫 シモリーン です。 この姫さまは、お姫さまらしくするのが大嫌いで、剣術、ラテン語、経済学に魔法にお料理と、夢中になるのはお姫さまにあるまじきことばかりです 。そこで困り果てた王様とお妃さまの策略により、隣国のめちゃくちゃハンサムな(だけの)王子と、無理やり婚約させられそうになります。そこで、 シモーリン姫 は お城の庭の池にいた蛙の助言を受けて城出を決行します 。ところが、飛び込んだ先は・・・ なんとドラゴンでいっぱいの洞窟だったのです 。普通ならドラゴンに食べられておしまい、なのでしょうがそ こは普通でないお姫さま 。 なんとドラゴンを説得?して押しかけ「 囚われの姫 」になってしまったのです 。
で、この「 囚われの姫 」になった過程が面白いのです。まず、飛び込んだ先の洞窟には5頭のドラゴンがいて後からもう1匹来るのですが、当然、自らドラゴンの「 囚われの姫 」志願をするお姫さまに対して胡散臭げな反応します。 シモーリン姫 は「 ドラゴンはお姫様が好きだから 」といってしばらく「 囚われの姫 」として働かせてくださいとお願いするのです。それからまた シモーリン姫 の「 囚われの姫 」になりたい理由も笑えます。「 そうすれば、うちに帰らなくてすむし、セランディル(例の王子)とも結婚しなくてよくなるし。それに、ドラゴンの囚われの姫になるのって、カンペキに尊敬される行為だから、お父さまやお母さまだって文句をいいません。あと、ここで働くのは、刺繍やダンスのレッスンにくらべたら、ずっとおもしろそう。 」ですって。それに対してドラゴンの反応は「 ばかばかしい 」とか「 自らすすんで囚われの姫になりたいだと?話にならん !」、「 だから、食っちまおうって 」と意見が出るのですが「 ふつうの姫なら、ドラゴンを自ら探しにきたりしないはずだ 」というと、 シモーリン姫 は「 じゃあ、やっぱりわたしはふつうの姫じゃないってことですね。チェリージュビリーを作るし、自分からドラゴンの囚われの姫になりにくるし、ラテン語の動詞の活用をいえるし―まあ、だれかにいえっていわれればの話ですけど。ね、どうです? 」と自分を売り込みます。そうしたら、 カズール と言うメスのドラゴンが、チェリージュビリーが好きなことと、 シモーリン姫 の見た目、それから図書室のラテン語の巻物の目録を作ろうとしていたことなどから シモーリン姫 を自分の囚われの姫にすると言ったのです。で、 目出度くドラゴンの囚われの姫になったシモーリン姫は、さっそくカズールの洞窟に案内され、新しい生活が始まるのです 。
ですが、シモーリン姫がドラゴンの洞窟での生活、新しい台所で必要なもののリストを作ったり、ラテン語を勉強したり、宝物の整理をするなどして楽しんでいたら、厄介な訪問者がやってきたのです。そう、 童話や寓話でお馴染みの囚われの姫を助けに来る騎士です 。普通なら、ドラゴンが出て来て、口から炎を出して終わり、なのでしょうがこの本は一味違います。当の囚われの姫、 シモーリン姫 が出てきて 騎士に論戦を挑んで追い返してしまうのです 。 こんな調子でこの本では、グリム童話やペロー童話の様々な作品をパロディにしてお話の端々に散りばめています 。
それから登場人物が個性的で、これまた読んでいて退屈しないのですよね。まずは、 シモーリン姫 を囚われの姫にしたメスのドラゴンの カズール 。 シモーリン姫 に様々な知識、ラテン語や魔法、ドラゴンに関することを教えます。次が魔女の モーウェン 。 カズール の古くからの友人で、魔女なのに少し風変わりな格好をしています。そして、真実をずばりと言い当てる皮肉屋さんです。 こんな感じで、登場人物もこれまでの童話や寓話、ファンタジーの型にはまらないユニークな人物?ばかりです 。
たとえば、童話や寓話をパロディにしている部分を抜粋してみると、登場人物のひとり、沼の上のトゥーレ(トゥーレ・オン・マーシュ)公国の アリアノーラ姫 のエピソードが最適でしょう。まず、 彼女は申し分のない姫ではありませんでした 。なぜなら、 彼女の命名式に意地悪な妖精が来たのですが 、「 妖精はお腹がはちきれるくらい、ケーキやアイスクリームを食べまくり夜中の一時までおじのアーサーとダンスをし、それはもう楽しく時をすごしました。そのため、わたしに呪いをかけずに帰ってしまったのです。 」次が「 わたしが十六になると、アーミントルードおばさまが、誕生日に金の糸車をくださったので、わたしはそれで糸をつむぎました。ところが、糸車の針はわたしの指も、ともかくどこも刺さなかったのです。 」そのため「 アーミントルードおばさまがお母さまにいって、わたしはわらでいっぱいの部屋に糸車といっしょに入れられると、わらをつむいで金にすることになってしまいました。ええ、やってみましたとも。ところが、わたしには、わらを木綿の糸につむぐことしかできなかったのです。わらを木綿の糸にするお姫さまなんて、ありえませんよね。 」で、これも失敗したので「 そのあと、わたしはパンを一本渡されて、『森へ行って、パンを欲しがる人に分けてあげなさい』といわれました。ええ、ちゃんといわれたとおりにしました。そして、ふたりめに出あったみすぼらしい女の人は、妖精の変装だったんです。ところが、妖精は『しゃべるたびに、あなたの口からダイヤモンドとバラがこぼれるようになあれ』というかわりに、『なんてご親切な。あなたの歯よ、一生丈夫になあれ』といったのです 」それに対して シモーリン姫 は何か言う度にダイヤモンドやバラが口からこぼれるより、歯が丈夫になったほうがよい。寝ている間に寝ぼけてしゃべったりしたら、棘や固いものがごろごろ転がっている中で目が覚めるから大変なことになるわよ、となぐさめ?ます。それで終わりかと思いきや止めが「 アーミントルドールおばさまが、妖精のお友だちのひとりに、わたしにドレスとガラスの靴をやって隣の王国の舞踏会に行かせてほしい、と頼んでくださったのです。なのにわたし、お城を出てもいないうちから、靴を片方、割ってしまいました 」と言って、これまた シモーリン姫 にガラスの靴って、実は商人の娘向けに作られていて、お姫さまにむいてないのよ、と言われてしまいます。 といった具合に次から次へと定番のお話が台無しになって、最後の手段としてドラゴンの囚われの姫になるように仕向けられて、それが成功した、というわけなのです 。 さぁ、ここに書いたパロディの原作、あなたはいくつ分かりましたか?
このような型破りなお姫さま、 シモーリン姫 が、 ドラゴンやうさんくさい魔法使いを相手に大活躍するファンタジーです 。 対象は小学生高学年ぐらいからですが、高校生や大人が読んでも楽しめる内容になっています 。また、表紙カバーや本文の挿絵、ページ毎にもワンポイントのイラストが入っていて、装丁に凝った内容の本になっています。帯には「 可愛くて元気なファンタジー「魔法の森シリーズ」第一弾。 」と書いてありますが、 その通りに愉快で楽しい朗らかな気分を味わせてくれる1冊です 。
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