濫読屋雑記

濫読屋雑記

2011年09月23日
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カテゴリ: 手に取った本

みなさま、台風15号の影響で被害を受けた方はいらっしゃらないでしょうか?私は、間接的に被害を被りました。それは、 9月21日が私が勤める高校の文化祭の校内発表の日だったのです! その日は、午前6時には暴風警報が出ていて生徒は自宅待機。当然、校内発表はお流れです。私が監督している図書委員会でも手作りのブックカバーを作って準備万端だったのに・・・。仕様がないのでこのブックカバーは後日、ほしい人を募って抽選で差し上げようということになりました。しかし、台風の被害はここだけでおさまらず、翌22日の市民会館での舞台発表にも影響したのです。本来なら21日に舞台発表の準備とリハーサルを行う予定が、22日の午前中に大慌てで準備とリハをやって、午後から本番という流れになったので、吹奏楽部や演劇部、放送部に有志の発表者の生徒と担当の先生方は大騒動となりました。 まったく、よりにもよって文化祭の当日に台風直撃なんて。本当に今年の3年生は運がないな、と思った次第です

ちなみに私の家では、21日の朝に大雨のため車庫が水に浸かりそうになったので慌てて土嚢とベニヤ板で車庫の入口を塞ぎました。そのため、学校に出勤することができなくて、貴重な有給を使う羽目になりました。あ~ぁ、ついてない。

そんなわけで、今週は実質2日しか出勤してないことになりました。で、その間に読んだ本や漫画から突っ込みどころ満載の1冊を選んで紹介しようと思います。それは、 中島三千恒 さんの『 【送料無料】軍靴のバルツァー(1) 』(新潮社、2011年7月)です。

この漫画の舞台は、小銃がマスケットからライフル銃に更新され、電信と鉄道が前線と本国の距離を急速に縮め始めた時代のヨーロッパ風架空世界です。主人公の バルツァー少佐 は軍事大国 ヴァイセン王国 (どっから見てもプロイセンのパチリ)に所属するエリート士官です。その バルツァー少佐 にある日、関税同盟(この辺もドイツ史のパチリ)に新しく加盟した バーゼルラント の士官学校に軍事顧問として派遣されることになってしまいます。先の戦役で順風満帆な出世コースに乗っていたのが一転、左遷とも思える命令を受けた バルツァー少佐 は50年前の諸国民戦争により分邦して以来、戦火に曝されることなく発展した鉄道も通じていない田舎の小国に赴きます。そこで当然、半世紀も戦争をしてない王国の人間とでは、 バルツァー少佐 との戦争に対する意識のギャップが大きすぎて一波乱が起きる、というのが粗筋になります。

で、表紙の青年がその主人公の バルツァー少佐 なのですが、表紙からいかにも軍人気質の生真面目でキザなキャラを想像してたらこれが大間違い。表紙をめくっていくと、お調子者でお茶目で陽気、親しみやすい性格に一気に好感を持ちましたね。しかしキメるところではばしっとキメる「出来る」人間です。 軍事後進国で、しかもお固い規則に縛られた士官学校の中では異端の存在として煙たがらるのですが、そんな孤立に追い込まれがちな逆境すらも戦場の経験を生かした閃きと戦術で乗り切っていく姿は頼もしく痛快です。 このようなキャラを主人公にするあたり、作者のセンスが窺えます

が、漫画の後半部分で、 バーゼルラント の第二王子の不興を買った パルツァー少佐 が、恩赦目当てに参加した囚人を部下に50:5の実弾戦を強いられる手に汗を握る展開がみどころなのですが、ここでちょっと待て!と思わず言ってしまいましたね。描写は映画「 【送料無料】バリーリンドン 」にも描かれていた先込め式のマスケット銃を持った多数の密集陣形に対して少数の パルツァー少佐 側が元込め式のライフル銃を基とした近代戦術で立ち向かうという内容なのですが・・・。 いくらなんでも田舎で半世紀も戦争してない バーゼルラント でも、歩兵の主力兵器が先込め式のフリントロックマスケットというのはおかしくないでしょうか?

漫画の最初のカラーページには「 1863年 第一次ノルデントラーデ戦役 」という題で、従軍中の バルツァー少佐 の記録写真が載っています。そこから考えても、実弾戦で バルツァー少佐 側が使っているのはどっからどう見てもマウザー(モーゼルと日本では発音してますが、正式にはマウザーと発音します)式の連発ボルトアクション式のライフルに見えるのですよね(錯覚か思い違いならごめんなさい)。本格的なボルトアクション式連発銃であるドイツのGew98(機関部に弾倉を設け、挿弾子(クリップ)で弾薬を装填するタイプ)で、それが出来たのが1888年です。それを差し引いても、その前の正式銃、8 発入り管状弾倉にGew71が改造されたのが1884年です(その前の単発式は1871年に仮採用)。さらにその前の世界初の実用的ボルトアクション小銃であるドライゼ銃が採用されたのが1841年です。この銃なら、ちょうど漫画の時代的に合うのですが。ちなみに、フランスのミニエー大尉がドングリ型(椎の実型)の鉛弾で周囲には溝が切られ凹凸があり、発射時の圧力で押し込まれたコルクがスカートを外側に膨張させると、弾丸周囲の溝の凸部は銃身内のライフルに食い込みながら密着し、この事で圧力の漏れを無くし、ライフルによる回転を弾頭に与える事できるミニエー弾(1849年に発明)を使用したエンフィールド銃(幕末に日本に大量に輸入されたことでも有名)が誕生したのが1853年。さらに突っ込むと、銃用雷管が発明されたのが1830年です。 いくら軍事後進国でお金がないといっても、先込め式のフリントロック(火打ち式)銃をヨーロッパの国が使ってるわけがないでしょう

まぁ、 著者があえて軍事的後進性を際立たせるためにこのような描写を用いたのかもしれませんが 、最初の方で バルツァー少佐 が着任したときに行った12ポンド砲の運用の仕方がかなり詳細に描写されていたので、この部分に違和感を覚えた次第です。

その他の内容については詳しく描くと手に取ったときの楽しみが減ると思いますので割愛しますが、 ひとコマごとの服や背景の描き込みようはとても漫画として読みごたえがあります 。また、軍装や世俗など細かい部分も真面目に描かれており、大国 ヴァイセン の思惑や バーゼルラント 内部の不穏な空気、王族同士の軋轢など 面白くなりそうな伏線がアチコチにあり、今後の盛り上がりに期待できそうな漫画だと思います 。軍事方面がお好きな方は買っても損はしない濃い内容となっています。

そんなこんなで、今日はこのくらいにしておきます。







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最終更新日  2011年09月24日 02時00分13秒
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bixuqvw@gmail.com  
ルイヴィトン 公式 さん
突然訪問します失礼しました。あなたのブログはとてもすばらしいです、本当に感心しました! ルイヴィトン 公式 http://www.louisvuittonbagsonlinestores.com/ (2013年07月06日 04時31分25秒)

Re:『軍靴のバルツァー』を読んだ感想(09/23)  
名無し さん
ドライゼが注目されたのは普墺戦争が終わってからですよ。
前装式ライフルは軍用としては普及していません。
よってあの時代はまだまだマスケットが主流でしたよ。
しかも紙薬莢を使っているのでそこらについては結構間違っていないと思いますよ (2013年12月26日 22時23分38秒)

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