濫読屋雑記

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2012年07月29日
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カテゴリ: 手に取った本
兎月竜之介 さんの『 ニーナとうさぎと魔法の戦車 』(集英社:集英社スーパーダッシュ文庫、2010年9月)について、いつもの調子で語っていきたいと思います。

この本は、出版された当時は書店での立ち読みで済ませていた一冊なのですが、最近になってコミカライズ化された 藪口黒子 さんの『 ニーナとうさぎと魔法の戦車(1) 』(集英社、2012年4月)を衝動買いして、読んでみたらとてもストーリーの内容がしっかりしていたので、では小説版も読んでみようかと思って1巻目を購入した次第であります。昔と違って、本屋で長時間、立ち読みする気力も体力もありませんし、働いて自分の自由になるお金が劇的に増えたので、このような真似が出来るわけです。学生・院生時代は本を買うのに2時間も本屋で悩んでいたのが遥か過去の話に思えます(それだけ、歳を食った訳なのですが・・・)。

という次第で、コミック版の感想はひとまず横に置いておいて、小説版の感想から始めますね。

この物語の世界では、兵器の動力源が搭乗者の魔力という設定になっています。そして、この世界では大国同士の戦争があって、その戦争が新型魔法爆弾の投下の余波による全兵器の故障という理由で5年前に停戦しました。しかしその新型魔法爆弾の魔力によって何故か魔法兵器たちは搭乗者なしで自走し、人間を襲うようになってしまします。主人公である ニーナ はそんな時代の被害者です。7歳で人買いに売られ、12歳まで戦車の動力源としてこき使われ、いまはそこから逃げ出して放浪する身となっているという境遇の女の子です。そんな彼女が空腹に負けて結婚式の会場の食べ物を盗んだところを捕まえたのが、私立戦車隊 "首なし"ラビッツ のメンバーたちでした。


彼女たち、ラビット隊の面々は ニーナ を自分たちの事務所へ連れて行き、お風呂に入れて食事を与えます。最初は警戒していた ニーナ も温かい食事とラビット隊の面々の人柄のおかげで「 生きててよかった 」と安堵感を得ます。しかし、つかの間の安堵感も、ラビット隊から「 ここに住んでいいよ 」と言われた時、戦車の動力源として酷使された記憶がよみがえった ニーナ は「 戦車乗りは嫌いだ 」と言って感情を爆発させます。その感情を受け止めたラビット隊の隊長、 ドロシー さんはこう言います。「 ならば、この世界を大嫌いなものに変えてしまった原因は何かな?賢い君には見えているはずさ。だって、君が一番その原因を嫌っているはずなのだから 」その原因、あまりにも強大で、暴力的で、理不尽で、圧倒的で何度も ニーナ を打ちのめしてきたもの・・・「 それはね・・・・戦争だよ、君 」と言い放つ ドロシー さん。

そこへ、野良戦車出現のサイレンが鳴り響きます。即座に出動を決める ドロシー さん。ところがラビット隊には、先に述べた結婚式で砲手が結婚退職してしまっていたのです。砲手はどうするのか詰め寄るラビット隊の面々に ドロシー さんはこうのたまいます。「 その辺は問題ない。たった今、新しい砲手が見つかったから 」といってニーナを砲手に指名したのです。さあこのあと、 ニーナ は砲手として嫌っていた魔道戦車に乗り込み、野良戦車との戦いに臨むのか、この先は本を実際に読んでみて下さい。

ということで、ここで私設戦車隊通称 “首なし”ラビット隊 の面々の紹介を。まず戦車長は先ほど出てきた ドロシー さん。そして操縦手は元貴族のお嬢様、 エルザ さん。魔道戦車を動かす動力手は、いつもウトウトしていて起きているのか寝ているのかわからない クー さん。最後は、魔法板を管理して戦況に合わせて適切な魔法を使えるようにする接続手の キキ さん、以上4人+ ニーナ が魔女として魔力で戦車を動かして戦闘を行います。あと、ラビット隊の事務所にいて料理、洗濯などの雑用を担当するメードの サクラ さんがいます。

彼女たちは、 ニーナ のように様々な形で戦争被害にあった少女・女性であることが物語が展開するにつれて明らかになっていきます。しかしそんな彼女たちには一つの誇らしい信条があることも明らかになります。そしてそれが “首なしラビッツ” との名称の由来となっているのですが、これも本を読んでみて確認して下さい。そんな彼女たちは、 信条を貫きいつの日か理想を実現することが出来るのか、てな感じでお話は続いていきます。

では、まとめに入りますが、この本は、今まで読んだライトノベルにはない主人公のリアルな感情表現があるところ、主人公が死に恐怖し命乞いすることとか人間を憎悪する感情、そしてそれらを乗り越えて成長する過程が明朗で感情移入しやすくて良かったです。また、ちょうど子供から大人への階段をのぼりはじめた年齢の、少女の心の葛藤や気持の暴走を、丁寧ながら激しい文章で綴られていることが、教育現場にいる人間として興味深く読みました。最近よくあるダラダラ物語を引き延ばしてとか、救いのない終わり方をする本とは違って、最初と最後でのニーナの成長を見ると、「 良かったね 」という思いと、次作ではどのような展開が待っているのかと期待させてくれる作品に仕上がっています。

小説の王道「 少女の成長 」というテーマを、戦争という人間社会の中で一番醜悪な世界感を掛け合わせて、さらに独自の世界観(とくに兵器など)を組み合わせた「 読者に読ませる 」作品だと思いました。






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最終更新日  2012年07月29日 23時45分02秒
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