俺とユーロとC.D.と・・・(何

第15話『Rain』


いつもあるようで、気がつけば無いような、しとしとと降る雨。
時に嫌気を感じる事もあれば、静かなこんな日も悪くは無いと
思い返す日々も何度かあった。

そんな雨が見てくれていると感じてから、私は空がもっと
近くなった気がした・・・。

『・・うーん、今日は雨かぁ。』

『まぁ、珍しくはないんじゃないかな?
ただ、私と飛織が遊ぶ日で雨っていうのは最近無かったよねぇ。』

そう言って私の部屋にいるのは、心菜。
今日は久々に遊べるぞーなんて思ったら、今日は珍しく雨だったので
仕方なく部屋で遊ぶことにしたのだが、イマイチお互いのやる気が
出ないのか、何故か溜め息が妙に多かった。

『・・・ねぇねぇ、飛織。
少しでいいから、ちょっと外出てみない?』

『ん?いや、別にいいんだけどさぁ。
雨だと思いっきり外でわーって遊べないなぁ・・・なんて思っててさ。』

『別にいいじゃん。雨だって雨なりに外で遊べるんだよ?
まぁ走ったりとかはあまり出来ないから、ゆっくり街の景観を見て
公園とかで和んでる・・・とかさぁ。』

『あっ!それ良いんじゃない?
個人的に公園・町等の景観、っていう案には賛成かな。』

『それじゃ、万場一致って事で、行くとしますかねっ。』

そんなこんなで、私達は雨であるにも関わらず外へと飛び出した。
雨具は勿論傘完全装備!・・・って感じだけど、やっぱり
傘だけで外を歩いていると、しとしと静かに振り行く雨が反発した時の
「ぱっ」って感じの音が、個人的に大好きだ。

『・・・この雨の音、いいねぇ・・・いつ聴いても。』

『あぁ、これには流石に和むモノがあるよね。
飛織って、これまででそんなに雨を意識した事ってあったの?』

『何度かあるけど、最近は高校が忙しくてね・・・;;
帰り道とかには音を聴いて楽しみながら帰ってるよ、いっつも』

『・・じゃあさ、やっぱりそう考えると
雨も悪くはない、って感じ?』

『・・まぁ、そんな感じかな。
毎日聴いているだけでも、当たる場所でちょっと音が違うし
ずーっと楽しめそうな感じがするんだ・・・。』

『・・・へぇ~、私も今度、聴いてみよっかな♪』

『んー、暇があったら聴いてみなよ。
この音、ぜーったい和むんだからぁ・・・』

そんな会話を交しながら雨の音に耳を傾け、いつも通りの道を歩く。
いつもの道であれ、やっぱり水たまりや道路の濡れた感じ、それに
水たまりに入ってしまった時の「ポチャン」という音も、さり気ないけど
意外と響いて耳に良い感じがする。

『・・・あっ!ど、どうしよ~・・・』

『・・い、いきなりどうしたの、心菜!?』

『み、水溜まり踏んじゃった・・・
しかも結構大きいのだったから、結構足に来ちゃったみたいで・・・』

『・・・はい、ハンカチ。
まあ応急処置ではあるけれど、これで少しは乾くのも早くなるんじゃないかな?』

『・・・ありがと!』

そう笑顔で答えて私のハンカチを取る心菜。
こんなちょっとした場面であれ、心菜の雨の中の笑顔も
やっぱり素敵で可愛いなと、ちょっぴり思ってしまった。
いつ、どんな時でもそこにいてくれた心菜が、こんなに年が変わっても
ずっと一緒にいてくれて、変わらない笑顔を見せてくれる事に
私は本当に心菜がいてよかったと、改めて感じた。

『この道かぁ・・・街へ出ると、ちょっと違った感じに見えるね』

『うん、確かにそうだね。
雨の時だと、いつもと違って人通りも減るし、変わって車が増える・・・』

『人間やっぱり、便利さを求めるのは普通みたいだし、
そう考えると自家用車での交通量が増えるのは仕方ないのかな?』

『まぁ、それが普通なんじゃないかな?
でも、たまには歩いてみるってのも悪くはないよね、心菜。』

『そうだね・・こうやって新しい発見が出来るのも
やっぱり外に出て分かる雨の秘密、なのかもね。』

街へ出てから交通量と歩行者の量の圧倒的な差にちょっと驚いた私。
それでも街は常に動いており、人であれ車であれ、自分の目的の為に
忙しく動き回っている事に変わりは無いんだなと、改めて街の役割が
変わる事は無いという事実を、この目で知った。

『・・あ、公園がそろそろ見えてきたよ。』

『もうそんな所かぁ・・・気が付けば、って感じだったね。』

『でもやっぱり見てるとさぁ、木葉から落っこちる雨の雫って、
綺麗でとっても可愛いけど、すぐぽつっ、って落ちちゃうんだよね。』

『心菜らしい例え方だなぁ・・・。でも確かにそうだよね。
でも落ちちゃった時に分裂して、また違う道へ進んで行くのって、今の
私達と、ちょっと似てると思わない?』

『・・・あはははっ、考えてみればそうだねぇ・・・。』

そんな会話を交えながら、公園に着いた私と心菜。
しとしとと、静かに、でもちょっと可愛げな仕草も見せる
雨を見ながら、そっと屋根の下のベンチで深呼吸をして、
ずーっと外を見続けていた。

『屋根があって本当に良かったね。
こんなに間近で、雨を見られるだなんて・・・』

『時に激しく、時に静かに、さり気なく降った時の可愛さと
激しく降った時の迫力・・・二つの顔をもっていながらも、それでも
頑張って、雨だって降り続けているんだよね・・・。』

『普段は敬遠されがちなこんな小さな雨だけど、それでもちょっとだけ
降ってる姿って、本当に可愛くて良いよね。
小さくてパラパラしてて、愛らしさがあって・・・。』

まるで私が思っているような事を、素直に、それでも短く
まとめてくれる心菜。やっぱり同じ「雨」を見ている心菜は
これまでに無いような静かな顔が、また心菜ならではの
可愛さを演出させているようにも見えた。

『・・・ねぇ、心菜・・・。』

『・・ん?どうしたの、飛織・・・。』


『これからも、ずっと二人でいよう・・・ね♪』


『・・・そうだね・・・。』


こんな雨だからこそ言えた、心菜への友達としての証を
確かめるような一言。こんなに可愛らしく降る雨だからこそ、
私はそんな雨を見続ける心菜が、いつにも増して親近感を感じたのかもしれない。


ありがとね、心菜。


そして、これからもずっと一緒だよ・・・。




雨を題材にしたちょっとほのぼのさせた感じの話です^^;
全体的にこれまで上下激しかったので、久々にベタに書いてみました。
聴いた曲がアレであるだけにギャップが・・・orz
(聴いた曲=Bad Boy / Chester , Start / De Niro)

2006年5月13日製作


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