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テーマ: お勧めの本(7886)
カテゴリ: 書評
見出し:周縁の無化と、一極集中はどう和解するのか。

森 健 著『グーグル・アマゾン化する社会』(光文社)

 著者自らが述べるように、いわゆる“グーグル本”ではない。ただ、リリースのタイミングから誤解もあろう。丁寧な情報収集と理路整然とした筋立てに定評のある著者が、この本で本当に伝えたかったことは何なのか。“アマゾン”や“グーグル”の話ではない(もっとも、その手のシステムの話に疎い私にはありがたい内容ではあったが)。アーキテクチュアやシステマチックなインフラストラクチュアによって、我田引水的に、一つの田畑に、恣意的に最高の水が集まること。つまり、現代的な一極集中の様相を地図化して見せているのである。
 音楽のシングルヒットを例にすれば一極集中の話は分かりやすい。つまり、松田聖子伝説は超越されない、ということである。松田聖子の時代は、チャートアクションのソースもメディアも基本はシングルパッケージのみ、流通経路もそれほど複雑ではなく、また付帯する副次的サービスの数も多くはなかった。露出の最大のメディアはテレビの歌番組。そのような、一極集中せざるを得なかった70年代後期から90年代初頭までの日本の音楽産業は、勝つ者がいつも勝つ、まさに一極集中の牙城であった。だからこそ、アルバムはほぼすべてがベスト盤、アイドルが歌手よりセールスを獲得し、ワンヒットワンダーも多々生んで来た。一極集中して、周縁は浅かったのである。
 今音楽業界では、まさに逆転現象が起こっている。多極拡散である。一人勝ちのルールはある程度残しつつ、しかし流通経路、メディア、再生媒体、レーベル、クオリティ、すべてにおいて多岐/多様化し、ある意味ですべてのアーティストがワンヒットワンダーになってしまっている。お分かりであろう。今、アーティストでシングル5万枚売れるということは、一極集中時代の松田聖子のミリオンにも匹敵すると言って過言でない。
 本書で一極集中について考えれば、周縁が浅く、薄く、いつかは無化されていくことに気づくだろう。音楽を例に採った本評が適切かどうかは措くとして、しかし逆に、論理的法則によって音楽産業が一極集中から逆行したようなことが、あるいは他の生活世界に起こらないとも、言えなくはないだろうか。(了)


グーグル・アマゾン化する社会





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Last updated  2008/04/01 09:50:08 PM
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