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テーマ: お勧めの本(7886)
カテゴリ: 書評
見出し:“フレンチ・ゴシック再興”を企図した「探偵物語」

ジャン=クリストフ・グランジェ著、江崎リエ訳『ヴィドック』(角川文庫)

 映画のイメージが強く、その評判が公開当時は芳しくなかったこともあって、その後興味を失っていたフランソワ・ウージェーヌ ヴィドック氏であるが、ひょんな興味の矛先から、再びこの怪人と出会うことになってしまった。元囚人、警官を経て、世界初の私立探偵となった民衆のヒーロー・ヴィドックは、かのアルセーヌ・ルパンのキャラクター造形にも影響があったとされるし、19世紀以降の〈西洋講談(訳者による)〉のテーマの原型となった実在の人物である。彼については、自身の『 回想録 』も刊行されているし、『 わが名はヴィドック 』はじめ、数々の研究書も存在する。
 この本は、まさにあの駄作と呼ばれた映画の原作であり、ヴィドックを主人公とした完全なる創作の冒険譚であるが、巻末の訳者あとがきを読むと、なるほど、公開当時『 ヴィドック 』がなぜウケなかったか合点が行った。訳者曰く、同映画は“フレンチ・ゴシック再興”を目論んだ作品で、その映像美や美術セット、なんとも言えない艶かしさ-暗黒的な事象すら鮮やかな-を再現するために、ヴィドックを狂言まわしにしたに過ぎなかったのである。ヴィドックを描く出来の悪いSF映画と思えば、ハリウッド慣れしている観客からは、完全に無視されるカルトである。しかし、ヴィドックを一段下げて、“フレンチ・ゴシック再興”を最上位目標と考えると、同じく日本では評価の低かった『 ジェヴォーダンの獣 』との関係性、そして気づかなかった価値にそそられる(『ルパン』しかりである)。
 映画の原作とあって、本書そのものは非常に展開速く、娯楽小説としても楽しめる。ちょっと日常で冒険したい向きにはお薦めである。しかし何より、今、“フレンチ・ゴシック再興”の視点から映画『ヴィドック』が観たい!!(了)


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Last updated  2008/04/02 09:47:53 PM
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