○・。Mooncalfの絵本。・○

○・。Mooncalfの絵本。・○

アリスのティーパーティー



■■アリスのティーパーティー~チェシャ猫は笑う■■

■■ACT1.お茶会(ティーパーティー)■■


「もう耐えられない!」

 そう茉莉がつぶやきながら石ころけ飛ばして帰るのは日常茶飯事。小学生の頃からくされ縁で高校まで同じになってしまったマリアは彼女をまるで奴隷か召使いのように扱っていた。彼女の家は金持ちで、メイドに囲まれた生活をしてるのだ、そういう生活になれてしまっているのだ、と自分に言い聞かせてきたがもう限界に達してしまった。
 けれど茉莉は思ったことを全てぶちまけられるほど強くはなかった。だから毎日、ただ道端に居合わせた罪もない石ころにやつあたりしていたのだった。
「あれ? 猫・・・?」
 石ころのとんだ先に猫が座っていた。猫は小さくなぁとないて茉莉を見た。不思議な猫。左は黄金の瞳、右は白銀の瞳をしてるわ・・・。
 茉莉はその美しい水晶に魅せられていた。そしてはっと我に返った数分後、彼女はあたりがおかしいことに気がついた。
「え・・・? ここ、さっきまでの道じゃない・・・。どこ・・・?」
 辺りは夕方が夜のカーテンに仕切られてしまったように暗かった。明るいのはほんの少し先のある一部だけ・・・。
「仕方ないからあそこへ行ってみよう。誰かいるだろうから、ここがどこか聞いてみよう・・・」
 明かりだけをたよりに進み、古びた門を開く。すると暗闇の中、両腕を誰かに掴まれた。かすかな明かりをたよりに見ると、昔絵本でみた『あの男』と『あのうさぎ』だった。
「え!?」
「やあアリス! 時間通りだね!」
「さすがアリス! でも我々待ちくたびれてしまったよ! ティーが飲みたくて飲みたくて、夜も眠れなかったんだよ!」
 アリス・・・? 誰が? 私が? 否定しようにもぐいぐい奥に連れて行かれて話せない。
「さあアリス! 君のためにたくさんのティーを用意したんだよ!」
 長い長い、どこまでも続くテーブルはポットやカップでいっぱいだった。茉莉は誘導されるがままに席へ着く。
「さあアリス、のどが渇いたろう? 紅茶はいかが? 夢見るようにおいしいよ!」
 確かに言われてみればのどがからからだった。昔絵本で見た『不思議の国のアリス』のお茶会通りだったからだろうか、茉莉は安心して「ええ、いただくわ」と答えた。
「さあどうぞ!夢見るようにおいしいよ!」
 そう言いながらいかれ帽子屋はさらさらと白い粉を紅茶に入れた。
「その粉は・・・?」
「これかい? これは粉砂糖だよ。このティーは粉砂糖を入れると格別においしくなるのさ」
「ふぅん」
 受け取って一口のどに通す。
「おいしい・・・」
「だろう?」
「あれは? あの葉っぱは何?」
「ハーブだよ。それからティーの葉っぱ。僕らが飲むティーは全てここでつくっているのさ」
 三月うさぎは得意げに説明した。
「へえ・・・。あれ・・・・?なんだか・・・ねむ・・くなってきちゃた・・・」
 紅茶の入ったカップががしゃんと下へ落ちた。二人は微笑を浮かべている。
「そうだアリス、この粉砂糖気に入ったのならわけてあげるよ。アヘンって言うんだ」
「そうだアリス、このハーブはマリファナっていうんだ。おいしいだろう?」
「あれ? アリスは眠ってしまっているよ」
「仕方ないよ、アリスはお疲れのようだから」
「そうだね・・・」
 二人は静かに紅茶を飲むとまた微笑んだ。

「お休みアリス、よい幻覚(ゆめ)を。」

後編へ続く

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