○・。Mooncalfの絵本。・○

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かみさまの失敗作



「私はこの者を危険人物と見なし、一切の権利の剥奪を要求する」
「私はそれに加え、『流刑』も要求する」
「賛成」
「賛成」
カンカンカン
「静粛に。では最終判決を下す。その者の一切の権利を剥奪し、『流刑』に処す。異義ある者」
「・・・・・・」
「ではこれで法廷を閉じる」


こうして、私の『有罪』は決まった。

かみさまの失敗作

スモール17

■■デリートの必要条件。■■

あたしはふわふわ落ちながら
いろんなことを思い出していた
天上のバラ園
年上の天使たち
そして、神さま。

みんなみんな、頭の中から消去(デリート)する。

だってバラはあたしにだけとげを出すし
天使たちはあたしが来るだけで白い目を。
神さまは優しかったけれど
それでもあたしを捨てたから
頭の中にある映像の全ては
不必要だと頭が叫ぶ
だから消去してしまおう。
あたしは二度と、天上には帰らないのだから。
だけど
あたしは神さまが創ったからくり天使で
神さまの失敗作であることだけは
忘れちゃだめって頭が言う
だからあたしはそれだけを頭に詰めて
ふわふわ落ちて
路地裏に降りつくと眠ってしまった。
気づいたのは三時間後
あたしの前に、サングラスをかけた男が立っていた。

スモール18.

■■サングラスの底■■

「おい」
 サングラスをかけた男が離しかけてきた
「なんでこんなところで寝てるんだ?]

 あたしはあたしの全てを話した
 頭に残る、データの全てを
 あたしはからくり天使で
 神さまの失敗作で
 流刑に処されたこと。

 男は静かに聞いていた
「・・・わかった。それでお前、行くあてあるのか?」
 あたしは黙って首を振る
「じゃあ一緒に行くか?]
 男はサングラスを取った
 美しいガラス玉のような
 しっとりと濡れた瞳が現れた。

 あたしは、この瞳に魅せられていました。

「行く」
 我を忘れ
 彼の瞳を見つめたままあたしは答えた
「本気か?」
「本気」
「俺、犯罪者だぞ」
「あたしだって流刑者よ」
 彼は一瞬きょとんとして
 控えめに
 でも目を細めて笑った
「ちょうどいいじゃん」

スモール19

■■マイ・フェア・レディ■■

 そのかっこ、寒そうだなあ。
 そう彼は言って
 車でまず来たのは洋服店。
 白いノースリーヴのワンピースに裸足だったあたしは
 出てくる時、白いコートと
 厚手の白いワンピース
 白い靴を身につけていた。
「真っ白だね」
「真白だろ、お前」
 彼はふっと笑った

 真白は彼がつけてくれた名前。
 彼は雪が好きな人。
「この小さくて白いの、なぁに?]
「何って雪じゃん。見たことないのか?」
「うん」
「綺麗だろ?」
「うん」
「特に北海道は綺麗なんだよ。あそこは聖地だ」
 ここじゃ落ちたらすぐ黒くなっちゃうけどな。
 そう小さくつぶやきながら 
 彼は空を見上げた
 その横顔が美しくて
 薄汚れた地面に
 その美しい体を投げ出す雪さえ
 その時のあたしの瞳には入らなかった。

スモール20

■■ガラス玉の地球■■

彼はあたしに
あらゆるものを注いでくれた
お金はもちろん
時間も
家も
そして裁縫、料理、テーブルマナー
普通の女の子ならば
必要となるであろうことのすべてを
森の奥の湖の近く
みはらしのいい小さな家にふたりだけ
世界にはふたりだけだった
まるで世界がガラス玉になってしまったように。

続く。


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