2020213

江戸東京ぶらり旅

蔵前

浅草御蔵 」と呼ばれました。

P1010347浅草御蔵跡３.JPG

　御蔵の前には札差という，いわば米の運搬とか販売を，給料を米で受け取る公務員にかわってやってくれる人たちが軒を並べていたのです。公務員だって米の現物支給より現金が欲しいという場合だってあるし，米を担保にお金を前借りするということもあったのです。彼らはこの手数料を受け取り，ちまちまと蓄財し，やがて貸金業を営むようになり，ますます裕福になっていきます。吉原で一流花魁と遊ぶなんていうことだってできたのですね。ここは御蔵の前なので「お蔵前」と呼ばれました。また彼ら金融業者は割竹に某様と書いた札を挟んで米俵に差しておいた。それで「札差」と呼ばれたようです。

P1010367首尾の松２.JPG

　櫛の歯のような堀の四番堀と五番堀の間の先端に「 首尾の松 」が植えられていました。この北にあった吉原からの帰り，隅田川を船で下る際にこの松のところに船を止めて，吉原での首尾を話し合ったのでこの名がついたという説があります。「あの花魁，おいらにぞっこんだね」とか「私はまだ初会だから，ちょっと会話をした程度でした」と吉原での成果を語り合ったのでしょう。安藤広重そして葛飾北斎もこの松を描いていますよ。この「首尾の松」，現在は蔵前橋の西のたもとにあり，７代目だとか。なお，由来には別の説もあって，寛永年間隅田川氾濫の折に，阿部忠秋が将軍徳川家光の前で松から対岸まで馬で乗り切り，首尾よく将軍の勘気がゆるされたため，というもの。

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　隅田川には黄色く塗装され，稲の籾殻（ほら，ここは御蔵前ですからね）を連想させる蔵前橋が架かっていますが，関東大震災以前は「富士見の渡し」という渡し船の船着き場があり，橋はありませんでした。蔵前通りを通すので「 蔵前橋 」という橋の名になりましたが，昭和２９年から５９年まで，橋の東側には蔵前国技館があって，だから橋にも力士のレリーフが施されています。若い人は両国国技館しかご存じないでしょうがね。

P1010352蔵前橋４.JPG

　蔵前橋の上流に見える橋は「厩橋」(うまやばし)，厩（うまや）つまり馬小屋があり，「厩の渡し」という渡しがあったことから厩橋と名づけられました。

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　古代ローマでは貨幣が流通していたというのに，江戸では給料も税金も米，米，米。大名の身分も，農家の耕作面積も全部「石高」で表す。それだけ米は重要視されていたのでした。石高で示しておいて，それを基準に税金（年貢）の額を決めたり，軍役の多少を決めたりとしたのでした。現代の感覚に直すと実は，金，金，金ですがね。

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　ところで一石というのはどのくらいの米の量でしょう。一人が一年間に食べる量ですから１００石なら１００人が食って行ける量となりますね。じゃ，その一年分ですが，これが米で１５０ｋｇ（二俵半）の量。

　小売り専門の米屋は「搗（つき）米屋」，米の問屋から入手した玄米を精米して庶民に売っていたのですよ。なかには訪問販売というか巡回して商売をしていた「大道搗」という米屋までいました。

　将軍の家来である旗本や御家人が領地を与えられ，ここから年貢を徴収していいぞよとされている者が「知行取り」です。でも多くの家臣は年に三回の給料を米でもらう「蔵前取り」でした。これら家来は幕府の米蔵である浅草御蔵から米を給料としてもらいましたが，米は食べる分だけあれば良い。それ以外は「札差」と呼ばれる金融業者に頼んで売って貰う。換金にかかる手数料だの運送費だのが引かれて，のこりが現金として手に入る。それが家臣たちの生活費となったのです。知行取りだって同じく米を現金に換えて生活費に充てました。

　浅草御蔵の場所ですが，現在の蔵前，隅田川蔵前橋の西岸の橋のたもとに御蔵跡があります。ここでは年間３０万石以上の米が扱われました。御蔵はほかに大坂，京都にもありました。

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