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2004年01月08日
プロはすばらしい
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新年第1回目の仕事を終えて帰ってきました。午後2時からの取材で、お昼ご飯を食べ損ない、ついさっき食べたらトロトロ眠くなってしまって……。これからジムへ行って運動する予定だったけれども、外は風が冷たいし、もうやめちゃおうかなーと言いつつ、冷蔵庫から赤ワインを取り出し……飲みながら書いてます。うふ。
行ってきたのは、北区にある某特別養護老人ホームです。ここの施設長をしている看護師の女性、そしてベテランの看護師の女性の2人がインタビューに応じてくれました。99年4月オープンのまだ新しい建物で、4階あるフロアの2階および3階が定員50人の特養。他にショートステイやデイザービス、ホームヘルパー派遣事業も行っています。
特養というと、どのようなイメージを持たれるでしょうか。寝たきりの老人がうろんな目でぼーっと見ていて、全員がオムツ、中には床ずれのひどい人もいれば、痴呆のために徘徊するのでベッドに縛り付けられている人もいる……以前はそんな惨状が伝えられたものです。
ところが、この特養は全然違う。痴呆になったり、誰も世話をしてくれる人がいなくなっても、こういうところで死ねるならいいなあと、そんなふうに思える場所でした。
「うちは褥創(じょくそう=床ずれのこと)はゼロです」と、施設長が誇らしげに言いました。手間を惜しまないケア、あたたかく包み込むような見守りが行われているからですね。
「褥創ゼロ」は、介護に携わる看護職のプライドの証しで、訪問看護師の口からもしばしばこの言葉が出てきます。「でも、病院に入るとまた褥創にされちゃうのようねえ」という言葉とともに(^^;)
トイレの介助のときなどに、皮膚に少しでも異常が見られれば早め早めに治療を行うとのこと。ここでは、最期の最期までオムツを使わないのです。起きる、寝る、食べる、排泄するという人間としての基本を最期まで守り抜く。経管栄養、胃ろう(胃に穴をあけて栄養を補給する)といった医療処置は原則として行わない方針にしているそうです。
「自然に枯れていくように、命の灯火がだんだんと弱くなって消えていくように」というのが、人間にとっていちばんいい死に方ではないかと言います。
この2人のベテラン看護師は、いずれも病院での勤務経験があります。施設長は循環器科勤務が長く、若いころはICUで1秒を争う医療処置に明け暮れていたそうです。もう1人はがん患者の多い病棟で毎日のように死と接していたといいます。そして2人とも病院での死のあり方に疑問を持ち、病院を飛び出して訪問看護の現場へ身を投じたのです。
医療の専門職としては、どうしても「かくあらねばならぬ」という発想が先に立つため、それまで家族がしてきたケアのやり方が誤っていたら、それを正そうとしたり、専門家としての手本を示そうとしがちですが、家庭では100%病院と同じやり方をすることはできないし、そうすることが本人や家族にとって幸せとは限らないと気付き、よほどの問題がない限り、無理やり正そうとするのは止めようと決断した
そうです。
いわば価値観の大転換。コペルニクス的転換ですね。これができる人は、ホンモノでしょう。
「看護職はあくまでも介護職の後方支援に回るべきだ」と2人は言います。ここでは看護職は白衣を着ません。他の介護職と同じ、好きな色のポロシャツに、ベージュ系のスラックス。唯一の違いはポケットの多いエプロンで、体温計やら小物を多く身に付ける必要に迫られてのことだそう。
看護職は、医療の専門知識をベースに、高齢者の心身の状態の予見をある程度行うことができます。いわば、「見切り」ができる。ここからここまでなら大丈夫だけれども、その先を越えると危険だというラインを見極めることができるのです。介護職が不安になったり、判断に迷ったとき、後方からそのラインを示してあげることで、「介護職はダイタンに働くことができる」とのこと。
老人をベッドに縛り付けるのは、本人の安全のためでもあるという議論もあります。ベッドから転倒して骨折するのと、縛り付けられるのと、どちらがマシか……。
「でもね、私たちが居れば、たとえ転倒して骨折しても治療ができるでしょ。もちろん、そんなことがないようなケアの仕方をするわけですけれども」
万一の怪我や容態の急変があれば、看護職がしっかり対処するので、介護職は安心してケアに専念してほしいということですね。
この揺るがなさにも、プロのプライドと実力を見る思いでした。
もうひとつ、「これはすごい!看護職でなくてはできない仕事だ」と思わされたことがあります。それは、共に働く仲間である介護職の健康管理。
容易に想像がつくでしょうが、介護職は過酷な仕事で、多くの人が腰痛に悩まされたり、一度、カゼなどの病気になるとなかなか回復しないということがあります。
企業などの組織においても、こういった看護職による健康管理、予防医学の活動が必要不可欠ですね。いまのお話しのようにうつ傾向はあっという間に伝染するので、早めの対処が必要です。
最近、ある看護職の方から相談を受けました。人員削減策の一環で、健康管理室専任だった彼女を総務課の事務職兼任にすると上司から言われ、辞めてしまいたくなったとのこと。
なんという近視眼的な会社でしょうね。社員の健康管理を怠れば、心身の健康を害する人が増え、長期欠勤者が増え、会社の負担する医療コストが増え、業務の生産性が低下し、結果として多大な不利益を被るでしょうに。
健康管理ぐらい、自己管理でやれ!ということなのか。でも、自己管理で完璧に健康管理ができちゃったら、医者も看護婦も要らない。現実にできないから、必要なのですよね。
プロの仕事の素晴らしさに対し、もっと敬意を払う世の中であってほしいですね。もう奴隷労働の時代じゃないのだからね。プロの仕事の中に、私はいつも人間の崇高さや偉大さを発見する思いがします。
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最終更新日 2004年01月08日 18時47分47秒
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