ライフキャリア総研★主筆の部屋

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2005年12月20日
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 なんだか姉歯氏が気の毒になってきた。

 構造設計の仕事の9割が木村建設からの依頼であったというから、「なんとかならないか」「なんとかならなければ別の事務所にだって頼める」などと圧力をかけられたら、たまらないだろう。

 もちろん、だからといって、職業倫理にもとる行為が許されるわけではない。

 とはいえ、木村建設というビッグクライアントを諦めて、他の建設会社に新たに営業をかけるのも根性が要る。1級建築士の仕事を捨てて、田舎に帰って農業を始める……なんて漫画や小説の世界ならまだしも、現実には難しい。

 サラリーマンには想像が及ばない境遇かもしれない。ワイドショーを昼日中から見ていられる専業主婦の皆さんにとっては、もっと想像の難しい境遇だろう。だから、責めやすいのではないだろうか?

 明日は我が身かもしれないとか、まかり間違えば同じ立場に置かれてていたかもしれないなんて、ほとんどの人が考えようとしないだろうから。

 姉歯氏は一家を支える大黒柱であり、しかも個人事業主。夫人は病弱であると聞く。腹を割って相談できる相手はいただろうか。

 もしも、彼が家族に相談できたら、もっと別の道を選べたかもしれない。

「お父さん、もう疲れちゃったよ」


 そんなふうに弱い面を家族にさらけ出したって良かったんじゃないか。

 家族は運命共同体である。この「乱世」を生き抜くには、1本の大黒柱だけでは脆い。皆で支え合わなければ成り立ち得ないんじゃないだろうか。

 お金にだけ依存した生活は、非常に脆い。

 明日のお金がなくなるという強迫観念が、人から想像力を奪い、恥も外聞もなく、道を踏み外させる。

 書きにくいが、書いてしまうと、退去命令を出されたマンション住民が区の職員に食って掛かった場面を見て「醜い」と感じた人は決して少なくないだろう。「じゃあ、私たちは明日から路上に寝ろと言うのですか!」というあの恥も外聞も捨てた動物のような叫びが耳に残っている。言い方はもちろんのこと、言う相手を間違えていないか? ローンの返済の負担が重くのしかかり、お金だけに依存したギリギリの生活は、あそこまで人間を追い詰め、醜くさせるのだ。

 地域社会に頼れる人がいれば、それまで働いていなかった妻がピンチヒッターとして働き始めるだけの技術や職業能力があれば、田舎でやさしく受け止めてくれる両親や親類縁者がいれば、家を選ぶ選択眼や危険回避能力がもっと高度に発達していれば……それだけの功徳を積んでいれば。

 ああ、ないものねだりよ。

 お金、お金、お金だよ!

「破格の安値」に目が眩み、「コスト削減によるボロ儲け」に目が眩み、「少々ルールを破っても収入が得られるなら」と良心をマヒさせ……。

「私が稼がなければ家族共倒れだ」という強迫観念が、姉歯氏の倫理観を麻痺させ、その過ちが数百人の命を奪うかもしれないという想像力を遮断したのだろう。

 おとうさんだけがんばるのは、いまの時代はもう無理だ。



 家族にしても、ある日突然、「うちは明日から破産だ」と言われても困るのだ。悪いニュースほど、早いほうがいい。もうそれ以上悪くならないように手を打てるから。

 お金だけに依存する生活は、お金に魂を売り渡す結果に至るのだ。自戒すべし。





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最終更新日  2005年12月20日 11時31分15秒
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