エトナの独り言

エトナの独り言

1-5


酒場ではルミナの手前ああいう風な態度だったけれど、正直ねぇ…、呼び名なんてどうでもいいんだ。確かに気分のいい呼び名ではないし、あたいを恐れる者だっている。だからってあたいと一緒にクエストに行ったからといって死ぬって言うわけじゃない。
それに…、あたいのことを影でだろうが、面と向かってだろうがそういいながらもあたいのわがままに付き合ってくれる屈強なハンター仲間もいてくれることだし…ね。』

ラルフさんとドレイクさんはやはりばつが悪そうだ。
フレイさんはラルフさんから離れると海を見ながら話し始めた。

『エドガーは…、そう、エドガーの事は大好きだった。男としても、ハンターとしても。どんなに無茶な依頼でも彼はあたいを守ってくれたし、付いてきてくれた。
ただ…、【ブリトラ】は…、あいつのときだけは違っていたんだ。
なんていっていいんだかわからないけれど・・・、あのときだけは彼は…あたいにとってのいつもの彼じゃなかった。
でも…、正直あたい自身も何が起こって今ここにいるのか上手く思い出せないんだ。
【ブリトラ】と戦っていたとき、あたいが投げた閃光玉で【ブリトラ】が目をくらませ斬りつけようと近づいたその刹那、【何か】にあたいの刃が受け止められたんだ。
いまだにあの固い感触は忘れられないんだけれど…、明らかにそれは人ではなかったと思うんだ。
そして視界が開けたとき、もがく【ブリトラ】の攻撃をダオラデグニダルで受けたときに吹き飛ばされたんだ。
そして…なぜだかわからないけれど攻撃を受け止めきったその後ろからエドガーに斬り上げられてた。
あたいは…、あたいは……、塔のてっぺんであいつと戦っていたのにきがついたときには塔の中央のくぼみからずぅ~っと下に落ちた最下層だった。


そして塔に戻るために塔を駆け上っているときに火山が噴火しテオテスカトルが飛び立つような気がした…。
結局…、横で火山が鳴り響いて危険だとはわかっていたけれど最上階に行って確かめなくてはいけないって思ったんだ。それでてっぺんについてみたものの、爆発の跡や、刀や爪あとはあってもエドガーはいなかった。
何度も何度も探したけれど、エドガーの姿は死体すらなくて…。
仕方なく…、仕方なく帰るしかなかった。
町に戻るとそのうわさは広まり…、あたいは次第に『仲間を見捨てたフレイ、見方殺しのフレイ、死神フレイ』そう呼ばれるようになっていた。
見捨てたかったわけじゃない。それに…、あたいはエドガーは死んでなんかいないって、そう思ってる…。誰も信じちゃくれやしない。でもあたいはやっぱり確かめたかった。そのためにドレイクたちには無理をさせちまってすまないって思ってる。』

あたしたちのほうを向きなおしたフレイさんはさびしそうな、悲しそうな…、仕方のないといったような感情が混ざったような表情をしていた。

『その話が本当だとするならば…、腑に落ちないことがいくつかあるな。』
ラルフさんが神妙な面持ちで切り出す。

『なぜ、エドガーはフレイを逃がさせたのか?だ。そしてフレイの刃を受け止めるもの、それが何かというところと、エドガーはどこに消えたか…、だな。』


『そう…なんだ……。そいつを確かめに、そして…もしエドガーを殺ったのが【ブリトラ】なら…やっぱり敵を討ちたい。
じゃないとあいつも浮かばれないだろうから…。』


潮風が…、波音が…、あたしたちをつつむ。
薄く赤らみ始めた海を照らす…。
沈黙が流れていた。


『きっと・・大丈夫だよ…』
何かに言わされるような変な感覚だったが、あたいの口から大それた言葉が出ていた。

なぜか三人は笑い始めた。
『ちげぇねぇ、譲ちゃんが言うだからなぁ~ハハッハハァー』
皮肉屋のドレイクさんの屈託のない笑顔を始めてみた。

『そうだな、ルミナ。お前が言うんだから、きっと大丈夫だ。はははっはははははは。』

『フレイさんまでそんなに大笑いしなくてもぉ~。』
『ルミナ、必ず!必ず生き残るんだぞ!』
あたいの反応をさえぎるように不意にフレイさんから肩をつかまれ、真剣な顔であたしは見つめられた。
夕日を背にしたフレイさんの表情は読み取りにくかったが、涙を浮かべていることだけはわかった。そして抱きしめてくれた。

『はいっ。』
力強く返事するしか…このときは出来なかった。


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