青年のバス、と言いました。



 例年にもまして参加者の少なかった今年の『青年のバス』。
しかし、その研修会の内容は手前味噌かもしれないが例年以上
に濃く、深みのあるものだったと思う。
 本研修初日の研修会では「土佐清水に生きること ~青年の
バスの意義 青年団の果たす役割~」という大きなテーマを、
参加者おのおのが自分の経験や生活といった身近な内容に置き
換えて、それぞれの思いや考えを語ってくれた。そして、それ
らを踏まえて青年団の活動や、今回参加した『青年のバス』の
意義について、思うことや感じることを自分のことばとして発
してくれた。

 今回、実行委員に無理を言ってすでに決まっていたテーマに
サブタイトルをつけて研修会の「お題」にしたのには、この5
月に行なった座談会の開催が根底にある。そのとき団員宛に発
送した文書にはこう書いた。

「郷土に残る私たち数少ない若者に対して、土佐清水市をどう
していくのか、どうやって方向付けていくのか、個人に向けら
れる期待や比重はますます高まっていくものと思われます。(
中略)・・・私たち青年団が出来ることはなにか、青年団が地元に
存在することの意義は何か、(中略)・・・自分にとって土佐清水
に住む意味や青年団の存在についても再確認できる場になれば・・・」。

 現在、青年団活動やそれに関連する各種事業が過渡期を迎え
ていることは否めない。全国的な潮流の中で清水にあってもそ
の流れは逆らいようのないものなのかもしれない。旧き時代に
青年団活動をしていた諸先輩がたからすると「今の青年団は何
しよらぁ」であろうし、また『青バス』についても単なるバス
ツアーやお見合いバス的存在に変質しかけていた時期もある。
そういう偏見をまだ持っている人たちもいる。そういう点から
見ると、たしかに土佐清水の青年団というのはその存在に不安
定な要素を持ち合わせている。
 しかし、だからといって自分たちが青年団やその事業につい
て悲観的に見ているか、というと必ずしもそうではない。過渡
期というのは、=(イコール)青年団活動の衰退や事業の消滅
を意味するものではないと思う。ましてや「発展的解消」と言
ったような都合のよいことばに当てはまるものでもない。発展
するものはお互いの絆を強くする。
 団員の減少が言われる土佐清水市連合青年団であるが、実際
のところ実質的な活動人数は増加しているし、世代交代も徐々
に進んでいる。同じく参加者の減少している『青バス』につい
ても、青年団活動に楽しさや張り合いといった魅力を見つけて
積極的に関わってきて団員になった人間というのはこの数年を
見ても、やはり『青バス』出身者がその殆どである。今回の『
青バス』でも、参加者それぞれが自分なりの青年団の楽しみ方
を身につけて帰ってきた。今後の活動がとても楽しみだ。

 今回の研修会でのテーマについては、「○○ダカラ□□デア
ル」といった結論は出せるものではないだろうし、また結論を
導き出すことが目的ではないと思う。
敢えて言うならば、『青年のバス』というのは同じ時を生きる
若者同士が膝を突き合わせ、自分たちの生きるこの時代につい
て、この土地について、この時間について、お互いの意見を聞
くことで自分との違いを受け入れ、そしてまた自分を見つめな
おし、相手を理解していこうとする、そういった受容の姿勢を
身につけるきっかけを作る場を提供してくれているのだと思う。
さらにすすめれば、青年団はそんな姿勢を身につけつつ、今度
は活動を通じて知り合った相手の人生や仕事や家庭といったバ
ックグラウンドも含めてのひとりの人間を理解し、辛さや楽し
さを共有していける度量を身につけさせてくれる場になりうる
ものだと思う。そういう場でなければ、青年団としての存在意
義はないのではないかと思う。
いろいろな行事や飲み会ももちろん大事だ。けれども、それ自
体が目的となってしまったら間違いだと思う。大事なことはそ
ういった催しを通じて、相手とのつながりを深めること、絆を
強くすること。先にも書いたけれど、強い絆が発展(人であれ
組織であれ)を導くのではないだろうか。

 青年団の美点を書いてきた。ただ、まったく課題がないわけ
ではない。やはり、過去毎年20人以上の参加者がいた『青バ
ス』がどうしてこんなにまでも少人数になってしまったのか。
青年団執行部の一員としてその募集や実施の方法、『青バス』
後のフォローなど、もう一度見直していく必要があると思う。
同様に、青年団自体も今以上に活動範囲を広め団員を増やすこ
とで、ここ数年みられたような、執行部の継承者不在による年
度の取り組みの大幅な遅れは解消しなければならないと思う。
これは青年団の在籍期間が残り少なくなった自分や団長に課せ
られた宿題だろう。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 帰りのバスの中で心地よい揺れに身を任せて眠るみんなの顔
を見ながら、そして、みんなからの『青バス』に参加しての感
想を聞きながら、今回のバスに参加できたことを嬉しく思った。
みんなと一緒に過ごせたことを嬉しく思った。
 昔、ある先輩から「以前の『青バス』では、バスが市役所に
近づいてもみんなが帰りたくないといって大泣きしていた。」
というなんとも純粋な青年たちの話を聞いた。果たして、今回
の『青バス』では「絶対、誰かを泣かしてやろう」と思ってい
た自分が不覚にもいちばん感動して泣いてしまった。

いや、本当はその話を聞いた時から、ずっと泣きたかったのか
もしれない。


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