妖精のいたずら

妖精のいたずら

つれづれ草・・・第八章・・・


           「ときめき」

 いつも通り自分の会社を素道りして、『須藤サービス』にきた。
とにかくこの会社は朝が早い。もう、社員は全員来ている。
朝からがやがやと賑やかで、家にいるの子供たちとかわらないほど落ち着きが無い。  そんな中、一人だけ(ボー)としている人がいる。
噂の片岡さんだけがただ静かに机に向かっている。
「おはようございます!」  (あれ?聞こえないのかしら?)
さらに大きな声で挨拶をした。「おはようございます、片岡さん!」
「うるさい!バカヤロー!」  う~~ いててて・・・」「俺は今具合が悪いんだ!静かにしてくれ・・・」言うなり机にうつ伏してしまった。
「具合悪いんですか? お薬飲みました? 無いならあげましょうか?」
「いいからほっといてくれ!」
「でも・・・」言い掛けて肩を叩かれた。
後の社員が笑いながら「いいのよ・・。たんなる二日酔いなんだから」
「また、どっかの女の人引っ掛けて遊び歩いていたんでしょ?」
「気にしなくていいのよ、いつもの事なんだから。」
「うるせー!側でごちゃごちゃ言ってないでさっさと仕事・仕事・・・!」
「う~~~~気持ちわり~~~」 「お前らの顔見てると余計気分が悪くなってくる。」
「はいはい。判りましたよ! さー仕事しよ・仕事」
みんな平気な顔をして自分の席に戻っていく。つられて席に戻ってみたが、なんか割り切れない気持ちでうつぶした彼を見ていた。
(なんなのこの人?)(何でみんな何も言わないのかしら?)そう思いながら周りを見回すが誰も彼のことは気にしてない。
むしろ、いる事さえきずかないように自分たちのことに夢中だ。
突然! 「佐藤ッ! 勝又ッ!」彼が大きな声で二人を呼び出した。
「はい!」慌てて彼の席に走っていく。 (どうしたんだろう?)
「なんだこの企画書は? 誰がこんなものを書けと言った。? これで相手が納得してもらえるとでも思っているのか?」
机にうつぶしたまま書類をバサバサ振っている。
「はい。しかし・・・。」  「何がしかしだ!言ってみろ?」
「はい、私たちなりに相手のことを考えたらこれぐらいで良いんではないかと思いましたので・・・。」
「それは、向こうがお前たちに望んでいた事なのか?」  「いえ・・・」
「馬鹿かおまえら? 相手を見下しているのか?何年この仕事やってる?」
「はい、二人とも7年目になります。」
「それだけたって、まだこんな仕事しか出来ないのか?」
「とにかくもう一度相手とよく話して来い! 相手の望むものは何なのか?
しっかりと聞いて来るんだ!」   「はい。スイマセンでした。」
慌てて会社を出て行く二人を見送りながら隣の社員が、「ね!ああみえても仕事だけはしているの。 だから気にしなくていいのよ」「はー?」
「彼はね、どんな時でも一番に会社に来てみんなの仕事を確認するの。」
「ああやって教えていくのよ。飲んだくれた次の日は特にね」
「でも、叱られた人たちがあれではかわいそうです」
「ぜんぜん!後で見てみなさい今出て行った二人を・・・」
「はい、そうします」(それにしても、普段のあの人とはまったく違うわ)
(それにあの、詩織チャンとはどうなっているのかしら?まさか今時のエンコー?)不思議な思いで見つめていると思わず目が合ってしまった。
何故か真剣な目で見詰められ『どきッ!』としてしまう。
知らずに赤くなっていくのが判る(やだ!何考えてるの)どぎまぎしながら目が泳いでしまう。
「おい、」(『えっ?』私のこと?)  「あっはい!」
思わず立ち上がってしまう。 今度はすぐ目の前に顔があった。
また、しっかりと見つめてしまう。「あの、わたし・わたし・・・」
「いくぞ!」
「えっ?何処へ?何でこんな時間に誘うんですか?」
「何勘違いしてるんだ! お前の親父の会社だ!企画書持って仕事だよ!」
「えっ?でもでも・・・」     「嫌ならここにいろ!」
(何やってるのよ私 関係ないでしょ今は仕事中!)思わず叫んで
「いきます!」  「うー声がでかい! いい加減にしろ」
「あっ スイマセン」頭を下げたつもりが今度はぶつかってしまった。
「いてーバカヤロウ!殺す気か?」
「スイマセン  あのーそのー とにかくすいません」
「もういい。行くぞ!お前が運転だからな。事故るなよ」
「えー?でも」  「俺は飲酒運転になる いいのか?」
(そうだった)「ダメです!わたしがします!」
あわてて車のキーをつかんで車庫へむかっていく。
後からふらつきながら付いてくるのが判る。
「今日は俺はしゃべらないからお前が全部しゃべってくれ」
驚いて振り返ると「それにしてもお前はかなりの石頭だな」
ぶつかった頭をさすりながら先日の私の企画書をみている。
「そんな。私まだどう話していいかわかりません、うまくしゃべれません」
「かまわねえよ  ドジたらフォローぐらいはしてやるよ」
「とにかく俺は気持ちが悪い。 それにすごく頭が痛い」
自分勝手なことを言いながらまた、ぶつかった頭をさすりだしている。
どう話したらいいのか判らないままとにかく車を走らせていくしかない。
隣では、まだ頭を抑えながら時々、オエ~オエ~とやっている。
(いったいなんだろうこの人は?)そんな事を考えてふと意地悪をしたくなって「あのー詩織ちゃんってしってます?」と、聞いてみた。
「なに?詩織?・・・・何処の飲み屋のお姉ちゃんだっけ?」
「違います! 飲み屋じゃなくて二十歳ぐらいの学生です・・!」
「学生?詩織ね~?  どんな子だ?」
「無口で、おとなしい感じ・結構かわいい子でした」
「詩織ね・・・。その子が何か?」
「いえ今日片岡さんの事を話していたので知っているのかと思って?」
「詩織・・・か。」そう言うと外を向いて寝てしまった。
(知っているんだ!でも、どうして知っているんだろう?)とても気になって寝顔を見てしまう。
視線にきずいたのか目を開けてタバコをくわえたがまずそうな顔をして捨ててしまった。 その目が何故かとても寂しそうに見えた。
「やっぱり知っているんですね?」
「おまえには関係ないことだ!・・・・・」  「とにかくお前は仕事を成功させるよう頑張ってしゃべる事だけ考えろ!」それだけ言うともうこの話は終わりだというように目をつぶってしまった。
(やっぱりなにかあったんだ!  まさか?・・・)そう思うと急に怖くなってきた・・・。(でも・・なにが?)とりとめもなくいろんなことを思いながら車を走らせていく。
























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