妖精のいたずら

妖精のいたずら

つれづれ草・・・第十四章・・・。


          「迷い道」

 陽炎に揺れる外の景色を見るともなしに見つめている。
隣では彼女が最後の打ち合わせに必死になっている。 それにしてもいつもの迫力がない・・・。   どうなってるんだこいつは・・・?
(じきに昼だな~)ふとそんなことを思っていたら「片岡さん・・・」
泣きそうな顔で俺に振ってきやがった。
「?」(何を答えろというんだ?何にも聞いてないぞ!)
みんなが俺に注目し始めたじゃないか何で俺に振るんだよ!
とにかく何か話さないとまずいな。「え~~~、みなさま・・・」
「とにかく一休みでもしましょう熱いままではいい意見も出ません。
それにもうお昼です・・・。腹が減っては何とやらで・・・。
取り敢えず昼にしましょう」
「君たちはわれわれをなめてるのか? 大事な時間を割いて打ち合わせに出てやっているのになんだその態度は? 出来ないないなら出来ないといったらどうだね?」   
(ほらきた。 ろくな考えも無いくせに口だけは一人前の事をいう馬鹿が何を偉そうなこと言い出すんだ!) (他人の足をすくうことしか考えていない奴は何処にでもいるもんだからな)
「私どもはかまいませんが、あなたがた社長にどう返事をするつもりですか? この企画は御社の社長が弊社の企画に賛同していただいてここにいる『小野』が進めさせていただいた企画。あと一つのところまできてます。
今更白紙に戻して新たな企画でされるというならかまいませんが、この企画は弊社の企画・・・。  他所でまねをされては困りますのですべての書類を破棄させてもらいます。今まで提出した書類等お返しくださるならかまいません。 なお、お配りいたしました書類には全てナンバリングを振ってありますので・・・・。」
誰の顔もあせった顔をしている。当然だろうな! この企画書が他に流れない保障は何処にもない。だからわざとナンバーを振ってみた。
「どうしましたか?みなさませっかくの企画ですが此処まで来て白紙に戻しますか?」
  「そんなにわが社の社員をいじめないでくれないか?」
突然、ドア越しに声を掛けられた。
「あっ!社長!・・・」社員が慌てて立ち上がる中、俺はかぎなれた匂いと胸が締め付けられる想いに振り向いていた。
そこには小夜子が立っていた。 この企画の賛同者・そして、俺から全てを奪った男がいた。
「ちょうど昼飯に誘おうと思って来て見たら面白い事になっていたので覗かせてもらったところだ。しかし、頼むから社員をいじめないでくれんかね。 これでも大事な社員なんだから。」ニコニコ笑いながら俺の肩に手を置いてきた。 
(くそー、なんだこの迫力は・・・)つい、「はい、申し訳ありません。私どもも熱くなってしまいました。」
「そうか、分かってくれるかすまないね。 どうだね?熱くなった頭を冷やしに何処かで飯でも食べよう。 付き合ってくれないか? いろいろ話したい事もあるし・・・。」
「はい、お供させていただきます。 ありがとうございます」
「よし決まった。 この続きは食事の後でという事でどうかな?」
「分かりました。それでは明日また煮つめるということでいかがでしょうか?」
「いいでしょう。時間はあまり残っていないが何とかなるでしょうね?」
「はい勿論です。 お任せ下さい。」
「良かった! では行きましょう」
底知れぬ迫力に氣乎されて(これなら小夜子が傾くのも無理ないか)などと不遜な事を考えながら小夜子を見た。 いつもと変わらない彼女がそこにいる。
隣にはいつもより弱い幸子がいる。  ふと、幸子と目が合った。
「どきっ」とした。  なんでだろう?
強い小夜子・・・壊れそうな幸子・・・。
 頭の中に霧が立ち込めてくるようだ。
 俺の行く道が、また見えなくなりそうだ・・・。






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