妖精のいたずら

妖精のいたずら

つれづれ草・・・第十五章・・・。


            「うそつき」

 〇〇ホテルのラウンジ・・・。
 冗談じゃないぜ俺たちはいつも。。屋とかマ。。なのにいつもこんなところで昼なんて・・・。
 「たまにはこんなところもいいでしょう?」人の心を読んだようにニコニコしながら話しかけてきた。
「はい、ありがとうございます」思わず返事をしてしまった俺を小夜子の冷たい視線が見つめていた。
「今日は和食でいいですね かまわないでしょ?」
「はい、結構です」相手のペースに引きずられているのを感じながらおれにはなにもできない。
これが、大物になる条件としたら到底俺には無理な話だ。
・・・・それにしても飯はうまい! やはり一流だけの事はあると感心しながらもくもくと食べた。
「ところで片岡君 君は小夜子君とは夫婦だったそうですね?」
(やっぱりきたか!)「はい!もうだいぶ前に別れてしまいましたが・・・」
「そうか。 何も関係はもう無いんですね」「はい」チラッと小夜子を見たが下を向いたまま知らん顔しているようだ。
「実はね 彼女と結婚したいという男性が現れてね。 いい話なんだが彼女がまだOKを出さないんですよ。」
この言葉には俺も驚いた! 先日の話ではとっくに決まっているものだと想っていたからだ・・・。
ゆっくりと顔を上げて俺を見つめている。 反対に俺は社長だけを見つめている。
「いやね もしかしたらまだ君との事が引っかかっているのじゃないかと想っているんですよ」顔は笑っているが眼が真剣だぞ!
これはまずい雰囲気になりそうですよ 「そんなことはないとおもいます。」
「彼女は彼女・私は私でずっとやってきているはずですから」
(また、心にも無い事を言い出してしまった。)まずいパターンだ。
「それではこの話を進めてもかまわないですよね?」
「はい、私にお気遣い無く」 (馬鹿なことを言ったもんだ)と想いながら小夜子を見ると、また下を向いたままで何も答えない。
そばにいた幸子が「それでかまわないのですか片岡さん?」
「良いも悪いももう他人同士なんだから、俺が此処でとやかく言える立場でない事ぐらい彼女だってわかっているはずだ。 それにもう、さよならはとっくにすんでるさ」つめたくいいはなった。
そうでも言わないと俺がだめになりそうなんでね!
「ご馳走様でした! 社に帰って明日の打ち合わせの資料を再度作り直してきます。」これ以上ここにいたら自分の嘘がばれちまう。
まだ何かいって引きとめようとする幸子をそこに置いて「先に帰っている後から会社に来い」
そういいつけて俺はラウンジを出て行った。
食事の旨さも・味も何も覚えていないただ虚脱感が身体中にしみているのが感じられただけだ。
ただ、暑い日ざしのさす午後だけは感じられていた。
この大嘘つきの自分にはちょうど良いかもしれない。




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