売り場に学ぼう by 太田伸之

売り場に学ぼう by 太田伸之

PR

Profile

Nobuyuki Ota

Nobuyuki Ota

Calendar

2025.05.23
XML
カテゴリ: ファッション
環境大臣のとき「クールビズ」を発案した小池都知事はファッションデザイン界の人材育成に力を入れてくれる稀有な政治家です。若手デザイナーのパリコレ参加を支援する、あるいはパリで日本人デザイナー合同展示会を開催する事業を東京都は何年も手がけていますが、今度は新人にビジネスを勉強させる事業FDATが始まりました。

水曜日FDAT勉強会の第1回目、講師として3時間ほどセミナーをさせていただきました。テーマは主催者から提示された「世界を目指すために 〜日本のデザイナーに足りていないこと〜」、主にネット社会だからこそ可能なデザイナービジネスモデルと情報発信の重要性をお話ししました。




まず、クールジャパン機構社長時代、いろんなジャンルの方々にお伝えしてきたことを冒頭に説明。「海外の取引先を儲けさせるのはクールではない」。これまで多くの日本企業は「品質良い割には安い」「性能良い割には安い」とは言ってきたけれど「カッコイイから高い」と言って海外市場を攻めたことはない。日本のアニメ漫画、世界での評価は高いけれど、それで儲けたのは一体誰なのか、日本側は儲けたのか、儲けたのは海外の取引先と海賊版を密造した一派だけではなかったか。まずここから話しました。

そして、過去数十年、パリに挑戦しては会社やブランドが破綻したデザイナーをどれだけ見てきたか、パリコレ参加して営業エージェントや広報エージェントに高いマージンや手数料を支払い、どれだけ経済的効果があったのか。ユニクロ以外、日本のファッション系企業はどうして海外事業で儲けられないのかを解説しました。

ネットがなかった時代、莫大な費用がかかるパリコレやパリでの合同展示会に参加する以外に方法はありませんでしたが、近年はネットで自分たちのクリエーションやものづくりをあらかじめ世界に向けて発信できるんです。現在の東京コレクション(Rakuten Fashion Week Tokyo)公式サイトへのアクセスの半数は海外から、しかもその媒体効果費用換算はとんでもない金額になっていることを考えても、いまの時代に合った海外展開方法はあるのではないでしょうか、と。




さらに、いつまでも欧米重視の姿勢は正しいのでしょうか。人口が多く、新たにファンになってくれそうな消費者の多いアジア圏をもっと強化すべきではないでしょうか。また、代金の支払いが極めて悪い欧米有力店への卸売ビジネスより、お客様から直接代金をいただける小売ビジネスをもっと研究すべきであり、直営店とECとをリンクさせ情報発信を強化すべき時代ではないでしょうか、とお話ししました。

インバウンドが4千万人(クールジャパン機構が設立された2013年はまだ8百万人)に届くところまで伸び、年間8兆円以上のインバウンド消費がある今日、海外市場を攻めるのはアウトバウンドだけでなくインバウンドにも目を向けるべきでしょう。

ファッション業界以外の成功事例として、山口県岩国市の「獺祭」の軌跡も紹介しました。山口県産ゆえに日本国内では卸問屋や居酒屋などの理解をなかなか得られなかったとき、獺祭は海外の有名シェフやソムリエに辛抱強く売り込みました。そして逆輸入のような形で徐々に国内でも名前が広まり、いまではテレビでよく宣伝している大手酒造メーカーよりも売上は上位に。地方の小さな蔵元がいまや売上第2位に、大関や月桂冠より多い売上。しかもニューヨーク州に新たに醸造所を建設、現地のお米と水で日本酒醸造を始めた事例はファッション業界にも参考になるはずです。




​今回、日本のセミナーでは珍しく質疑応答時間が長く、嬉しいことに参加者からたくさん質問をいただきました。ここではマーチャンダイジングの基本がいかに重要なのか、特にどういうお客様に何を売るのか、その順番を間違えては大手自動写メーカーでも失敗すると具体的な事例を紹介しました。日本の企業の多くは作った商品を前にして「誰に売ろうか」と後付けで考えるケースが多いですから。

セミナー後、参加者からメールやSNSメッセージをたくさんいただきました。全員ではないにしても多くの方には刺激になったようです。いつまでも1980年代ビジネスモデルのまま海外で収益を上げられないファッション系企業は少なくありませんが、次世代でデザイナーには先輩たちの手法とは違う形で海外を攻めて欲しい。人口減少の日本、しかし海外にはまだまだたくさんの消費者が存在するのですから。


FDAT事業コーディネーター山地さん(前列左)、受講者と一献











お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2025.05.23 15:57:46
[ファッション] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: