売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2025.06.03
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東京ファッションデザイナー協議会を立ち上げた1985年から議長を退任するまでの10年間、通商産業省(現在の経済産業省)の諮問委員会で若輩ながら委員を務め、ファッション産業における人材育成の重要性などを提案してきました。1995年に百貨店に転職したのを機に委員を解放され、しばらくの間お役所とは全く接点がありませんでした。

ところが、ひょんなことから再び声がかかり、経済産業省ではなく今度は内閣官房知的財産本部に新設されたコンテンツ専門調査会及び日本ブランドワーキンググループで2004年から4年間専門委員としてお手伝いをすることに。

当時の総理大臣は小泉純一郎さん、このとき召集されたのは漫画家、アニメ制作会社、テレビ局、映画会社、音楽事務所、ゲームソフト会社の経営者、調理学校校長、シェフ、ファッションデザイナー、スタイリストなど、それまで役所の委員会にあまり呼ばれたことがない分野の顔ぶれでした。

会議の冒頭、内閣官房に出向している経済産業省の官僚から驚きの発言があったのです。「これから電機メーカーは国際競争力を失って外貨を稼げなくなると予想しています。これに代わる新しい分野を政府は支援しなければなりません。皆さんの知見をお借りしたい」、と。


​テレビ市場を一時期リードしたシャープ​


当時はまだシャープ亀山工場生産液晶テレビAQUOSが世界市場をリード、日本製半導体もリチウム電池も高い評価を得ていましたから、正直言って「ほんとかなあ」と半信半疑のまま議論に加わりました。

召集された専門委員の業界、つまり漫画、アニメ、映画音楽、ゲームソフト、料理やファッション業界は長らく政府から見放され、一般大学に学部をつくることさえ認められませんでした。ファッションは政府の公式文書は「被服」、これは政府の定める「家政学」の傘下にある分野であり、女子大家政学部被服学科以外での大学教育は認められません。それゆえファッションデザインは全て専門学校に委ねられ、一般大学では学部、学科としてファッション関係を教えることが認められなかったのです。

漫画、アニメ、ゲームソフト、調理も同じ。一般大学では学問として教育することが認められませんからそれぞれの分野の専門学校が人材育成を行ってきました。音楽の世界ではクラシック音楽は芸大や音大で教育できますが、ロックンロール、ポップミュージック、ジャズなどは全て専門学校がプレイヤーや歌手を育ててきました。

政府が学問として認めていない領域に対して「外貨を稼げる次世代産業として期待する」というのですから、かなり違和感を感じました。




調理学校もしかり。シェフや板前など職人を育てることは調理専門学校がこれまで担ってきましたが、将来レストランを開業しようという若者には最低限の経営学、会計学、コスト計算や店舗運営も教えるべきでしょう。これまでたくさんの職人は育ててきたけれど飲食店経営者は育てられない、これでは海外でレストランを開業して外貨を稼ぐなんてことは難しいでしょう。

小泉総理から安倍晋三さん、福田康夫さん、麻生太郎と4代の総理大臣の下で議論が続けられ、答申がまとまってコンテンツ専門調査会は解散、私たちのお役目が終了しました。この時点では「コンテンツ」という言葉で議論され、まだ「クールジャパン」という言葉は登場していません。このすぐあと自民党から民主党に政権が移り、民主党政権下でも新しい委員を選任して議論が継続されたようです。そしていつの間にか「クールジャパン政策」という名前になりました。

次の表を見てください。2004年コンテンツ専門調査会の冒頭官僚からの予測説明がいかに正しかったかがわかります。




シャープAQUOS亀山工場製がグンを抜いて高い評価を得ていた2001年当時、日本製液晶テレビの世界シェアは73%もありましたが、昨年日本製はたった5%に減少。携帯電話に必要不可欠のリチウムイオン電池もかつて日本製がほぼ独占していたにもかかわらず、昨年の世界シェアは5%。半導体は全体では10%ですが、高性能の先端半導体に限ればたった4%。太陽光パネルに至ってはシェア1%、存在感はゼロに等しい状態。

こんな数字を並べられると、いかに日本製電機製品が短期間に国際競争力を失くしてしまったのかがよくわかりますし、こんなに低下するまで電機業界には打つ手がなかったのでしょうか、どんどんシェアが低下するのをただ指をくわえて見ていたわけではないでしょう。日本製電機製品の国際競争力がかなり低下しているだろうと予想はしていましたが、ここまで落ちぶれていたとは衝撃です。


​杭州市中心地のHUAWEIショップ​


​HUAWEI主力商品スマホの隣でEV車を販売​

テレビの報道番組を眺めながら、電機の次は自動車かな、と。中国製EV車の世界シェアはおそらくもう半分くらいまで達していますから、近未来の自動車業界はエンジン車に代わって電機モーターで動くEV車、しかも中国製の車が主役かもしれません。

中国出張のとき、情報通信事業のHUAWEI(ハーウェイ)の広いショップでは主力商品のスマートフォンをズラリ並べ、その横でEV車を販売していました。エンジンを開発する必要がないので情報通信メーカーでも簡単に市場参入できる世の中が来たんだ、とこのとき実感しました。

技術力の日本だったはずがここまで地盤沈下していますから、今後日本は漫画やアニメなど独自のソフトコンテンツ、クリエーションで世界と戦うしか道はないのかもしれません。ソフトコンテンツとしての日本の食文化、ファッションもやり方次第では外貨を稼げるジャンルになれる、そう信じたいです。





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Last updated  2025.06.03 11:04:31
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