売り場に学ぼう by 太田伸之

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Nobuyuki Ota

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2025.08.12
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カテゴリ: ファッション
​​これまで多くの方々からお子さんの進路相談、とりわけ留学相談 ​​を受けてきました。一番記憶に残っているのは突然訪ねてこられたご近所Kさんの奥様。

大学受験勉強をしていた高校3年生の娘さんが総合大学ではなくデザインの勉強をしたいと受験目前に言い出したので相談でした。ご自身は若い頃保守的な親の論理で好きな勉強をさせてもらえなかった、娘の希望はなんとか叶えてやりたい、できれば最高の教育機関で学ぶ機会を与えてやりたいというお話でした。


デザインの総合大学パーソンズ

相談を受けたちょうどそのタイミング、私はニューヨークのデザイン総合大学パーソンズ・スクール・オブ・デザイン名物ファッションデザイン学部長をセミナー講師に招聘していたので親子に引き合わせました。多くの米国デザイナーのメンターであるフランク・リゾーさんと都内で面会したら、親子はパーソンズを目指して当時金沢市にあったパーソンズ分校の基礎課程を選択、そのあと娘さんは渡米してパーソンズ本校に入学しました。


私の隣が当時学部長フランク・リゾーさん

彼女が在学中​​
K夫人は娘さんを訪ねて何度も渡米、あまりの宿題の多さにびっくりされていました。フランク・リゾー式教育は「美しく描け」ではなく「たくさん描け」、一つのコンセプトを膨らませて大量のデザイン画を描くことで構成力、創造力が身に付くという教育方針、母親がびっくりするくらい大量の宿題を連日抱えていました。

ハードな宿題、体調のこともあって途中何度も卒業を諦めかけた(パーソンズは卒業できずに転身する若者が多い)ものの最後まで頑張り、娘さんは卒業して有名米国ブランドのアトリエに就職。その後米国人と結婚、出産したので日本には戻ってきません。最高の教育をとおっしゃるのでパーソンズを紹介しましたが、日本に戻ってこない状況が ​Kさんには果たして良かったのかどうか。


ファッションビジネスの総合大学F.I.T.

お子さんの留学相談を受けるたび、ファッションビジネスやマーチャンダイジングを学びたいのであればF.I.T.(ニューヨーク州立ファッション工科大学)を、デザイナーの道に進みたいということであればパーソンズ、あるいは(同じ英語圏だから)ロンドンのセントラル・セントマーチンズを勧めてきました。ベルギーにもイタリア、フランスにもデザイナー育成の優れた学校はありますが。

マーケティングやマーチャンダイジング、あるいは工場経営などを体系的に学ぶにはなんと言ってもF.I.T.が講師、カリキュラムとも一番充実しているでしょう。

あれはI.F.I.ビジネススクール全日制2年間マスターコースの学生募集を始める直前でした。アトリエサブ田中三郎社長が「息子の留学のことで相談に乗ってくれませんか」とわがオフィスに。息子の康真くんは名古屋の南山大学4年生、ファッションの世界にも興味を持ち始めた頃でした。田中さんはニューヨークのF.I.T.かパーソンズかどちらかに留学させようとお考えだったのでしょう。

息子さんに学ばせたい分野を伺って、私はいつものようにF.I.T.の方がいいでしょうと申し上げた上で、来春東京にも大学院のようなマーチャンダイジングを教えるビジネススクールを開校予定、F.I.T.留学ではなくI.F.I.ビジネススクール2年間マスターコースでも良いのかしれませんと説明しました。留学経験あるいはニューヨークで生活すること自体は人生のプラスアルファになるでしょうから、あとは親子で話し合ってみてはとアドバイス。

半年後田中
は東京のI.F.I.全日制1期生として私の前に現れました。なんと言っても1期生ですから我々指導する側は熱を入れて手厚く教え、放課後は何度も飲みに連れて行き、2年間濃密に付き合いました。卒業してユナイテッドアローズに就職、ものづくり部署で経験を積んでから独立して自分のブランドを立ち上げました。

田中くん同様一般大学卒業寸前に突然「ファッションの道に進みたい」と言い出したのが留学経験もあるわが実弟の息子。弟から相談あったとき「I.F.I.で勉強させろ」。その頃I.F.I.全日制マスターコースは1年制に期間短縮されていましたが、ファッションビジネスの基礎を学ぶにはそれでも十分。甥っ子はI.F.I.のインターンシップカリキュラムで働かせてもらった会社に就職、現在も同じ会社で働いています。

残念ながら採算面の問題からでしょうか、1998年から始まったI.F.I.全日制マスターコースは終了してしまいました。なので、業界関係者からお子さんの進路相談を受けるときは従来のようにビジネスなら F.I.T.へとアドバイスしています。

かつてニューヨークに出張するたび、私はパーソンズのマーケティング担当主任ディーン・ステイドルさんに頼まれ、同校シニア(4年生)に特別講義をしておりました。たとえデザイナーであっても売り場を歩いて生きた情報をどのように集め、分析して次の商品企画にどう生かすかと話し、「そのことを私に教えてくれたのはパーソンズの夜間コース、私が学んだのはこの同じ教室です」と言いました。


​元WWD編集長J・ウィアーさん(中央)とD・ステイドルさん



余談ですが、フランク・リゾーさん退任後の学部長ティム・ガムさん(米国TV番組「プロジェクトランウェイ」の教授)の勧めもあって、2001年度最優秀学生は米国トップデザイナーの誘いを振り切って私が当時社長だったジャパンブランドに就職しています。さすがに最優秀学生、彼女がデザインしたものは力強く、すぐに誰がデザインしたか判別できました。

近年東京コレクションあるいはパリコレで頭角を現す若手デザイナーには日本のデザイン系学校を出て海外留学、インターンシップで現地メゾンで経験積んでからデビューする人が増えています。自国以外でいろんな経験を積むのは将来きっと役立つと思います。若者にはどんどん海外に飛び出して欲しいですね。





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Last updated  2025.08.13 10:44:50
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