魂の還る場所

魂の還る場所

第四夜   空まで行こう

 ふわふわと浮かんでる雲を見上げながら、「乗りたいなぁ…」って溜め息をついたら、隣りで笑った。
 だって、ふかふかで気持ち良さそうなんだもん。お昼寝できたら絶対いいよね。
 私は大マジメに言ってるのに、やっぱり笑ってたの。「優里(ゆうり)は子供だな」って。
 四つ年上だからって、そんなこと言うんだよ。許せないよね。
 芝生の上で寝転んで本を読んでた空志くんの頭をばしばし叩く。
「痛いって。やめろよ、優里」
 本でガードして言うけど、全然痛がってない!笑ってるもん。わかるよ、そんなの。
 空志(たかし)くんは転がって、少し離れたところに避難した。
「…空志くん、キライ」
 がんばってニラんで、ころん…っと寝転がる。おっきな空に、もこもこと白い雲が浮かんでるのを見た。あんなに大きかったら、友達と一緒に走り回っても大丈夫だよね。落っこちる心配もないし、転んでも平気、ケガしないの。疲れたらそのまま寝て。…きっと気持ち良いよね。
 風が押してくれるし、自動操縦で、世界一周も出来るよ、きっと。
 みんなで。
「でも空志くんは連れてかないもん」
 いっつも笑うし、イジワル言うし、子供扱いするし。一緒になんて行かない。
「ひどいなぁ。俺は仲間外れか?」
 いつのまにか戻ってきてた空志くんが、上からじぃーと覗きこんでた。
 そうだよ、一人でお留守番。
 だって今も、くすくす…って笑ったじゃないか。雲に乗れても、きっとありがたみってモノが伝わんないのよ、この人には。
 そう思って、空志くんの頬っぺたを引っ張った。
 「痛い痛い」って言うけど、そんなの嘘。私にだって分かるよ。だって全然、痛そうじゃないんだもん。
「やっぱり空志くんキライ」
 嫌いだもん。…チョコレート一粒分くらい。
「私ぜったい雲に乗るもん。邪魔してもダメだからね」
 雲に乗って、そうしたらもっと近付けるの。大好きな…二番目に好きな雲に乗ったら、一番に届くの。
 おっきな、おっきな「空」。どんなに背伸びしても、ジャンプしても届かない。私より、ずっとずっと大きな「空」だから。
「俺はこーんなに優里のこと好きなのに」
 空志くんは言うけど、そんなの全然しんぴょうせいがないもん。…うれしいけど…。…しゅうぅぅ…って湯気が出るくらい…。
 …でもでもでもでも!やっぱり笑ってるのは許せない。
「優里の願い事、叶えられんの俺だけだと思うけどな」
 …そうだよ…空志くんだけだよ…。
 ぎゅう…ってしてくれたら、一番だもん。
 そしたら届くの、おっきな「空」に。  




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