丑寅おじさんの開業奮闘記

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割増賃金の定額払い



 職務手当・役職手当を含めて定額の割増賃金の支給そのものは違法であるわけではありません。しかし、職務手当・役職手当に時間外の割増賃金が含まれているとする場合は注意が必要です。その場合には時間外手当としていくら含まれているのかを明確にしておく必要があります。例えば「5万円の手当の内訳は、職能手当2万円、割増賃金3万円とする」というようにしておけば労働基準法で定められた割増賃金を支払っていることが明確になります。

 ここで割増賃金を3万円とした場合、月に3万円相当分までの時間外勤務までとするというように上限を定めるという考え方ならいいのですが、往々にして「割増賃金分を支払ったのだからいくら時間外勤務をしてもそれ以上払う必要がない」という考えをすることは誤りです。通常の割増賃金額を計算し、その不足している部分は別途支給する必要があります。しかも賃金の毎月払いの原則から、年間を通して均して不足額を精算するということもできません。不足した額がある月は、通常の賃金計算方法に基づいて計算して支給すべきです。これについては、昭和63年大阪地裁(関西ソニー販売事件)や平成12年大阪地裁(キャスコ事件)の判例を参考にされるといいでしょう。

 次に管理監督職に就けて役職手当を支払う場合を考えてみましょう。労働基準法第41条第2号は、監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者には労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しないとしています。 この規定をもって管理監督職にある者に役職手当の支給をし、時間外勤務の割増賃金を支払わないとする考えが大勢を占めているようです。労基法で言う「監督若しくは管理の地位にある者」とは部長や工場長のように労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者を意味しています。実態として職務内容、責任と権限、勤務態様によって判断され、決して役職の名称などで判断されるわけではありません。したがって、課長職に昇進したことによって時間外勤務の割増賃金が支給されなくなるということでも、その課長職が名称だけで時間によって管理され、労務管理上の責任や権限が付与されていないというケースは問題があります。これについては平成14年札幌地裁(育英舎時間外賃金請求事件)を参考にされるといいでしょう。


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