ちょっといい女

ちょっといい女

ちょっといい女のお話3



そこに微笑んでいたのは、中学、高校と同じだった同級生の修だった。

「久しぶり。」

昔と変わらない笑顔で、語りかけてきてくれる修に、少々の戸惑いと、喜びを隠し切れない麗子だった。



 修とは、高校卒業後、一年間、文通を交わしあったが、修が大学に合格し、浪人生活に終止符が打たれてから、二人は、一度だけのキスの後、友情とも恋愛とも、つかないまま、修からの

「二人とも、変わらなければ・・・」

という手紙を最後に、終わってしまったのだった。

 いや、麗子が、それが別れの手紙だったと、本当に認識できたのは、同窓会で、彼が恋人と同棲しているという噂を聞いた時だったかも知れない。もちろん、麗子も、その時も、その後も、幾度かの恋愛もした。でも、修の事は、吹っ切れずにいた。その噂を聞いた後、麗子は、海岸で、修からの手紙を、記憶の中に封印する為に、全て燃やしたのだった。

 そんな、ほろ苦い思い出のある修と、こうして話すのは、何年振りだろう。修は笑いながら、

「変わってないね。」

と言った。

「二人とも、変わらなければ・・・」と手紙に書いた事など、つゆぞ、覚えていないようだった。他愛のない話をした後、二人とも仕事があるので、職場に戻った。別れ際、修は麗子に、会社の名刺を渡した。



それから半年後、麗子は、深夜まで及ぶ、毎日の残業に疲れ果て、転職した。そして、ほぼ同じ頃、自宅のパソコンで、インターネットを始めた麗子は、修の職場に、メールを送っていた。すぐにレスポンスが返ってきて、二人は、その後、メール交換をするようになったのだった。

一方、麗子の実家では、継母の実母が亡くなり、その遺産が、一人娘だった継母に入り、それを父が、自分の通帳に入れたからか、長女を亡くし、介護の苦労が終わり、苦悩からもふっ切れたからか、 父は、以前より穏やかになったと、継母は言っていた。



麗子は、自分の運命が、少しずつ、好転してきていると思いたかったが、それは、後に、待ち受けている出来事を知るまでの、束の間の、安堵感だったと言えよう。


次に待ち受けていたのは


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