ちょっといい女

ちょっといい女

ちょっといい女の秘密の部屋3



その頃になると、翔は二人で部屋を借りようと言った。



会う度に、ラブホテルを利用し、亜希子が帰った後、翔は一人でサウナに泊まっていたので、

部屋を借りれば、ずっと其処にいれるからだった。

そして翔が亜希子との結婚を考えているためでもあった。



翔が亜希子に

『結婚しよう。』

と言ったのは、それから、しばらくしてからだった。

『子供は?子供も連れて行っていい?』

翔は黙っていた。

無理もないだろう。

まだ学生上がりだった翔には、その責務は重過ぎた。



残酷な選択を迫られて、亜希子は泣いた。

返事

亜希子は子供を置いて行く事はできなかった。

翔に会うまでは、子供だけが生きる理由だったのだから。



真剣に愛していた。

でも、そんな事があってから、

亜希子は、自分が翔を苦しめているだけではないかと思うようになった。

いつも

『僕は2番目で良いよ。』

と言ってくれていた翔だった。

その言葉が却って辛かったけれど、翔はもっと辛かったのかも知れない事に、

亜希子は気付いていなかったかも知れない。

翔も、将来のない関係に疲れているようでもあった。



二人の関係は、それからギクシャクするようになり、その半年くらい後、

『好きな子ができた。』

と翔は言った。

『彼女の方から言ってきたんだ・・・。』

そんな話を、信じられない面持ちで聞く亜希子だった。

受話器を持ったまま泣いている亜希子に、翔は、

『喜んでくれると思ってた・・・。』

と言った。

『そんなに、大人じゃないよ・・・。』



彼女ができたのに亜希子とは別れないと言う翔に対し、亜希子は返事を出せずにいた。

出張

亜希子が出張した時、翔は出張先に会いに来た。

ドアがノックされた時、高鳴る胸を抑え切れなかった。

翔は部屋へ入るなり、KISSして、そのまま二人はベッドへ倒れ込んだ。



久し振りで会う翔の熱い抱擁に身を任せた後、夢見心地の亜希子をベッドに置いたまま、

翔はカーテンを開けた。

大きな窓から、ビジネス街が見える。



翔は全裸の亜希子を窓際へ誘うと、後ろから入ってきた。

『向かいのビルから人が見てるよ。』

翔は耳元で囁いた。

すると、亜希子の中の淫らな血が逆流するようだった。



翔が知っている、全ての愛し方で愛して欲しかったから、何も躊躇する事はなかった。

翔から陵辱され、向かいのビルから、そんな姿を一部始終、見られていると思うだけで、

恥ずかしさと悦びで、亜希子は上り詰めるのだった。



これが最後の夜だと思いながら・・・。

思い出話

『あれから何年経ったかしら・・・。

 今でも時々、思い出すのよ。

 もう多分、結婚して幸せな家庭を築いている彼の事を・・・。』



亜希子は、自嘲的に、そう言うと、煙草を灰皿に置き、私の方を向き直したのだった。


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