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欧州フットボールの空間
フットボール観とは?
一章 フットボール観とは?
よく「攻撃的」とか「守備的」と口にする事はないだろうか?また、スペインリーグとイタリアリーグ。この2リーグから連想する事はなんだろうか?そして、セレソンとアズーリ。この2つから思うことは何だろうか?
大抵の人は、そう、攻撃的フットボールと守備的フットボールと思うはずである。例えば、レアルマドリード、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナルと言えば欧州でも屈指の強豪クラブである。また、ユベントス、ACミラン、バイエルン・ミュンヘンなども欧州屈指の強豪クラブである。
しかし、チームの基本的コンセプトは全く異なる2種類である。
そして、レアルマドリー、アーセナル2つのチームはまさに「攻撃」が基本コンセプトであり、守備はあくまで二の次という考えのチームです。
そして次にイタリアを代表する両クラブ、ユベントス、ACミランそして、ドイツの名門バイエルンは第一に「バランスないし守備」を基本コンセプトとしている。この大きな違いの理由としては、「各国の国民性」「フットボール観の相違」「歴史の結果に対する答え」等が推察できます。
「各国の国民性」というとスペイン、イングランド、ポルトガルそしてブラジル、アルゼンチンなど(フランス、オランダもこちらに含む)は攻撃的な国民性をもっている、そして、スポーツの一つであるフットボールに対しても相手チームに対しては攻撃的にいかなければいけない。と思う考えが強い民族である。
逆にイタリア、ドイツ、他に北欧東欧の強豪国は強い精神力、団結力、チームとして一つにまとまっているか。など守りにおけるメンタル面は非常に強い意思が国民性としてあるのである。
次に「フットボール観の相違」である。これはかなりのウエイトを占めている。まず、特にスペイン、イングランド、オランダ各国におけるフットボールとは、「観客を楽しませ同時に各選手達も楽しみ、常に魅力的でエキサイティングなスポーツ」がフットボールなのである。
したがって、「結果」も重要だが、それに伴い「内容」というものに非常に敏感である。
極端に言えば1対0の「勝利」より3対4の「敗北」の方がサポーター達も納得するのである。
それに対し、特にイタリア、ドイツ(他に西欧諸国)などの強豪国のフットボール観とは「勝利が全てであり、負ければ意味が無い。勝つために不必要ならば娯楽性(スペクタクル、エキサイティング)は排除しなければならない。とにかく、勝利が最優先」がフットボール観である。
しかし、ここ何年か多少の娯楽性も必要と認識されている。
イタリア、ドイツにもスペクタクル性、魅力性はある。しかし、あくまで「勝利」に結びつく範囲の話である。
本当の意味での「娯楽性」はほとんど無いと言っていい。
この「フットボール観」の相違は何から来るのか?どのように形成されたのか?それを次を見てください。
「歴史の結果に対する答え」
各国のフットボール観が形成されるまでは、どの国も同じようなフットボールをしていたに違いない。
しかし、色々な戦術、システムなど試行錯誤され現在に至るのである。
「カテナチオ」
この言葉はイタリアの強豪クラブやイタリア代表によく用いられる。多くの人数をかけて守り、わずかな人数で攻撃する。まさに「守備的」時によく表現される言葉である。
しかし、本当の「カテナチオ」とは1960年代、インテル・ミラノを当時率いた名将エレニオ・エレラが編み出した戦術である。大人数で守り、少人数で素早く、効率的に攻める。
いわゆる電撃的な速さのカウンター攻撃なのである。
当時のインテルはチャンピオンズカップ連覇を達成した欧州でも屈指の強豪チームだったのである。
次に1982年W杯。この大会はイタリアが優勝した。
この時のイタリア代表も「カテナチオ」タイプだったであろう。
世紀の一戦と言われる、イタリア対ブラジル。
この当時のテレ・サンターナ率いるブラジル代表は「黄金のカルテット」を擁し、非常に魅力的で攻撃的なフットボールを披露していた。
その時、誰もがブラジル代表の優勝は間違いないと思っていた。しかし、結果はイタリアが何度もブラジルの攻撃を凌ぎ、鋭いカウンターを仕掛けブラジルに勝利し、そのままイタリア代表は優勝したのである。
この時のイタリア代表は「内容」より「結果」を最優先したのである。
この様にイタリアにおける、「守備的」戦術、メンタリティーは過去の結果があるからこそ現在に至るのである。
ドイツに至ってはイタリアと若干異なっている。
1970年代のドイツフットボールは非常にスペクタクルで攻撃的だった。ベッケンバウアー、G・ミュラー、ネッツアーなどのスーパースターを揃えW杯、欧州選手権などを勝ち取った西ドイツ代表は観る者を引き寄せたのである。
また、クラブレベルにおいても、バイエルン・ミュンヘンがチャンピオンズカップ3連覇という偉業を成し遂げたのである。
この時のフットボールも非常にスペクタクルで攻撃的だった。
しかし、ベッケンバウアー以降の1980年代、1990年代になるとドイツでは「リベロ」というドイツ独自の戦術を編み出したのである。
ドイツでは当時3バックが主流だった。その内の一人が攻撃参加するという新しい戦法だった。
そして、西ドイツ代表はその後もW杯、EUROなどのビッグイベントで勝利を収めていった。
しかし、その「内容」は70年代の魅力的、攻撃的とはかけ離れていた。なぜそれからのドイツ代表はその当時のフットボールを披露する事ができないのか?
最大の理由は「そのポジションの人材難」である。
やはり攻撃的なフットボールを披露するにはいわゆる
「ファンタジスタ」
と呼ばれるスターが必要である。
しかし、ギュンター・ネッツアー以降、真の「ファンタジスタ」はドイツにはいないのである。
それに重なり「リベロ」の台頭により、DFもしくは守備的なMFにスターが生まれたのである。
よってドイツに関しては「したくてもできなかった。」というのが真実である。
しかし、ドイツは他国と異なる独自な戦法(リベロ)を編み出し数々のタイトルを手にしたのは事実である。
そして、国民性である、強い精神力、団結力を前面に出す現在のフットボールになったのであろう。
次にもう一方攻撃的メンタリティーの強い国々を解説していきます。
その代表的な国は王国ブラジル。
国民のフットボールに対する考えは
「娯楽性があり攻撃的で魅力的なスポーツ」
そして、さらにブラジル国民達は「結果」という事にも注目している。要約すれば、
「スペクタクル且つ魅力的、攻撃的であり勝利する」
という事である。なんて難しい要求だろうか。
しかし、過去のブラジルのスター達はその要求に見事応えてきたのである。ペレ、ガリンシャ、ジーコ、ロマーリオ、リバウド、ロナウド。ブラジルが生んだスター達である。
そして、W杯5回優勝という王国だけが持っている偉大な記録である。 このブラジルという国は世界中で唯一「内容と結果」が高い次元で長期間披露している、まさにフットボール王国である。
その他の国々、オランダ、アルゼンチン、スペインなどもやはり過去の歴史、伝統において攻撃的フットボールが、「内容と結果」を出してきたのである。
そしてもう一つの特徴は、これらの国々が生んだスター達の共通点である。ペレ、ディ・ステファノ、マラドーナ、クライフ、ファンバステン、ラウール、ロナウドなどそのほとんどが攻撃する選手なのである。
この共通点は決して偶然ではない。
攻撃的メンタルの特に強い国では攻撃に関する(主にFW、攻撃MF)スターが生まれやすく、イタリア、ドイツに代表される守備的メンタルの特に強い国では守備に関する(主にGK、DF,守備的MF)スターが生まれやすいのです。
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