感染ルンです。。。

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Konica HEXAR

Konica HEXAR




言いたい放題



~入手までの道のり編~


華やかなバブル経済が見事にはじけて就職氷河期という言葉が世の中に出た1992年、コニカは「ヘキサー」という実力派高級コンパクトカメラを送り出してきた。

当時大学4回生。愛用コンパクトカメラはやはりコニカの「ビックミニ」別名「A4」だった。距離ステップが30あるかないかのカメラだったが、写りが気に入っていた。そこに登場したヘキサーには当然のように興味が出た。西武池袋線に乗ると、切れがあって抜けるようなそれでいて調子の豊かな桜の写真を使ったヘキサーの宣伝ポスターが車内にあり、興味はますます高まった。と言ってもそこは学生。ホイホイと買える価格ではない。なにしろコンパクトカメラといっても定価は88000円もする。バブル当時なので一時期は時給1200~1600円でチャラチャラと働いていたが、誘われたこともあり、高額時給バイトを止めてどちらかというと避けていた写真系バイト、それもスタジオカメラアシスタントを時給475円という法定最低価格でやっていた時だった。もうバイト代は自分で使う感材資金で消え、生活費すらも感材につっこんでいたので、家計は火の車状態だったのだ。

大学を卒業後渡米。学生生活も終わりさぁ働くドーってな気分の時に、母から電話があった。

「お父さん、ガンで後半年なの(泣)。帰ってきてちょうだい」

ショックだった。しかし母の要求を何度かは突っぱねた。なぜならせっかくプラクティカルトレーニングビザ(留学生が卒業後に1年間だけ働いてもよいビザ)をもらったし、憧れのニューヨークで仕事をしたかったからだ。師匠も「お前の人生なんだから親には感謝しながらも自分の道を行け」というアドバイスもあった。でも結局泣く泣く日本に帰り家業を継ぐことにした。

それではどうしてヘキサーを手に入れたのか?

まぁコニカ自身が崩壊しているし、もう時効ってことで話すことにする。実はこのヘキサーは「いただきもの」なのだ(汗)。

ニューヨークでデジタルを勉強しまくったとはいえ、まだまだ時代は銀塩全盛期。当時スタジオの主たる感材はコニカを使っていた。そこでコニカの担当課長さんが、「父にもお世話になり、断腸の思いでニューヨークから戻って会社を継ぎました。そして 今後もコニカをよろしく 」ということで、プレゼントをしてくれたのだ。しかも登録番号入りネームプレート付きで。

したがってヘキサーは学生時代の思い入れと自分の第二の出発記念という意味があり、年に数回しか使わずとも大切にしているカメラなのである。まぁ、ネームプレート付きだから売ろうと思っても売れないんだが(笑)。



~操作編~





ヘキサーは良い面もあるし悪い面もある高級コンパクトカメラである。

まずは、良い面から。

なんと言っても「KONICA HEXAR35mmF2.0(6群7枚)」のレンズが素晴らしい。

コニカは昔からその時代の大口径を作るのが得意のようだ。60年代の一般向けレンジファインダーコンパクトカメラ全盛期にも Konica AUTO S1.6 というカメラを作っている。

CONTAX Tから始まった高級コンパクトカメラ路線は、まさしく「バブルの落とし子」というジャンルだと考える。CONTAX T2やMINOLTA TC-1やNikon 35Ti & 28Tiなどもそのたぐいだ。

コンパクトカメラにしてみれば、F2.8でも明るいレンズ搭載機と言えるが、ヘキサーはその上を行くF2のレンズである。ボケ味を楽しむことができるコンパクトカメラと言えよう。そのレンズもコニカのパッケージ色のような青系冷調ともいえるが、ヘキサノンらしい切れがすばらしく良い。近接かつ開放撮影をすれば多少の像面湾曲が出てくるが、通常利用であれば気にならない。なるほど、このレンズを取り出してLマウントで売り出した藤澤商会さんの気持ちが痛いほどわかる。


次にフォーカスについて語ろう。

製造メーカーのよく使いたい言葉でもあるが、「世界初の3眼式アクティブAF」を採用することによって、シャープで精密なフォーカシングを約束してくれる。その正確さとスピードは他に類を見ないシステムだと思う。

シャッターボタンは2段押しスタイルで、半押しすると音も少なくススッっとフォーカスが合う。前後に迷うことはなく、1発だ。しかもレンジファインダーなのに手前は60cmからピントが合う。ちなみにこの静かに動くことを「サイレントモード」というらしい。初期モデルはそのまま、後期モデルは裏技を使うと設定できる。詳しくは、グーグル先生で。

コンタックスGシリーズのような3眼式アクティブAFで距離を測って表示させるという訳にはいかないが、マニュアル(写真のMFボタン)でフォーカス位置を設定することも可能だ。このモードにすると、最初に3眼式アクティブAFの測距が不可能な無限遠が出てくる。この辺りは風景写真を撮影するのに使いやすい。

また当時発売していた「コニカ赤外750」にも対応していて、設定によって世界で唯一の赤外線フォーカスモードにすることも可能だ。エライ。レンジファインダーだから赤フィルターを付けても視野が赤く見えにくくなることがない。しかも難しい赤外線距離補正をオートでやってくれるんだから、某写真家も裸足で逃げ出すってもんだ。


フォーカスといえば、ファインダーだ。

採光式高倍率ファインダーを採用しているため、明るくて見やすい。ブライトフレームの中央に3眼式アクティブAFの十字ポイントが浮かんでおり、ピントの合わせる位置もわかりやすい。またフォーカシングと同時にパララックス補正もしてくれる。動作音が非常に小さいので、このパララックス補正フレームが止まったら合焦したことがわかる。また露出のオーバーとアンダーの警告も表示する。


露出モードもプログラムオート、絞り優先オート、マニュアルとあって賢い。

プログラムはセレクトレバーを「P」にセットし、目安となる絞り値をダイアルで合わせる。基本は絞り優先モードだが、光の具合でシャッタースピードのみで対応できない時は絞りも自動的にコントロールするという方式。したがってお気楽に使うには、F5.6あたりにしておくと良い。また手ぶれ限界スピードを設定することができることも特徴と言える。

絞り優先はセレクトレバーを「A」にセットし、絞りダイアルで使う絞りを選択する。あとはシャッタースピードを可変してくれる。F2開放撮影で役に立つモードだ。

マニュアルは、それそのまま。自分で設定を固定できる。

ちなみに、プログラムと絞り優先の時は、ファインダーの十字の外側の長方形約15度の中央部重点測光になる。マニュアルモードは、十字の中心の空いている長方形の約4度のスポット測光になる。

それと専用のストロボ「HX-14 AUTO」を利用すると、ストロボプログラムモードにもなる。これまた優秀で「可変絞りシンクロ」という自動調光で、背景の明るさまで計算してくれる。


その他、露出補正も、ISO任意設定も、セルフタイマーも、タイム撮影も、多重露光も、もちろんモーター搭載なので、プレワインディング、ワインディング、りワインディングはオートである。したがってヘキサーは一眼レフ並な操作が可能なのである。



悪い点ね。もうこれにつきるという感がある。

実は、シャッタースピードが1/250secまでしか無い。確かに当時はISO50の「インプレッサ50」というフィルムがあったが、日中F2.0開放で撮影しようというのは、かなり無茶である。せっかくの大口径レンズが台無しだ。例えインプレッサだとしても、快晴の下でF2.0開放の露出は、1/2000sec必要である。まことに惜しい。詰めが甘い。それともコストダウンのしわ寄せをシッターユニットに持ってきたのだろうか。せっかくの大口径が無意味になってしまう。

次に写真の通り、ほとんどの操作スイッチが、カメラの図体の割りに小さい。その大きさが当時のトレンドだったのかもしれないが、大きい手を持つ僕の指先は操作を続けているとかなり痛くなる。

んで、その操作が呼び出し式なので、操作方法を覚えていないと小さな液晶画面で訳がわからなくなる。

最後に、露出補正設定が電源を切るとキャンセルされてしまうのも痛い。まぁ、結構電池の持ちが良いので、設定したらその日あるいはその撮影中は電源を切らないのが得策かもしれない。



~総括~

文句もあるが、全体的に良くできたカメラだといえる。ヘキサーの写りが気に入って、先の藤澤商会さんのLマウントレンズを知り、レンジファインダーの道へ入ってしまった人を数人知っている。もっともそれはシャッタースピードに我慢ならないということであり、通常使いであればAFなんだし自動なんだしヘキサーの方が1000倍お気楽撮影できる。ピントがあっているかの確認ができないコンパクトカメラというジャンルの中で、ヘキサーは 全幅の信頼を寄せても良い と思わせるカメラである。何しろ一時期はヘキサーをウエディングのサブカメラにしていたぐらいだ。


入手方法であるが、結構販売された機種なので玉数は多い。中古市場も法外な値段じゃくなくて手に入る。およそ30000円前後だと思う(2006年夏現在)。

またライカみたいな 限定商法 を何度かやったので、通常の黒、シルバーに加えて、何を考えているのかわからない金メッキ、高級志向なのかロジウムという4種類がある。

また、超内輪な話なのだが、知り合いが依頼して50台程度制作した、ハーフサイズのヘキサーが存在する。ヘキサー自身が仕事で使い勝手が良いことはわかっており、これをハーフにすればフィルム72枚撮影でき、縦位置で、およそ標準レンズ的焦点距離になる、等を考えると制作しちゃっても全体のコストダウン(撮影しやすさとフィルム代)で打ち消せる!という豪快さで作ったらしい。1台欲しかったが、かかったコストの1/50で譲ると言われ、ちょっと手が出なかった。今頃どうしているのかなー。これ、中古市場で見ることはまぁ無いと思うが、みかけたら、そんな話がバックにあるヘキサーハーフだ。



と言うことで、10点満点中、☆☆☆☆☆☆☆あげちゃう。

偏愛コンパクトカメラである。






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