将来の宇宙探査計画

 将来の宇宙探査計画



カッシーニ (Cassini)
土星を周回する軌道船とティタンの 大気に突入して観測を行う大気観測船ホイヘンス (Huygens) から 構成される探査機。カッシーニはNASA(米国航空宇宙局)と ESA(欧州宇宙機構)の共同プロジェクトですカッシーニは タイタン4型/ケンタウルスロケットによって1997年10月に 打ち上げられます。まず金星の重力で加速して、さらにもう一度 金星、そして地球、木星とそれぞれの重力でさらに加速されて土星 へと向かいます。土星に到着するのは2004年6月。土星に到着する 際、数回の軌道修正を行って土星を周回する軌道に投入され、 そこでホイヘンスが切り離されてティタンの大気中に突入します。 ホイヘンスの観測は厚い雲に覆われたティタンの大気を貫くよう にして3時間の間続けられ、観測データは軌道船で中継して地上に 送信されます。その後、軌道船は3年半にわたって土星の 周回軌道を航行し、ティタンに35回、そのほかに イアペトゥス、 ディオネ、 エンケラドゥスといった衛星に次々 と接近します。このミッション(派遣計画)の主な観測目的には、 土星の大気・環・磁気圏の詳しい調査をすること、土星の衛星の クローズアップ写真を撮影すること、ティタンの大気と地表を 詳しく調べることの3つがあります。
計画の初期の段階では、ガリレオが アイーダとガスプラ に対して行って大成功を修めたのと同じように小惑星への接近も行う 計画でしたが、費用を節約するために断念されました。

ティタンのもっとも興味深い点の一つは、 ティタンの表面が上層大気で起こる光化学反応の結果生じる炭化水素 の湖が形成されていると予測されていることです。大気中で生成された 炭化水素は濃度を増していくとスモッグ層を形成し、ついには雨と なって地表に降り注ぐと考えられます。カッシーニの軌道船に 搭載されるレーダーによって、ティタンの厚い雲を通して地表に 液体が存在するかどうかが調べられます。また、軌道船とホイヘンスの 両方でこの特殊な大気が形成される化学反応過程が調べられます。

カッシーニ・ミッションの主なスケジュール(金星-金星-地球-木星ルート)


10/06/97 - タイタン4型/ケンタウルスロケットによる打ち上げ
04/21/98 - 金星重力による加速1回目
06/20/99 - 金星重力による加速2回目
08/16/99 - 地球重力による加速
12/30/00 - 木星重力による加速
06/25/04 - 土星到着
11/06/04 - ホイヘンスの切り離し
11/27/04 - ホイヘンスのタイタン大気突入
06/25/08 - ミッションの終了

(もっと詳しく知りたい人はジェット推進研究所の カッシーニホームページ、NASA惑星データシステムの カッシーニホームページ、ジェット推進研究所の 資料、 NASA(米国航空宇宙局)スペースリンクの 資料とホイヘンスのドップラーウィンド実験に関する 説明(英語)を ご覧ください。)


マーズ94 (Mars 94)
ロシアによる火星の探査計画ですが、予算不足が厳しく、1996年に 打ち上げを延期して準備が続けられています。

マーズ96 (Mars 96)
1998年に打ち上げが延期されていますが、十分な予算がロシア政府から 確保できるかどうか疑問視されています。 惑星協会 (The Planetary Society)が開発したマーズバルーン (気球)とマーズローバー(移動式観測車)が搭載されるかも知れません。

マーズサーベイヤー計画 (Mars Surveyor Program)
マーズグローバルサーベイヤーは10年にわたる新しい 火星探査計画の最初のミッションです。 この火星探査計画では火星と地球の距離が接近する周期の26ヶ月ごと に軌道船と着陸船を打ち上げるという壮大な計画です。 個々のミッションはコストを節約し、年間予算約1億ドルで実行 できるように設計されている一方で、最先端宇宙技術の開発に よって一級の科学的成果を生み出しながら火星のクローズアップ 写真や全体写真を撮影します。
マーズグローバルサーベイヤーは火星の極軌道をとり、全球を カバーする地形図を作成し、また鉱物の分布を調べたり火星の 気象を観測するよう設計されています。

1996年11月に米国フロリダ州のケープカナベラルからデルタ2型 ロケットで打ち上げられ、それから10ヵ月かかって火星に到達 (1997年9月)します。火星に到達後はまず火星を周回する 楕円軌道に投入され、燃料の噴射と大気ブレーキングを併用して ほぼ完全な極円軌道にのせられます。大気ブレーキングは マゼランで初めて試みられた技術で、 大気の摩擦力によって探査機の速度を減少させて最終的な軌道に 軌道修正するという方法です。燃料噴射を行わないで火星を 周回する低高度軌道に探査機を投入することが可能で、 ミッションに必要な燃料の量を大幅に節減することができます。 地形図の作成の1998年1月終わりころから開始されるという スケジュールが組まれています。

この探査機は火星の回りを2時間で一周する太陽同期軌道- すなわち太陽を常に地平線の方向に保つ軌道を回ります。 このようにすることで、探査機の直下の地点には太陽光線が 地平線方向から射すことになり、影によって高低の地形がたやすく 判読できるようになります。探査機にはマーズ オブザーバの観測装置が 一部そのまま搭載され、火星の公転 周期(約2年)に相当する期間火星の観測データを取得します。 そして、探査機はそのままデータ中継局として役割を変え、 その後3年間にわたって米国をはじめ各国の着陸船や低高度軌道 の軌道船からの観測データを地上にリレーするようになります。

国際的な計画への参加・協力・調整によりこの計画のすべての ミッションはより強力なものとなるでしょう。マーズグローバル サーベイヤー計画に続く1998年、2001年、2003年、2005年打ち上げ の着陸船は、1996年に打ち上げられる マーズパスファインダーの経験が大いに活かされることでしょう。 1998年と2003年に打ち上げが 行われる小型の軌道観測船には マーズオブザーバに搭載されていたのと同じ観測機器が一部搭載され、 将来のミッションではデータ中継局としての役割を果たすことに なっています。

マーズグローバルサーベイヤーの競争入札によって業者が選定 されて調達されます。科学観測機器は、マーズオブザーバ搭載の 観測機器の複製として制作された装置が政府から業者に供給され、 探査機に組み込まれます。組み込まれる観測機器には、カメラ、 熱放射分光計、超高安定発振器、レーザー高度計、磁気計、 電子反射計、データ中継システムといったものがあります。

ジェット推進研究所はNASA(米国航空宇宙局)太陽系探査部門に かわって計画全体を担当し、ミッションの設計、探査機の管制、 ミッションの遂行を指揮します。探査機の管制と探査機からの観測データ の受信には、世界的に展開された深宇宙ネットワークの34mアンテナ群 が行います。

マーズグローバルサーベイヤーの製作から打ち上げ後30日間までに必要 となる経費の総額はおよそ1億5500万ドルと見積もられています。

(ジェット推進所のマーズ グローバルサーベイヤーのホームページもご覧ください(英語)。)


パスファインダー (Pathfinder)
マーズグローバルサーベイヤーに続く火星探査計画の2つめの ミッションです。当初はMESURパスファインダーという名前の 計画でしたが、パスファインダー以外のMESURミッションは キャンセルされました。
パスファインダーは1億5000万ドルの予算で1994年度にプロジェクトが 開始されました。NASAは低予算で行うことのできる惑星ミッション を計画・実行していくディスカバリー計画をスタートさせましたが、 パスファインダーはその最初のミッションです。

パスファインダーには小型(重さ10kg)の移動式観測車が搭載されて 火星まで運ばれます。NASA(米国航空宇宙局)の先端技術研究室に よって開発が担当されるこの移動式観測車は、火星表面における科学 および技術実験を行う予定です。

パスファインダーは1996年12月2日に打ち上げられ、1997年7月に火星に 到達する予定です。

(もっと詳しく知りたい人は、ジェット推進研究所の ホームページ(英語) をご覧ください。)


プルート・エクスプレス (Pluto Express)
当初はプルート・ファースト・フライバイ計画と呼ばれていました。 比較的少ない予算でこれまで一度も探査機が接近したことのない 冥王星まで短期間で到達する小型の 探査機計画です。1998年の米国政府の予算で計画が認められれば 2001年に打ち上げられます。重さ100kg以下の2つの探査機が タイタン4型/ケンタウルスロケットまたはプロトン (にひょっとしたらもう一段の固体燃料ブースターを追加して)に よって2001年に打ち上げられ、2006年から2008年(到達に要する 年数はどのルートをとるかで変化する)に冥王星とその衛星 カロンに接近します。接近するときの通過速度は秒速12~18km で、そのときに撮影された画像はいったん探査機に搭載される 記録装置に記録され、その後一年以上かけてゆっくりと地球に 送られます。これは、探査機が小型であるために、送信パワーが 弱くかつ送信アンテナの口径も小さい上に非常に遠距離から送信 されるので、高速なデータ通信ができないことためです。冥王星 の大気を調べるために、探査機からロシアが開発する 『投下ゾンデ』を投下することも検討されています。
冥王星とカロンの地質と地形を調べ、全球にわたる地形図を作成し、 冥王星の大気の様子を調べることが科学的な目標です。冥王星の 大気は冥王星が太陽から遠ざかるにつれて凍りついてなくなって しまうので、冥王星が太陽に最も近づいている現在の好機をとらえて ミッションを早期に実現することが非常に重要です。観測機器の 重量は全体で7kgに制限されますが、そのなかにCCDカメラ、 赤外線分光カメラ、紫外線分光器、それに探査機が冥王星の向こう 側にまわって隠されるときに電波の屈折によって大気の状態を調べる 実験のために必要な機器が搭載機器として提案されています。

プルートエクスプレスの機体はこれまでの外惑星探査に用いられた 探査機に比べるととても小型に設計されています。探査機の 大きさはガリレオ、 カッシーニと次第に巨大化する傾向にありましたが、その流れは 逆の方向に進むことになりそうです。

機体の設計者によるプルートエクスプレス(プルートファースト フライバイ)に関する記事が惑星協会 (The Planetary Society)の発行している隔月刊誌 『The Planetary Report』の1994年9/10月号に掲載されています。

この計画が実際に認められるかどうかは非常に微妙です。

(もっと詳しく知りたい人はNASA(米国航空宇宙局)の ホームページまたはジェット推進研究所の ホームページ(英語) をご覧ください。)

宇宙人
NEAR
NEARは Near Earth Asteroid Rendezvous (近地球軌道 小惑星ランデブー)計画の頭文字をとったものです。 地球に接近する軌道をもった 小惑星と彗星に関する謎を 解明してそれらの性質を詳しく調べるための計画です。
1996年2月にデルタ2型ロケットによって打ち上げられ、1999年 1月はじめに小惑星433 エロスに近い軌道に到達します。 NEARはそこで最低一年間にわたって24kmの距離にまで 近づいて小惑星の岩石を調査します。小惑星エロスは地球に 接近する軌道をもつ小惑星のうちで最も大きい部類に属し、 これまでにも地上からよく観測されています。近地球小惑星と 小惑星帯(火星軌道と木星軌道にはさまれたドーナツ状の軌道帯) に属する大多数の小惑星は性質的によく似ています。

(もっと詳しく知りたい人は米国宇宙科学データセンターの ホームページ(英語)をご覧ください。)


マーキュリーポーラーフライバイ (Mercury Polar Flyby)
水星が近年またあらためて注目されるようになり、現在水星を 観測対象とするミッションが2つディスカバリー計画に 提案されています。ディスカバリー計画はNASA (米国航空宇宙局)の『もっと安く、もっと短期間で、もっと すばらしい成果』を達成しようというスローガンで始まった 新しい惑星探査計画です。この計画に選ばれるミッションは 総費用1億5000万ドルで行うという制限が設けられています。 この2つの水星探査計画は マーキュリーポーラーフライバイ(MPF)とエルメス (Hermes:水星周回軌道観測船)です。MPFの観測機器 には中性子分光装置(水の存在を検出する観測装置)、 複偏波レーダー(水星表面の氷の分布を調べる)、カメラ (マリナー10号で撮影された半球の裏側の半球や極地域の 画像を撮影する)などがあります。このミッションはほかの ディスカバリー計画に提案されているミッションに比べても 費用が少なく、技術的にも十分実現可能なミッションで あると提案者は胸をはっています。MPFの軌道は水星が 遠日点に位置するときにだけ何度も繰り返して水星に接近 するように選ばれます。水星の軌道は離心率が大きく、 近日点では太陽からの輻射熱は地球でうける輻射熱の11倍 にも達するのに対して遠日点では4倍程度と大きな差が あります。水星の遠日点でのみ水星に接近するようにする ことで、大きな輻射熱を避けることが可能となり、複雑な (そして開発費用の高い)冷却装置や熱シールドを省くことが できます。



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