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アクシデント 8


これは、くちびる?

ちゅ、ちゅ、と音を立てて
彼女は俺の首にキスをしている。
俺は半ば眠ったままで、その感触を愉しむ。
ああ、どうか、やめないでくれ。
俺がぐっすり寝ていると思っている彼女はエスカレートする。
暖かな、というよりは熱い彼女の舌先が
俺の顎辺りをちろちろと行き来する。
ああ、たまんないよ、、、俺は彼女を抱きしめようと手を伸ばした。
空振りする俺の腕。
あれ?
目を開けると、彼女は自分の布団の中にいた。
さっきまでのあの感触は夢だったのか?

カーテンの隙間から光が細く差し込んでいる。どうやら朝のようだ。
「・・・う・・・ん・・・」耳を澄ますと彼女が苦しそうにうめいている。
「大丈夫?」近づいてなにげなく額に手をやると、熱い。
彼女は小刻みに震えている。
「熱があるみたいだ。病院へ行こう」
「いや・・・動きたくない」彼女は小さな声で答えた。
「でも、さ。このままじゃ心配だよ」
「大丈夫・・・すぐに治るから・・・そばにいて・・・このままじっとしていたい」
「でも・・・」俺はどうしていいかわからなかった。
とりあえず氷水を作って冷やしたタオルを彼女の額に置いてやった。
「ありがとう・・・」目をつぶったままの彼女。
この熱は、昨日の事故のせいなのか。だとしたら病院へ行かなくていいのか?
「な、病院へ行こう。やっぱり俺、心配だよ」
「いや。今は動きたくない・・・」彼女は頑なに拒む。
「解熱剤とアイスノン買ってくるよ。」なにかしないといられなかった。
俺は財布を持って、外へ出た。


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