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アクシデント14


「あ、そう」なんか、そっけない返事になっちゃう俺。
「コウヘイさんも、早く来て」
「え?」
「早く、布団に入って。」
「あ、うん。」
「今夜は、コウヘイさんと・・・」

なに?なんだよ??
「お世話になったお礼に、アタシをあげる♪♪」とか??
だったら、喜んでいただくけど。

「お布団の中で、お話したいな」彼女が甘えたように呟く。
お話、かよ。お話でもいいけど。。。

小さな明かりだけ点けて、俺たちは布団の中で見つめ合う。
「お風呂に入れてよかったね。元気になったみたいで、ほっとした」
「うん。いろいろありがとう。ほんと、どうやってお返ししていいかわからないぐらい」
「元はと言えば俺が悪いんだから、気にしなくていいよ。それより・・・」
「え?」
「早く記憶が戻るといいね・・・」俺は、思ってもいないことを口にした。
「・・・うん」彼女もなんだか寂しそうに返事した。
彼女にずっとここにいてほしい。このまま記憶が戻らなければいいのに。
正直に言えば、俺はそう思い始めていた。
でも、そんなこと言えるはずはなかった。
「で、なにを話したいの?俺と」
「コウヘイさんのお仕事の話とか」
「う~ん、仕事の話はしたくない。っていうか今、思い出したくもない」俺は苦笑した。
「じゃあ、好きな人の話」
「好きな人?いないよ。大学卒業してから、ずーっと彼女いない。」
「そうなの。残念ね」
「うん。すっげーー残念です」
2人して、笑った。

「ね」ちょっと意地悪を思いつく。
「なぁに?」
「親切な俺に、お返ししたい?」
「うん。私にできることがあれば、したいよ」思ったとおりの彼女の答えに俺は、、、
「じゃあ、キスさせてくれる?」
「え・・・」彼女は案の定、困ったような顔をした。
じっと彼女の顔を見る。
「キス?」彼女が聞き返す。
「嘘だよ、うそ。びっくりした?」俺が笑うと、彼女は言った。
「キス、してもいいよ」
え??
「・・・キスって、くちびるとくちびるをくっつけるやつだよ?知ってる??」
承諾した彼女を前に、俺は動揺した。
すると彼女はクスクス笑って言った。
「知ってるわよ。キスぐらい」

あ、そう?していいの?ほんとに??
「したいのなら、していいよ」
薄暗い部屋で、彼女の瞳は
俺が予想していたよりももっと、俺を惹きつけるように、妖しく光った。




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