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玲子18~序曲~


ごく普通のダブルルーム。窓からは夜景が見えた。
「お腹すいたよね。外で食うのも面倒臭いし、ルームサービスでも取ろうよ。」
慎司はそう言ってメニューを眺める。
意外だった。すぐに慎司に襲い掛かられると思っていた私は、慎司の真意がつかめないでいた。
「なにがいい?適当に頼んじゃうよ」慎司が部屋の電話から注文する。
「もうすぐ来るから、待ってね。」そういって、小さなソファに腰掛けて、私を見る。
なにも言わずにじっと見ている。
私はその間、ずっと立ったままでいた。
「座ったら?」慎司が私に、隣に来るように視線で促す。
仕方なく私は、慎司の隣に腰掛けた。
「オレのこと、怖い?警戒してるでしょ」
当たり前でしょう?裸の写真を撮られて、脅されているんだから。
私は何も答えないでいた。
「玲子ちゃんが、オレを試すような態度だったから、懲らしめちゃったんだ。ごめんね。
それに・・・」そう言って、慎司はまじめな顔になる。
「どうしても、また逢いたかったから。もう逢ってもらえないかと思ったら、
こんな汚い手を使っちゃったよ。ほんと、悪い。」
いったいなんなの?懺悔ってわけ?
「悪いことついでに調子に乗って、キワドイ下着付けてもらっちゃった。こういうの、
一度してみたかったんだよね」そう言って、照れたように笑う。
「今日は玲子ちゃんを怖がらせちゃったお詫び。オレに奉仕させてよ」
なんか、怪しい。信用できないと直感で思った。

その時、部屋のベルが鳴った。ルームサービスが運ばれてきたのだ。
部屋にワゴンが持ち込まれ、料理が並べられる。慎司が伝票にサインする。
ホテルのサービス係が部屋を後にすると、慎司は早速、料理を皿に取り分けた。
ソファに座る私の隣へ戻ってきて、一口頬張る。
「玲子ちゃんも食べなよ。」
「いらないわ。お腹すいてないの」私がぶっきらぼうにそう言うと、慎司は自分のフォークに
料理をのせて私の口に近づける。
「ダメだよ、食べなきゃ。ほら・・・」
仕方なく、私は口を開けて受け入れた。
「他のものも、食べる?」慎司は次々と、口まで運んでくる。
その度に私は、子供のように口を開けて、料理を咀嚼する。
慎司は私が口を動かすのを、嬉しそうに笑って見ている。
この男は、何を考えているのだろう。



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