non title

non title

SENPAI 13


夏合宿では、お互いに違う人とミックスのペアを組んだにもかかわらず、
周囲にバレるようなことを最終日にしてしまった。
「この鍵、誰の~?落ちてたらしいぞ」という声がして、見ると先輩の家の鍵だった。
先輩はYとプロレス技について夢中で話していて、聞こえない様子だ。
私はなにも考えず、先輩に聞こえるように
「先輩、鍵落としたよ。ほら、あれ」と指をさしてしまった。
さっそく帰りにカナコにお茶に呼び出された。
「どういうこと?K先輩のうちの鍵を知ってるってぇ~~!!」
怒ったような、笑ったようなイタズラな表情で、迫られた。
「ごめん。実はね、付き合ってるっていうか・・・合鍵をもらってるっていうか・・・」
「それって立派に付き合ってるってことじゃん!いつから??」
「なんか、言いそびれちゃって・・・去年の10月ぐらいかな。」
「そんなに前から??もう~ひどぉ~い!言ってくれてもいいのにぃ~~」
「ほんと、ごめんね・・・」
「もういいよ。でも、周りに知られちゃったね。みんな知らん顔してたけど。」
「うん、別に隠そうとしてたわけじゃないからいいの。先輩も気にしてないみたいだし。」
「そうかぁ。ならいいけど。合鍵もらってるって、先輩のうちには結構行ってるの?」
「うん。週に3,4日ぐらい、かなぁ」ちょっと、恥ずかしかった。
「そんなに??どうりで付き合い悪くなったなぁ~って思ったよ」
「ごめん・・・」私はまた謝った。
「でも、うまくいっててよかったね。私も嬉しいよ!」ニッコリとカナコは笑ってくれたけど
「カナコは?W先輩とうまくいってる?」という私の問いかけに
「うん・・・まあね」と、気ののらない返事をした。
気になったけど、話そうとしなかったのであえて私から聞かなかった。

お盆休みで先輩が帰省すると、私はやることがなくて毎日寂しかった。
一度先輩のいない部屋に行ってみたが、一人じゃ寂しすぎて耐え切れず、
夜中に家に帰ってきたこともあった。
先輩が帰る日は、待ち遠しくて朝から部屋で待っていた。
ドアの鍵が開く音がしたので、私はとっさにベッドにもぐりこんで隠れた。
先輩は私のサンダルがあるのは分かっているはずなのに、
知らん顔で「ふ~っ」とため息なんかついて、座る。
TVをつけたりしていっこうに私を探そうとしない。
しばらくたって、そぉっと覗くと床には先輩の姿はなかった。
びっくりして布団から出ると壁にへばりついて笑っている先輩がいた。
「あせった?」ニコニコしている。
「ひどい!!探してよ!!」そういって膨れる私に
「だって、バレバレだもん」と、笑ってベッドにダイブした。
私をやっとつかまえて、キスして言った。
「逢いたかった。毎日何してた?」
「先輩のこと、考えてた」そう言って私は、キスを返した。

帰省から戻ってしばらくすると、私を悩ませる存在が現れた。
「ケイコ」という見知らぬ人。先輩の高校のときの元カノ。
決まって金曜日の夜に電話してくる。
先輩も「彼女が来てるから」とか言ってくれればいいのに、いつも優しい声で
「おお~、どうした?」なんて話を聞いてあげる。
「うんうん」とか「へぇ~」とか「あはは!」とか「そっかあ~」とか
自分の話はしないで、いつもその「ケイコ」って人の話を聞いてあげている。
それがまたムカつく!!!
私はベッドに横になって雑誌をめくっている。
目で活字をなぞっているけど、まったく頭に入ってこない。意識は先輩の声に集中していた。
(はやく電話を切って、こっちに来て)途中でいつもイライラしてきて、先輩の邪魔をする。
首にキスしたり、背中をくすぐったり、冷蔵庫をバタンッと閉めたり、
グラスをかちゃかちゃさせたり・・・私の存在をアピールする。
しかたなく先輩はやんわりと切り上げる。
「ねえ、彼女が来てるって、どうして言わないの?」
「別に聞かれないから」
「何話してるの?」
「アイツの仕事の愚痴とか、彼氏のこととか」
ケイコって人のことを「アイツ」って呼ぶのも気に障る。
「ふ~ん。帰省中にケイコさんに逢ったの?」
「なんで?」
「だって、田舎から帰ってきてから頻繁に電話があるから」
「電話、そんなにはないよ」
「そんなことないよ、毎週じゃない?ねえ、逢ったの?」
「高校のクラス会で。」
「ほら、やっぱりね~。逢ってんじゃん。」私は、鬼の首を捕ったように言った。
「2人で逢ったわけじゃないよ」
「そうかな~」
「そうかな~、って、なんだよ」
雲行きが怪しくなってきた。



© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: