このレコード実際、コルトレーンの「バラード」のロイド版みたいな形で引き合いにだされるが、私にはロイドの新たな決意表明に聴こえる。 バラードナンバー集を吹き込んだのは、コルトレーンの場合、マウスピースの不調やボブ・シールのサジェスチョンとか言われているが、ロイドの場合は今一度シーンに駆け上がる為の原点回帰としてこのアルバムを吹き込んだように感じられてならない。 時代はとっくにロイドを追い越してフュージョンミュージック真っ盛りの70年代後半、今一度やる気になったロイドは手始めにこの原点ともいえる手垢のついたバラード演奏を試してみたのではないか?マイナーなレコード会社(DESTNY RECORDS)からの再スタート。 やがて、ミッシェル・ぺトルチアーニとの出遭い、ブルーノートレーベルとの契約とジャズシーンに再浮上するチャールス・ロイド。 その後の活躍は書くまでもないだろう。 そんなことを夢想しながらここで演奏されているバラードナンバーを聴いていると本当のことなんじゃないだろうかと錯覚に陥りそうになるほど、ここでのロイドのテナーサックスは凛々しくて限りなく優しい音色をしている。 曲目は「AUTUMN IN NEW YORK」「AS TIME GOES BY」「WAIT TILL YOU SEE HER」「NANCY」「NAIMA」「STELLA BY STARLIGHT」「BUT BEAUTIFUL」「PENSATIVA」 メンバーはCHARLES LLOYD(TS)TOM GRANT(P) KEVIN BRANDON(EL-B) KIM CALKINS(PER) SUZANNE WALLACH(VO)with STRINGS 1979年作品
トロンボーンのワンホーンものということで、たぶん買ったのではないかと思う。 コンラッド・ハーウィッグだから出来は保証されているし・・・ そんなところだと思う。今メンバーを見てみるとピアノがBERNARDO SASSETTIなのだ。 買ったときは無名のピアノトリオがバックだったのでそこがちょっと不安だったはず。 FESTIVAL DE JAZZ DE GUIMARAESでのライブ録音で、このシリーズは他にもGROOVEレーベルからリリースされている。 ハーウィッグのトロンボーンはデイブ・リーブマンが参加したデビュー作を買って以来結構買い込んでいるが、この作品ライブという事もあっていつもにまして張り切ったパワフルな演奏が聴かれる。 「24 FOR FRANK」「AMULET」「RED ON BLACK」など以前のオリジナルの選曲も硬派であるが、楽曲と演奏のバランスがしっかり取れたパフォーマンスなので、聴いていて冗長だとは感じない。 ハーウィッグのトロンボーンは、テクニック面(テクニカルなフレーズ、ハーモニクスの処理、ハーモニーの解釈など)も素晴らしいと思うが、音色が私にとって一番魅力に感じる。 3曲目ではスティーブン・ターレかアルバート・マンゲルスドルフの様なハーモニクスを駆使したソロを披露。ドラムとのデュオからカルテットに以降する瞬間がカッコいい。 急速調の「AMULET」に続く名曲「RED ON BLACK」はたゆとう感じで演奏される。 ドラム奏者の力量がやや格落ちなのが惜しい。バックのつけ方が無神経すぎるのではないか?アップテンポでもパワー不足を感じる。 BERNARDO SASSETTIは、ポルトガルの人々がもつ目の奥に潜んだ哀しみという様な深い情緒を感じさせるピアノソロをスペースを生かした方法で披露。 6曲目がこのアルバムの白眉、「MUSICA CALLADA N1」。 ハーウィッグのこんな情緒的で情熱的なテイストのプレイは初めて聴いた。 ポルトガルという土地でのライブと楽曲がハーウィッグのプレイに歌謡性、ラテン性を目覚めさせたのだろう。 ラストはモンクの「I MEAN YOU」で締めくくられる。 録音は1993年11月 FESTIVAL DE JAZZ DE GUIMARAES
2000年の秋、大阪出張の時ワルツ堂EST1店で買ったCDで、リーダーのJAN ZUM VOHRDEの名前はその時初めて知った。 サイドメンがTHOMAS CLAUSEN,JESPER LUNDGAARD,ALEX REALなので明らかにバックのミュージシャンの名前で買ったのだと思う。 選曲もスタンダードナンバー中心なので、無難な一枚だろうとあたりをつけたのだろう。 この予想少し外れてしまったようだ。 1曲目「酒とバラの日々」から結構骨太のトーンのアルトサックスのサウンドが飛び出してくる。大きな個性はない。いやむしろ地味と言っていいのかもしれない。 ジャケットのインナースリーブを覗いてみるとビッグバンドに在籍していたそうだ。 70年代からパレ・ミッケンボルグ、先頃逝去したニールス・ペデルセン、トーマス・クローセンらビッグネームと演奏したというからデンマークのジャズシーンではそれなりに名の知れた存在なのだろう。 VOHRDEのサックスは決して悪くはないのだが、如何せん今一歩の個性に欠けるのだなぁ。 聴く耳はどうしてもクローセンの煌びやかなタッチのピアノやアレックス・リールのシャープでパワフルなドラミングを追ってしまうのだ。 4曲目はトム・ハレルの「LITTLE DANCER」をフルートで演奏。 ワルツテンポの小品で、サポート隊もジェントルな伴奏をつけていてVOHRDEのフルートが映える仕掛けになっている。 この曲なんか等身大の声が聴けているようで中々いい感じです。 スタンダードに戻るともとの調子に戻ってしまって実際VOHRDEのサックスがすんなり耳に入ってこない。 プロデュース面でもう少し工夫して選曲やアレンジを主役のVOHRDEがもっと生きるようにすべき。スタンダードを普通に演奏すれば百戦錬磨のベテラン勢の強烈な個性が際立つのは充分予想されたはずだ。 とここでプロデュースのクレジットを見たらこれが、VOHRDE本人なのですね。 本人はスタンダード演りたかったんだろうね、きっと。 メンバーはJAN ZUM VOHRDE(AS,FL)THOMAS CLAUSEN(P)JESPER LUNDGAARD(B) ALEX RIEL(DS) 録音は1998年9月1,2日
どうもピアノトリオを題材にすると苦言が多くなるけれども、このHENRI TEXIER TRIOの出来は120%私が保証いたします。 この10年に吹き込まれた何千(そんなにないか?)という中でベスト3にはいる仕上がりだと思う。 曲目は「STOLEN MOMENTS」「THE SCENE IS CLEAN」「ARRIVAL」「SKATING IN CENTRAL PARK」「SOUL EYES」「LOTUS BLOSSOM」「LONELY WOMAN」「MINORITY」「STABLEMATES」「LAMENT」全10曲。 メンバーはHENRI TEXIER(B)ALAIN JEAN-MARIE(P)ALDO ROMANO(DS) 録音は1991年1月26,27,28日 捨て曲なしのピカイチ盤として大推薦します。
さあーって、パソコンで疲れたからケニー・ドリューの北パリ終着駅なんやらかんやらでも聴こうっと・・・
KIETH OXMANの名前は知らなかったが、テナーのワンホーンものだし、通好みの選曲で悪い事もなかろうと買ったのだと思う。 一番の決めては「FUNK IN DEEP FREEZE」を演っていたから。 ハンク・モブレーのこの曲に目が無いのです。 実は今もフィル・アーソがこの曲を吹き込んだCDを出しているので迷っているところ。 はやく入手しなければと思っている。 初めて聴いたのはチェット・ベイカーのCTI盤だったと記憶しているが、それ以来好きなジャズマン・オリジナルのひとつになっている。
オーディオファイルから1998年にリリースされた未発表ライブ作で、2000年に福岡のキャットフィッシュレコードから手に入れた。 このアルバム、私的には最高の曲の流れでとても気にいっている。 アルバム3曲目から11曲目の流れが、まるで自分のために選曲してくれたんじゃないかと思うくらいツボにはまった選曲なのです。 録音は1977年、まさに歌手として絶頂期を迎えていた時で、このアルバムのプロデューサーであるDICK PHIPPSの自宅で録音されたものなので、非常にリラックスした雰囲気の中で唄われた事が推測される。 全部で22曲が収録されているのであるが、3曲目「EMILY」から「WHEELERS AND DEALERS」「WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE?」「MAD ABOUT THE BOY」「THE UNDERDOG」「YOU WERE THERE」「A CHILD IS BORN」「THE SHADOW OF YOUR SMILE」11曲目「A TIME FOR LOVE」が白眉だと思う。 録音はテープの劣化の為所々歪があるが、聴けないほどではなく許容範囲内だと思う。 勿論スタジオの正規録音ほどのクオリティーは望めないが・・・ 5曲目の「これからの人生」ひょっとしてクラールは自身の残された時間をこの録音の時点で悟っていたのかもしれないと思わせる様なとても深くて寂しい表現をさりげなく唄に織り込む。この名曲の3本指にはいる名唱だと思う。 7曲目アル・コーン作曲の「負け犬」は隠れ名曲だが、こういう淡い色調のバラードを独自の解釈で表現できて初めて一人前の歌手ではないか? 何故こんなにアイリーン・クラールを好きになってしまったのか自分でもよく分からないのだが、まず声質、聴き取りやすい発声、歌詞の真意を真っ直ぐに自身の唄に表現するシンセリティー、ストーリーテリングの巧みさ、そこはかとなく漂ってくる情感、気品といったところだろうか? こんな歌手居そうであまり居ない、亡くなってからその存在の大きさを感じて喪失感に心が痛む素晴らしいジャズボーカリストだったと思う次第。
クラールは私の心の中で、いまでも生きつづけているのだ。
リリース情報を当時通販で買っていた大阪の「ライトハウス」のカタログで知って直ぐに注文したはず。同じ頃、NHKFMのジャズ番組で本多俊夫がこのCDをオンエアしたのを思い出す。 買った時は全く知らなかったのだが、メンバーはピアノ、LARS JANSSON, テナーにJOAKIM MILDERという今から見ればとても素晴らしいサイドメンが参加。 ストックホルムのレッド・ミッチェルの自宅で録音されたものなので、いつになく寛いだ雰囲気のするレコーディングとなった様だ。 部屋のアコースティックもよいので、録音状態もとても良い。 ミッチェルのベースは通常の調弦ではなくてチェロの調弦がなされている事は前にも書いたと記憶するが、その独特な音色でうたいあげるベースプレイは70年代以降まさにワン&オンリーなものとなった。 ブラインドで聴いても直ぐにそれだと分かる印象的なプレイはこれまた癖がありすぎて評価の分かれるロン・カーターと双璧をなすと言ってよいだろう。 私はどうかって? どちらも大変好きです。ロン・カーターの事を最悪のように言う人が結構多いけど、あの音色も結構好きなんです。ピッチが悪いだ、ゴムが伸びたような音色だ、ボロクソ言う人が見受けられるが私自身は音的に決して悪くないと思うし、あの音色はロン・カーターが作り上げたオリジナルなものだと思うので、評価している。 レッドもロンもそういう意味で個性のかたまりのようなベーシストであるし、その特徴ある音色と奏法でソロイストとしての地位を築きあげたのだと思う。 このアルバムはスタンダード「THERE IS NO GREATER LOVE」「枯葉」「MY ONE AND ONLY LOVE」「LIKE SOMEONE IN LOVE」「ON GREEN DOLPHIN STREET」と3人のオリジナル作品がバランスよく選曲されていていつまでも飽きのこないスルメ盤としてお薦めする。 録音は1990年2月18,19日 RED MITCHELL`S APARTMENT IN STOCKHOLM
イタリアの中堅ピアニストが1998年に吹き込んだカルテット作。 2000年5月に大阪出張の時、梅田のワルツ堂EST1店で買った。 決して手を抜いていると言う訳ではないのだけれど、全般的に今で言うマッタリしたリラックスした雰囲気に溢れている。 テナーサックスの新鋭FRANCESCO BEARZATTIは最近の若手にしては珍しくハスキーなサブトーンをうまく取り入れてこのアルバムでは非常にオーソドックスなプレイに終始している。 実際自身の最近のアルバムではフューチャージャズを意識した新らしめのサウンドを展開していた。 リーダーのGIOVANNI MAZZARINOはレギュラーグループでクインテットも結成していて、そこにはファブリッジオ・ボッソも加入している関係上この人のリーダーアルバムは自然と増えていったのであるが、正直ピアニストとしては極めて中庸の線で、特に特筆するようなピアニストではないと思う。 サイドメンにボッソやBEARZATTIのような有能なメンバーが集まるのは、人望や統率力があるためかもしれない。 このアルバムではスタンダードやジャズメンオリジナルのバラードナンバーがつながりよく選曲されていて完成度が高く、何度も聴いてみる気になるつくりがなされている。 ミルト・ジャクソンの「NIGHT MIST」とアラン・ブロードベント「DON`T ASK WHY」がこんなに素晴らしい曲なのは、このアルバムで初めて知った。 他に「EVERYTHING HAPPENS TO ME」「I`M THROUGH WITH LOVE」「STARWAY TO THE STARS」「PORTRAIT OF JENNY」「SPRING IS HERE」「I THOUGHT ABOUT YOU」「ALONE TOGETHER」など全11曲。 メンバーはGIOVANNI MAZZARINO(P)FRANCESCO BEARZATTI(TS)STEFANO SENNI(B) PAOLO MAPPA(DS) 録音は1998年9月10日 CATANIA(SICILY) このアルバムはソニーのOPEN SKYレーベル第一弾として確か発売されたはずで、発売当日に買ったのを覚えている。 確か1979年夏だったと記憶している。 いきつけのジャズ喫茶「JOKE」でもEAST WINDの「EIGHT MILES ROAD」やギル・エバンス・ビッグバンドでのギタープレイをよく聴いていたし、前年に買ったMPSからリリースされた隠れ名盤「NATURE`S REVENGE」(いつか紹介しようと思っている)を買ってすっかり川崎燎のファンになった大学生の私は相当期待してこのアルバムを買ったのだと思う。 渡辺香津美、増尾好秋と並んで三大ジャズギタリストだった川崎燎だが、BETTER DAYSの渡辺(コロンビア)、ELECTRIC BIRDの増尾(キング)に比べて人気の点で、やや劣っていた。これで多くのファンを獲得してシーンの前面にでてくるなぁと溜飲を下げたものだ。 実際OPEN SKYのアーティストのプロモーションコンサートで帰国した川崎には音楽誌だけでなく一般誌のインタビューが朝から夜遅くまで殺到してまさに人気爆発は頂点に達していたと思う。 このアルバムは今から25年以上前に録音されたフュージョンに分類される音楽だと思うが今の耳で聴いても古臭く感じない点にびっくりする。 その頃の他のフュージョンアルバムを聴くと懐かしさと同時にどうしてもリズムやアレンジの古さを感じるのに、この川崎のアルバムはそんな事は微塵も感じさせない、新譜といっても信じそうになるくらい完成度の高いオリジナルな音楽が展開されていることに驚異を感じる。 このアルバム、90年代に入ってから、 UKのクラブシーンで火がつき、(ジャイル・ピーターソンだったかがプレイした。)それが川崎の再評価につながったのも元はといえばこの作品の音楽としての新しさ、完成度の高さ、魅力からくるものであろう。 この後同レーベルから2枚アルバムをリリースするが、もともとポップス性を志向していなかった川崎はよりインドの旋法やロック色を強めたサウンドを展開していき大衆性、人気という点からはこのアルバムを頂点に再び遠ざかっていくのである。 そして、あまり名前を聞かなくなって、風の便りにコンピュータープログラミングで大もうけして、それで一生遊んで暮らせるほど稼いだというような話を耳にした。 90年代に入って再び音楽活動が活発になるのであるが、スムースジャズというオブラートにパッケージングされていても川崎のギターはさすがに鋭い輝きを維持している。このアルバムのカヴァーバージョンのCDも製作された。