SIEGFRIED KESSLER

KESSLER
1990年の大晦日だったと思う。
JR三ノ宮駅の北出口の道を隔てて少し東よりにその小さなJAZZレコード専門店はあった。その名も「JR」。 
前の日は大阪、北とミナミ「ワルツ堂」「LPコーナー」「VIC」「DISC JJ」「ライトハウス」「ビッグピンク」「りずむぼっくす」「MUSIC MAN」などこの時とばかり一通りレコード屋巡りをし、そこそこ目ぼしいブツを収穫していた。
ひさしぶりに神戸に一年の最後の日に訪れてみるのも悪くないなと考えた次第。

「MR.JACKET」で日本盤の中古を1200円くらいで数枚手に入れていた。
当時集めていたマリオン・ブラウンとアーチー・シェップの盤を・・・
さあ、最後にもう一軒、学生時代にはAOI RECORDだったJRっていう店に行ってみよう。 JAZZ批評片手に(店の地図が載っていた)移動、 場所はすぐにわかった。
店にはいると私よりすこし若そうなすこし小太りのいかにもジャズが好きで好きでたまらないといった風体の経営者とおもえる若者が一人。
他に後から常連客と思しき人がはいってきた。
「カタン、コトン」いわさないように気をつけながらエサ箱をあさる。
壁面にびっちりと入れられた背表紙の文字を注意深く追っていく。
真冬の時期だというのに暖房のせいもあるのか、2時間も集中してレコードをチェックしていると汗がじわじわ湧き起ってくる。
なんだか無性に喉も渇いてきた。

そんなときだった。ライムグリーン色がベースにこわ持てのいかにもドイツ人といった顔でこちらをみているジャケットのレコードを手にしたのは・・・
SIEGFRIED KESSLER TRIO/INVITATION
知らんナァ・・・でもインビテ-ションは大好きな曲やしなぁ・・・
少し朦朧となってきた頭でジャケットを眺めていると。少し下に少し小さい文字で
featuring Archie Sheppと印字されているのに気がついた。
その瞬間、そのレコードを買うのは決まった。
裏ジャケをみてみると名曲揃い、Silvers Serenade、Invitation,Ugetu,Along Came Bettyなど  永年の勘でこのレコードは個人的名盤になるだろうと聴く前から確信にちかいものがあった。
その他の数枚のブツと一緒にレジに・・・初めてだったので店主も喋りかけてくれなかったが顔を何回か見られたような(こういうところがいかにも素人っぽいところを残していた・・・)  過去形で書いているのは、それから何年かして訪れた時には潰れていたから・・・ 値段はすこし高めだったが充実した品揃えの店だった。
このレコードは題名通り「INVITATION」である。
同曲の演奏をいろいろ聴いてきているが、(アル・ヘイグ、フィル・ウッズなど)
このバージョンが個人的に一番気に入っている。
シェップが、いつも通りの野太いブルースフィーリングとJAZZの伝統とフリージャズ体験を自己の中で咀嚼、解釈し感情の発露をそのフィルターをとうして巧みに演奏家、インプロバイザーとして表現した一曲だと思う。
硬質なKESSELERのピアノとの対比も良い。
数年前、心臓発作で急死したこれまた大好きなベーシスト、J.F.ジュニ・クラークのベースもランニング、ソロとも堅実でありながら個性的で魅力的。
クリフォード・ジャービスも繊細できめの細かいサポートでカルテット全体を引き締めている。シェツプは他に「ALONG CAME BETTY」一曲のみの参加。
正直もっと聴きたいというのが本当のところではあるが、この2曲でも充分おなか一杯になるはず。 それぐらいよい演奏だと思う。
あとのピアノトリオも硬派の演奏で今タケノコのように乱発されるピアノトリオ盤(中には良いのもあるが・・・)よりずっと良いと思う。

三ノ宮の町は震災後一度訪れただけで長いこと行っていない。
今度帰省した時には是非、行こうと思っている。







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