あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

長崎殺人物語

～長崎殺人物語～

京都府警の検視官である江夏冬子は、休暇を利用して長崎へと旅立った
高校時代の友人で、今は長崎でアナウンサーをしている西山百合子から、長崎くんちを観に来ないか？と誘われたのがきっかけである
久しぶりの再会に喜ぶものの、恋の話になると過敏な反応をする百合子に疑問を感じた夏子は、彼女の口から不倫をしていることを聞かされる

翌日の早朝、夏子と百合子は散歩がてらに諏訪神社に行くと、そこで死体に遭遇してしまう
倒れている女性の顔を見て、顔色を変える百合子
その表情を見逃さなかった夏子は、現場での刑事による簡単な事情聴取を終えたあとに百合子に聞くと、思いもかけない事実を告げられる
亡くなった女性は、百合子が不倫をしている京都の大学教授、大宮総一郎の妻・英子だというのだ

英子の手には、数字が書かれていた紙片が握られており、端の方がちぎられているものの、その数字は百合子の自宅の電話番号に酷似していた
英子は夫の不倫相手である百合子を訪ねるために、わざわざ京都から長崎に来たのだろうか？
そのことを訊ねると、百合子は、英子から電話も掛かってきていないし、会ってもいないという
しかしながら、今の時点では、一番の容疑者は百合子しかいない
犯行時刻には、夏子と百合子は一緒に食事をしていたが、犯行現場である諏訪神社のすぐ近くにある料理屋で食事をしていたので、完全なアリバイとはいえなかったのだ

偶然にも長崎での旅先で事件に遭遇し、被害者が京都に住んでいたということから、京都府警と長崎県警は捜査を協力することに
友人の無実を信じる夏子は事件解決に向けて奔走する
そんななか、事件の容疑者が新たに浮かんだ
それは、長崎に住む北田昇次という男
英子の母親が長崎生まれで、長崎に大きな土地を持っており、その土地に北田の会社が建っていて、土地の所有をめぐって、英子と北田は争っていたのだという
今回、英子が長崎を訪れたのもそれが理由だと判った
しかし、長らく続いていた争いも、北田が英子に五億円支払うことで和解が成立しているという
それに、北田には事件当夜のアリバイがあった

なかなか事件の核心に迫れないなか、大宮家の家政婦をしていた女性から新たな情報を得ることができた
それは、大宮には、百合子のほかにもう一人、大宮の助手を務めている中村麻美という愛人がいるというものだった
どうやら大宮は、百合子より麻美のほうを愛しているようである
この事実を知ったら、百合子はどう思うだろうか？
夏子はふと思った

長崎での土地の問題が解決し、大宮が五億円を受け取りに長崎に向かうことが判明し、夏子は、部下の橋口警部補とともに長崎へと向かう
後を尾行すると、大宮は百合子と合流した
今となっては邪魔者の百合子をどこかで殺害する気なのだろうか？
そんな夏子の心配をよそに、２人は仲睦まじく観光地を巡っている
ホテルも一緒で、別々の部屋を予約していたものの、大宮の部屋を観察していると、百合子の入っていく姿を確認するのだった

翌日、中村麻美が京都の自宅で絞殺死体となって発見されたという報せが入る
死亡推定時刻には、百合子と大宮は長崎のホテルの部屋で一夜を共にしていたことは、夏子も橋口も確認しているからアリバイは完璧
ということは、麻美は誰に殺されたのだろうか？
麻美の死と大宮の妻殺しとは関係がないのだろうか？

妻、もう一人の愛人と、大学教授の周辺で相次ぐ死
その大学教授の愛人である、夏子の友人は、はたして無実なのだろうか？
事件の真相を求めて捜査したとき、夏子はあまりにも哀しい現実を突きつけられるのだった……

～感想～
友人が不倫の恋に溺れ、さらには殺人の容疑までかかる
検視官でもあり警視の夏子は、捜査する立場でありながらも、友人という立場で、友人の無実を信じて奔走する
捜査状況をチラッと容疑のかかっている友人に話したり、事件の真実を闇に葬ろうとするなど、警視として事件を解決したいのか、友人の疑いを晴らすために１人の人間として事件に向き合いたいのか、そこら辺の立場が曖昧だった

友情か仕事か
友情か不倫の恋か
二人の女性は、それぞれを両天秤にかけながらも、ハッキリとした答えを見出せていないようなので、それがもどかしくて、焦点がぼやけてしまったように思えた
いや、何が１番大事かなんて決められないのかもしれない
それぞれの出した答えが、悲しい結末を招いてしまっただけに、やるせないラストとなった

不倫の恋ってどうなんだろ
たまたま愛した人に、奥さんや旦那さんがいただけのこと？
陽の当たらない苦しい恋をするなら、やめればいいと思うんだけれど…
苦しい恋をしたことのない自分にとっては、すべてを犠牲にしてまで愛を貫こうとすることに共感することはできないのであった

という事で、私的評価は星【★★★☆☆】３つです

◆この原作のドラマ化作品◆
平成１４年３月３０日放送
土曜ワイド劇場
山村美紗サスペンス
『京都～札幌雪まつり連続殺人事件・雪ダルマから人妻の死体、嵯峨嵐山に若い愛人の密室死体！』
出演／狩矢和美…藤谷美紀／狩矢警部…田村亮／野田秀一…田中健／西山百合子…相田翔子／狩矢澄江…中野良子／山野美野里…山村紅葉／石原剛…大沢健／野田美奈子…北原佐和子／北原昇次…佐川満男／柳沢高志…深江卓次／中村麻美…田中千代　ほか

※『長崎殺人物語』と『札幌雪まつりの殺人』の原作をミックスして脚色した作品

ジャンル別一覧