あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

聰明な殺意

三十三間堂の矢殺人事件 ~聰明な殺意~    【三十三間堂の矢殺人事件】所収


中学校の教師を勤める田中未知子は、学校が夏休みに入ったので、夫の春夫が単身赴任をしている京都へと向かった
東京に家を建てたばかりでローンが残っていたし、夫の京都への転勤も秋までという話なので、夫婦別々に生活を送っているのである

予定よりも早く京都に着き、夫が住む家の前まで行くと、夫と見知らぬ女性が仲睦まじそうにして出かける姿を、未知子は目の当たりにしてしまう
二人の姿が見えなくなってから、家の中に入ると、夫とその女性がただならぬ関係であることを察した
今はほんのひと時の火遊びで、秋になれば夫は東京に戻ってくるので、関係も終わるだろう…
そう思って、眼を瞑ることにした未知子だったが、秋になっても夫に辞令は出ず、京都勤務のままだった

中学校の休みになると未知子は、夫との関係に距離ができないよう京都に出向き、春夫の世話を甲斐甲斐しくしていた
が、春夫と、同じ会社に勤務している水原和美との関係は益々深まっていくばかりで、始めは控えめだった和美も、最近では未知子に遠慮することなく、堂々と振舞っている
そして、ついに決定的な出来事が起こった
和美が、春夫の子を身篭ったのである
“和美を殺すしかない!”
未知子は、夫との関係を守るために、愛人を殺害することを決心したのであった

殺害方法や自身のアリバイなど用意周到に計画を練り、愛人を殺害した未知子
夫の愛人である女が殺害されて、間違いなく妻である私が疑われるだろうが、計画は完璧なのだから、捕まる心配はないだろう…
事件発生から数日後、未知子のもとに案の定刑事が訪ねてきた
もちろん、和美の事件に関してである
自分のアリバイを主張し、身の潔白を訴える未知子
すべては思惑通りに事が進んでいくように見えたのだが…



~感想~
復讐モノで、完全犯罪を狙うんだけれど、綻びが生じて、その罪が徐々に暴かれていく…
このシチュエーションは無条件に好きなのであります
読んでいて、どうなるんだろ?と、ワクワクしながら読んじゃいます
この作品も先の展開が気になって、ドンドン読んでいったんだけれど、ラストが呆気なくて、ちょっと物足りなかったのが残念

という事で、私的評価は星【★★★☆☆】3つです



◆この原作のドラマ化作品◆
平成20年10月10日放送
金曜プレステージ
山村美紗サスペンス
『赤い霊柩車23・聰明な殺意・京友禅を血に染める愛人殺しの謎…巧妙な時間差トリックに隠れた哀れな愛の末路』
出演/石原明子…片平なぎさ/黒沢春彦…神田正輝/狩矢警部…若林豪/秋山隆男…大村崑/井上未知子…有森也実/内田良恵…山村紅葉/井上利明…相島一之/野村麻子…大西結花/青木珠理…村井美樹 ほか


…ドラマの内容
石原明子が、婚約者の黒沢春彦と自宅で寛いでいると、階上の部屋からのものすごい物音が聞こえた
上の住人は最近引っ越してきたのだが、色々と騒音が酷いため、溜まりかねた明子は、文句を言いにいく
今さっきまで物音が聞こえていたのだから居る筈なのに、住人である青木珠理は応答に出てこない
不審に思った明子が部屋に入ると、割れた花瓶の傍に横たわる珠理の死体を発見してしまう

明子たちが聞いた物音は、花瓶が落下して割れた音だったのである
という事は、まさにその時が犯行時間で、物音を聞いて珠理の部屋を訪れるまでのほんの数分の間に犯人は逃亡したということになる

珠理には身寄りがなく、彼女と親交があるという井上利明が珠理の葬儀を出すことを名乗り出て、葬儀は明子が社長を務める石原葬儀社で取り仕切られることとなった

珠理の葬儀の日、明子は、参列者の中に古い友人である野村麻子の姿を見つける
明子と麻子は東京で知り合ったのだが、麻子は今は京友禅を学ぶために、京都に住んでいるとのことだった
久しぶりの再会にちょっと話をすると、麻子は生活をする為に、夜はホステスをしていて、珠理とは同じ店で働いているので葬儀に参列したとのこと
葬儀の最中ということもあり、そこで二人は別れた

事件の捜査は、なかなか進行せずにいた
ホステスをしていて派手な生活を送っていた珠理には、会社社長と医師の二人の男が恨みを抱いており、容疑者として捜査線上に浮かんできたのだが、犯行時刻には二人とも完璧なアリバイがあるのである
そんななか、麻子と珠理が、顧客を取った取られたで、店の中で大喧嘩していたことが判り、京都府警の狩矢警部は麻子に会おうとするが、彼女は行方をくらましていた

その事実を狩矢から聞かされた明子は、麻子が犯人とは信じられないがゆえに、事件解明に乗り出す
一向に所在が掴めない麻子だったが、麻子がいる場所に思い当たる節がある明子は、その場所へ春彦と共に訪れると、そこには麻子の変わり果てた姿が横たわっているのだった…


…ドラマの感想
葬儀屋探偵明子シリーズの原作ではないうえに、『聰明な殺意』と『夜の不死蝶』の2作品をミックスして脚色されたという作品のわりには、うまくまとめられていた
大村崑氏と山村紅葉氏の掛け合い漫才のような派手な芝居も健在で、良くも悪くもマンネリ化していて、安定して見ることができた
それにしても、明子と春彦は、いつ結婚するんだろう?
いくらなんでも婚約期間が長すぎでしょ




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