あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

冷泉家の羽子板

花嫁は容疑者 ~冷泉家の羽子板~     【花嫁は容疑者】所収


京都放送で特別展示していた羽子板が、盗まれるという騒ぎが起こった
盗まれた羽子板は2つで、冷泉家と飛鳥井家が所有しているいずれも歴史的価値のあるもの
京都放送でニュース番組のキャスターを務めている秋野夕雨子は、本業が推理作家のためか、この事件にとても興味を持つ
テレビ局での特別展示といっても、数多く展示されている羽子板は無防備な状態にあった
また、不特定多数の人々が出入りしていたので、犯人の見当はおろか、いつ盗まれたかも特定できない状態
事件を解く手がかりは皆無に等しかった

事件が事件なだけに、事実を隠蔽することはできず、羽子板の盗難事件は、夕子が出演しているニュース番組『ナイト9』で取り上げることにした
すると、番組終了後に、テレビ局に夕雨子宛に一本の電話が鳴った
電話をかけてきた相手の男は、「自分が盗難騒ぎの羽子板を持っている」と語った
番組に寄せられる情報は色々なものがあり、すべてが正しいことではないことは夕子も判っていたが、直感的に男の声に真実味を感じ取った
この話は内密に…と念押ししてから喋り始めた男によると、「ある人物から羽子板を買ったのだが、その羽子板が盗難騒ぎのものかもしれない」という
ただ、羽子板を手に入れるために自分も大金を払ったので、タダで羽子板を渡すことはできないとのこと
これは騒ぎに便乗した金銭目的の詐欺だろうか?
それともただのイタズラだろうか?
電話をかけてきた男の名前をなんとか聞き出そうとするが、相手が電話を切りそうになったので、夕子は自宅の電話番号を伝えて電話を切った
その夜、夕子は遅くまで起きていたが、男から電話が掛かってくることはなかった

翌朝、夕子は電話のベルで目覚めた
出ると、相手は、昨夜テレビ局に電話してきた男だった
あれほど、自分が羽子板を持っていることは内密に…と話したのに、今朝の朝刊に羽子板の所在を知っている男が現れたという記事が新聞に載っていて、「どういうことか?」と、電話してきたのである
昨晩、夕雨子はテレビ局の上層部に相談したので、そこから漏れたのだろう
相手の男は、羽子板を買った人物から「羽子板のことは黙ってろ」と脅迫され、恐ろしくなってきたので、羽子板を返すという
どこに羽子板があるのか夕子が訊ねると、男は「京都駅のコインロッカーに預けている」とのこと
相手の男が、コインロッカーの鍵をどこに送ればいいのか訊ねたときだった
突然、受話器の向こうで揉める声が聞こえ、叫び声があがったかと思いきや、電話が切れてしまったのである

直感的に何かを感じた夕子は、京都放送に電話を入れ、沖アナウンサー、番組プロデューサーの星川に事情を説明し、京都駅へと向かう
男は、羽子板は京都駅のコインロッカーに保管していると言っていたが、どこのコインロッカーに入っているか見当がつかないし、全部をこじ開けて確認することもできない
どうしたらいいものか途方に暮れている3人の傍を、サイレンを鳴らしたパトカーが疾走していった
顔を見合わせた夕子たちは、パトカーの後を追った

ある古びた一軒家で、ここの住人である市田巌の他殺体が発見された
京都府警の桜田警部が、検死の為に死体を動かすと、死体の下から鍵が出てくる
桜田がその鍵を手にしたとき、警官の制止を振り払って、顔なじみである秋野夕雨子が「その鍵は京都駅のコインロッカーの鍵です!」と声を上げながら、現場に入り込んできた

桜田警部に事情を話すと、夕子たち一行は、京都駅へと向かった
鍵の合うコインロッカーを発見するものの、その中には飛鳥井家の羽子板しかなかった…
冷泉家の羽子板は無事なのだろうか?
羽子板を盗み、市田を殺害した犯人は?
小さな証拠を手がかりに、夕子は事件を推理する…



~感想~
事件を取り巻く登場人物があまりにも少ないが、犯人は最後まで分からず、事件を解く鍵となる電話のトリックも、なるほどな!と唸らせてくれた

という事で、私的評価は星【★★☆☆☆】2つです



◆この原作のドラマ化作品◆
ありません




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