雨がしずかに降る日には

こころの病気




 「気分障害」としてグループ分けされている病気があります。これは精神状態のうち、「気分の落ち込み」に注目したものです。この「気分」というのは、瞬間的な感情ではなく長く続く感情、情動というような意味です。

 「気分障害」の中にあるのは
・うつ病性障害(単極性障害)
・躁うつ病(双極性障害)
に分類され、更に、「うつ病性障害」から
・大うつ(一般にうつ病のことを指します)
・小うつ(大うつ病より症状の少ないうつ病)
・気分変調性障害(症状は軽いが、2年以上長期に続きます)
と分けられます。
 また他には不安障害(パニック障害など)、統合性障害(精神分裂病)、他にも痴呆性疾患や不眠症など、様々なものがあります。


 躁うつ病(双極性障害)について

 うつ状態とは別に、非常に気分が高ぶるとともに活動性も増して、今の自分は何でもできると思ってしまうような状態を、「躁状態」といいます。この躁状態とうつ状態が交互に現れる病気を、躁うつ病(双極性障害)といいます。躁状態が強くなりすぎると、どんどん気持ちが大きくなって、周囲の人とトラブルが絶えなくなったり、借金をして危険なビジネスやギャンブルに乗り出したりします。このような状態では生活を破壊してしまうおそれもあり、入院も考えなくてはなりません。


 パニック障害について

症状:不安障害の一つで、予期しないときに、激しい不安感を伴って、動悸、息が苦しくなる、めまいがするなど、特別な原因や前触れもなしにこのような発作がくり返し起きる病気です。

・パニック障害からパニック不安へ
 何回か発作に襲われると、また発作が起きるのではないかと、いつも不安に思うようになります。これを予期不安といいます。(電車に乗るのが怖い、など)
 発作は大変恐ろしいですが、頼りになる人がそばにいたり、安全なところに逃げ出せる場所なら少しは安心します。


 統合性失調症について

 かつては精神分裂病と呼ばれていましたが、これからは「統合失調症」という新しい呼び名を使うことになりました。これは、多くの患者さんや家族、医療機関の努力によって実現したことです。
 私達は普段、色々な情報を受け取り、自分ながら現実を見ています。そのような「統合」をしながら現実を見ています。そのような「統合」(思考のまとまり)が何らかの理由でまとまらなくなっている病気、という意味でこの病名が使われるようになりました。


 痴呆について

 痴呆の約60%はアルツハイマー型痴呆、約30%は脳血管性痴呆です。アルツハイマー型痴呆は、脳内の神経細胞が通常の老化のスピードより速く変成し脱落するために、知的機能が低下するものです。その原因としてアミロイドとおいう異常タンパクがたまり、それが神経毒になるからだと考えられています。
 脳血管性痴呆は脳の動脈硬化により、多発性の脳梗塞や脳出血が起こるもので、そのために脳の活動に必要な酸素や栄養素が補給できなくなり、神経細胞が変成し脱落し、痴呆になります。

 そのほか、ピック病、パーキンソン病など、いろいろな病気が痴呆の原因になります。
 痴呆では知的機能にさまざまな障害が出てきますが、代表的な症状は記憶障害です。
 年をとると、誰でも忘れっぽくなりますし、物覚えも悪くなります。電気を消し忘れた、昨日会った人の名前を忘れてしまったなど、多くの人が経験していることでしょう。しかし、通常の物忘れや物覚えの悪さが体験の一部分だけが欠落しているのに対して、痴呆の場合はその出来事すべてが欠落してしまいます。痴呆では会った人の名前はおろか、誰かに会ったという出来事自体を覚えていないのです。

 記憶障害だけでなく、簡単な計算ができなくなる、文字が書けなくなる、判断力がなくなる、日時や季節や自分のいる場所がわからなくなる(失見当識)など、知的機能が全般的に低下します。
 そのため、自宅にいるのに「家に帰る」と言い出したり、実際に荷物を持って飛び出したりします。引き止めようとすると興奮したり、帰ろうとして徘徊することもあります。夜中に興奮したり騒いだりするせんもう譫妄や、お金をとられたなどという妄想も起こります。

 知的機能の低下は年を取ればある程度出てきますが、普通の高齢者は、そのことを自覚しています。ところが、痴呆の場合は忘れていること自体を忘れてしまうので、日常生活や社会生活ができなくなります。
 うつ病でも、意欲や集中力が低下するため物覚えが悪くなります。そのため高齢者がうつ病になると、痴呆ではないかと家族に勘違いされることがあります。
 発症率は女性のほうが高いとされています。

・周囲の対応

 譫妄、妄想、徘徊など、健康な人には理由のわからない症状も、痴呆の人にはその人なりの理由があるはずです。制止するのではなく、話に耳を傾ける、一緒にお金を探したり歩いてみるなど、お年寄りの気持ちに沿ってともに行動してみると、案外落ち着いてくるものです。とはいえ、痴呆の人の介護を1人で担うのは大変です。
 関係者全員で少しずつ担う、介護の専門家や専門施設を利用するなど、介護する側に大きな負担がかからないようにしましょう。伝達物質の乱れという共通の原因を持つ「こころの病気」ですが、表面に現れる症状には色々なタイプのものがあります。

⇒うつ病について


© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: