インディー(15)




結構、酔いが回っているはずなのに相変わらず口調は堅かった。


雑居ビルの6階

ドアは安っぽくなかった。


私は、たいていの店は、店構えで見切りを付けてしまう。

それで、損をしている部分もあるだろうが、ともかく店主の心意気、信条、店の経営状態は店構えにほとんど100%反映されてしまうと考えている。

店の名は
ブルゴーニュの地名をそのままコピーしたものだった。


「ここはショットバーだよね?」

確認するようにバーテンダーにたずねる。

バーテンダーは、背が高く、肩幅が広く、いかにもスポーツやってましたという風情。

京都では余り見かけない顔立ち、

色白で眼がつり上がっており、浅野忠信をもう少しすっきりさせた感じ。


サッと名刺を差し出しながら


「ええ、ショットバーっすよ。でもオーナーさんが、ワインバーやってはりまして・・」

「ヤベと言います。ヨロシク!」


やっぱり体育会系の乗り


ナオミはモスコミュールを、私は樽熟成のテキーラベースの優しいショートをシェイクして適当にと・・・

バーテンダーのシェイクする姿が、なんだかオーバーアクションで滑稽だった。


以後、この店には、通い詰めることになったが、ヤベがシェイクしている最中にシェイカーから材料を飛ばして、私の顔や服に神の祝福のように振りかけてくれたのは、一度や二度では済まなかった。


テキーラは一般にきつくて粗野で男臭い酒としてのイメージが定着してしまっているが、樽熟成のテキーラは思いの外、繊細で口当たりが優しい。

値段にこだわる必要はない。

樽熟成のテキーラならば、2000円以下のもので十分に楽しめる。


アジの干物を焼いたやつには、樽熟テキーラの麦茶割りが抜群に相性が良い。

もちろん、目刺し、サバの干物などにも


こいつらは、血のうま味をたっぷり持っているから、デリケートな日本酒を合わせるのはかわいそうだ。

日本人なら、焼酎を
と行きたいところだが、私は樽熟テキーラ!


(つづく)




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