インディー(60)



「確かに。城天からメジャーに行くバンドも出始めていますしね」


「でも、もう一歩踏み込んで、たとえば梅田の陸橋をアーティストのために完全解放するとか・」

「うーん、それは難しいなあ。あの陸橋の所有者は大阪市なんですよ。ですから、府議会としては、いかんともしがたい領域なんです」


(突然、政治家らしくないお役人っぽい回答。少し、がっかりかな?)


出されたお茶を飲み干し、時間を裂いていただいたことに対する謝辞を述べ、原稿ができ上がったらファックスで送るのでチェックしてほしいとお願いして、事務所を後にした。


春の夕暮れ、はんだか鼻がムスムズする。

花粉症の季節。

インタビューというものは、初対面でなくても神経を使い、かなりくたびれる。

まして、普段接しているミュージシャンたちとは異なった人種へのインタビューとなれば・


商店街の喫茶店に入って、しばらくぼうっと座り込んでいた。


突然、携帯が鳴った。

ヒロトからだった。


店の中だったので、一旦切り、すぐに支払いを済ませて表に出て、かけなおした。


「どうしたん?飲みに行こうってか?」


と言いかけたのを遮るようにヒロト
「大変です。ヤベさんが!」


「ヤベがどないしたん?」

「やくざにやられて腕折られて入院しはりましてん!」

「エッ!」


「どこの病院?」

「トガノ病院って、ゆうてはりました」


「大阪か?」

「そうみたいです!」


「トガノゆうたら梅田の方やな!」

「そうやと思います!」

「すぐ行くわ!ヒロトは今どけや?」

「京都です!もちろん、ぼくも今から行きます」

「ヨッシャ!先に行って、場所はまた電話で教えたるわ!」

「わかりました!」

「ホナ!」


(つづく)




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