インディー(61)



両目にアオタン。

右手は、包帯ぐるぐる巻き。

頭もぐるぐる巻き。


「男前が台なしやんけー」

わざとふざけた口調で話しかける。


「いや、ちょっと・」


「どないしたん?」

「ちょっとヘマやってしまいまして」

かなり落ち込んでいる。


だが、頭は一応正常のようだった。


「ヤーサンに言われて、パチンコのイカサマのバイトやってたんやけど」

ことばが途切れる。息も苦しそう。

「最後の日やったし、ちょっと金くすねたろ思たんが間違いでしたわ」


「あほやなあ。なんで、そんな事したんや?」

「ちょっと金が入り用でして・」

「もしかして、こないだの彼女がらみか?」

「そうです・」
と消えそうな声。


「そや、ちょっと頼みにくいことなんスケド・」

「なんや?」

「彼女が、ヤクザに捕まってると思いますねん。」

「思うて中途半端やなあ。携帯で連絡取れへんのか?」

「電話出よらんし、メールも返事ないし」


「どこの事務所や?」

「東淡路の上新組言います」


「ヨッシャ、今から行ってみるわ。ところで、君の携帯番号とメルアド、まだ聞いてなかったな」


「そや、後でヒロトがここに来るはずやけど、今の話、絶対するなよ!堅気の学生がかかわることやないから!」

「わかりました」


と消え入りそうな声。


「ヤバなったらメールするから110番してくれ」

「わかりました」


泣き出しそうな顔のヤベ


あほ!

病院の前に止まっていたタクシーに乗り込み、組事務所に向かった。


(つづく)




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