インディー(131)



「行きます!行きます!」

「でも、初対面の人には、靴下脱いで鼻先に突きつけたりしないでね」

「そんなことしないわよヌェッ!」

とまたナオミと顔を見合わせる。

なんでこんなに二人は息が合っているのだろう?
と不思議に思う。


飲んで食って、ついにはオーダーした肉は、3人のおなかにきれいに納まってしまった。


「あ゛ー、おいしかったー」
とトモコ。

「このあと、どうする?」
と私。


「しばらく動けないー」
とナオミ。

店のおばさんたちが、あきれた顔でながめていた。


夏至が近い街は、まだ、たっぷりと明るかった。


三人とも、思考力が極端に落ちた状態のまま高架下の商店街をふらついた。

「黒門市場のとこにおいしいケーキ屋さんが、あったなあ」
と私がつぶやいた途端

「イクイク!」
と舌を出すトモコ。

「あたしも行くー」
とナオミ

とろり、とろりと歩いて近鉄に乗った。

日本橋で降りて、また、とろりとろりと歩いて黒門市場のそばのポルトノワールへ。

幸運なことに、5席ほどしかないテーブル席があいていた。

三人で座り込む。
やたらと喉が渇いて、水を何度もオーダーした。

それぞれ違うケーキをオーダーして少しずつ分け合った。

「ここは、シュークリームが、トビきりうまいんだよ」

「トモコはこれから実家でしょ?買って帰ったら?」
とナオミ。

「そうするー」
とぼんやり答えるトモコ。

ぼんやりしながら、とろりとろりと歩いて地下鉄に乗り、トモコとは、大阪駅で別れた。

帰りの阪急の中で、ふたりとも頭を寄せて眠りこけてしまった。


夢の中で、トモコのノホホ笑いの声が、谺していた。


(つづく)




© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: