インディー(140)



初夏らしく良く晴れて乾燥した日だった。

ともかく喉が渇いていた。

「どこかのショットバーでジントニックでも引っかけよう」と思って三宮の街をふらついていた。

ふと目に入ったのが、道に大きく張り出したバーの看板。

「入ってみるか?」と階段を駆け上がる。

目的の店は、できたばかりの3階建ての小さなビルの一番上。

2階から3階への階段の途中から上を見上げて、はたと立ち止まった。

丸い蛍光灯にブルーのセロファンが、薄汚くかぶせてあった。

瞬間「この店とは縁がない」
と判断を下し、一階まで走り降りた。

ふと足元を見ると、小さな木の看板に
BAR E CUCCINA
BONO
と焼きが入れてあった。

小さな白色電球の照明も冴えていた。

「2階にもバーがあったのか」
と思い直し、ゆっくりと階段を2階まで昇った。

ダークグリーンの重い扉を開けた。


それが、やっさんとの最初の出会いだった。


(つづく)




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