INACTIVE OF SAFEHOUSE

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アスフェルレイトの過去


それでは本編をどうぞ。

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――2年前、魔界『シェイド大陸・コルト国』

 『コルト国』・・・そこはシェイド大陸の東海岸に位地する国で、それなりに大きい国だ。
私はその国の宮殿の騎士団、『コルト王宮騎士団』の六番隊の副隊長をやっている。
騎士団の中には隊が24番隊まで存在し、その実力によって1から24までの隊番号が決まり、
もちろん数字が少なければ少ないほど実力は上である。

 「えぇい!!何をしているっ!!振りが甘い。そんなことではあっという間に死んでしまうぞ!!」

この人は現六番隊の隊長、『ギルファルト・クロノクル』。・・・私の父上だ。

「・・・よし、今日の訓練はこれまでっ!!各自自己管理を怠らないように。解散。」
「「ありがとうございましたっ!!」」

今日の訓練の終わりの合図を聞いたとたん、隊員が一斉に叫んだ。

「それと、アスフェルレイト副隊長!!本日19:00に私の部屋の前に来るように。大事な話がある。」
「・・・はぁ。」
「そんな曖昧な返事では駄目だ!!わかったか!!」
「了解!!アスフェルレイト、本日19:00、隊長殿の部屋へ向かわせていただきます!」
「よし、それじゃぁ、待ってるぞ。」

・・・父上はたとえ私が娘でも隊員の、部下の一人として扱う。決して特別扱いしない。
しかし、私から見れば父上は父上、父親相手に敬語をつかうのは少々違和感がある。

 六番隊員は男女合わせて約380人程度。その内医療班が約90人。兵士の殆どが男性、
もちろん少数ながらも女性も属している。その逆で医療班は女性の方が多い。
私はその少数の女性兵士をやっている。これでも実力で副隊長まで昇り詰めたのだ。

「・・・なぁ、これ3番隊の娘なんだけどよ。」
「どれどれ・・・おっ。かわいいじゃん。こっちの娘は・・・」
「ふぅむ。13番隊の医療班の娘ですかぃ。彼女は綺麗ですし胸がありますからねぃ。狙ってる輩は多いですよ?」
「うわっ!?ふ、副隊長!?あの…これは・・・その・・・」
「まぁ、盗撮でも何でもしてもいいですけど…バレない程度にしておいた方がいいですよ?」
「り、了解であります!!」
「わかればよろしい。それじゃ、お疲れでした~」
「・・・副隊長も結構いいと思うんだけどな。俺は。」
「俺もそう思うけど・・・親父が隊長だぜ?恐ろしくて恐ろしくて・・・」
「やっぱりあの噂本当なのかな・・・自分の娘だからって副隊長の座に上げたって奴。」
「さぁ?実力はあるぜ?・・・でも…女が副隊長なんて前代未聞だからな・・・」

・・・・・・私は自分の実力でここまで昇り詰めてきたのだ。決して父上は関係無い。
そんな声を後に聞きながら、私は訓練場控え室を後にした。

 「ん・・・今・・・何時・・・?」

私は訓練の後自室に戻った後、すぐ寝てしまったようだ。
その証拠に訓練が終了した時間から少々時計の針が進みそろそろ19:00を・・・

「ってもうこんな時間!?早く行かないと父上に何を言われるか・・・」

私は手早く着替え、髪を整えぬまま、父上の・・・いや、隊長殿の部屋へ急いで向かった。

「遅い!!2分の遅刻だ!!この2分が戦場でどれ程の命を左右するか・・・」

・・・また始まった。父上の戦場論・・・私が指定時刻に間に合わなかったり、
何かしらのことで私が失敗したりすると父上のこの戦場論が炸裂する。それがまた長いのだ。

「・・・それで、隊長。大事な話というのは・・・?」
「そもそも時間と言うのは・・・おっと。そうだったな。・・・先日の戦闘は・・・覚えているな?」
「・・・えぇ。しっかりと記憶しております。」

先日の戦闘・・・それはコルドの北西に位置する国、『ファルディール』の軍が侵攻して来た時だった。
この国は位置の関係上、海産物も多く、農作物も良く育つ環境であるため、時々他国が攻めてくることがある。
コルド国王は非戦闘主義者の為、他国を侵略せず、また、他国が侵攻してくる時は説得、戦闘はその説得が
通じない場合にのみ行われる。昔からコルドはファルディールとは友好的ではなかったため、これまでにも
幾度と無く侵攻して来た。今年に入ってから8回目、それが先日の戦闘で、その戦闘で六番隊の副隊長が
戦死した。

「本来なら戦死したレグルムの変わりの副隊長は隊の中から選ぶのだが、今回は色々とあってだな・・・」
「色々って・・・なんですか?」
「実はゼルフィス殿に頼まれてな、一人実力はあり、やる気が有り余ってる奴がいるのでそいつを副隊長に・・・とな。」

ゼルフィス殿というのは二番隊の隊長で、父上の師匠でもある方で、私も何度も稽古をつけてもらった事がある。

「つまり・・・厄介者を押し付けられた・・・と言うことですか?」
「ん・・・まぁ、ずいぶんと掻い摘んで言うとそういうことになるな。ハハハハハ。」

笑ってごまかしてはいるが、きっと本人もそう思っているのだろう。しかし、恩師の部下を
ストレートに『厄介者』というのは気が引ける為だろう。

「それで、その厄介者はどこにいるんですか?」
「厄介者って・・・そんなひどい言い方は無いだろ?副隊長殿?」

私に向かってそう言い放ったのは、父上の部屋から出てきた私と同じくらいの歳の金髪の青年だった。

「まさか、こいつが新しいもう一人の副隊長なんですか!?」
「そう、そのまさかだ。とりあえず、わからない事が多いだろうから、コイツの事は任せたぞ。」
「え・・・ちょっ・・・隊長!?」

そういって父上はコソコソと自室に戻り、「カシャン」と御丁寧に鍵までかけて閉じこもった。

「・・・とりあえず。私が六番隊副隊長、アスフェルレイト・クロノクル。よろしく。」
「俺は・・・」

そういうと青年はおもむろに自分の指にナイフをあて、切った。その傷口から出てきたのは赤い血・・・
ではなく、黒いドロッとした液体だった。青年はその液体を手に取り、その手を握った。

「お前・・・一体何を・・・」
「俺はブレイズ、ブレイズ・ガーマルド。これはお近づきの印に。どうぞ。」

そういうとブレイズと名乗った青年は黒い液体を握った手を開いた。
しかし、そこにあったのは黒い液体ではなく、

「えっ・・・指輪?」

指輪だった。紅い石の付いた環の部分は黒い、指輪。

「俺の血には炭素が多量に混じっている。俺らはその血を弄ってある程度のものなら作ることが出来る。多分サイズは合うと思うぞ?」
「サイズは合ったとしても・・・お前の血液が元だって言うのはどうも・・・ねぇ?」
「気にすんな気にすんな。ちなみにその石の部分は炭素を使って血液の赤を交えたダイヤ、
環の部分は炭素や鉄分だ。耐久性は高いぞ?」

この魔界にだって色々な種族がいる。私のように幻獣種を祖先に持つ者やサキュバスの血が流れているもの、
龍を祖先に持つ者・・・それ以外にも数えられないほど多種多様な能力を持った種族がいる。
その中で、炭素の混じった血液を好きな形に変化させることが出来る種族がいると勉強したような気がする。

「・・・ま、いいですか。これは受け取っておいてやりますよ。」
「お、そいつはありがたい。これからよろしく頼むな。アス。」
「・・・なんだか凄くなれなれしいですねぇ。ブレイズ殿。」

ブレイズが六番隊の副隊長に着任してから1ヶ月が過ぎた。最初、いきなり着任したブレイズは
他の隊員に孤立させられると思ったが、そんな心配は必要なく、寧ろその心配を裏切り、
彼は他の隊員にほんの二、三日で馴染んでしまった。

「ブレ副隊長。これ、見てくださいよ。」
「どれどれ・・・おぉ。これはこれでまた・・・」
「・・・今度は何ですか?・・・これは・・・」
「うをっ!?アス!?びっくりするなぁ。驚くじゃないか。」
「え、えっとこれはその・・・」
「びっくりするも驚くも大した差ないじゃないですか。しっかしここまでしますかね。」

その青年兵士とブレイズが見ていたのはある女性兵士の盗撮だった。
しかし、今回のは前回のようなものではなく、 着替え中 だったり シャワールーム の写真だった。
いったいどこをどうしたらこんなものが撮れるとか。

「ま、個人の趣味にとやかく言う事はしませんけどね。・・・そのうち何か降って来るかも知れませんよ?」
「お。なぁんだ。よくよく見てみるとアスのもあんじゃん。ホラ。・・・やっぱデカイな。」
「・・・ッ!!えぇいっ!!それを渡せぇっ!!」

ブレイズは私が話している間もそのアルバムを見ていたらしく、私の着替え中の写真を発見したようだった。
・・・今度からは色々と気をつけようと心に誓った。

 そんな感じで平和な時間が過ぎて行き、1ヶ月の時が流れた。
すると、そんな平和な時間にしばしの別れがやってきた。

『本日未明、北西方面から飛龍の大群を確認。どうやらファルディール国から飛翔した模様。』

そんな報告がコルド国に行き渡った。どうやらファルディールの軍がこちらに攻めてきたようだ。
ファルディールは主に龍を祖先に持つ人種で、龍と心を通わせることが出来るらしい。そのため彼の軍では
騎馬隊ではなく騎龍隊が主な機動部隊となっている。

「また来たか・・・六番隊の諸君、いつでも出撃できる準備をしておけ!!いいな!!」
「「了解です!!」」

父上の命令を聞き、隊員全員の心情は一気に変わった。平和だった心から戦場への心へと。
これほど早く心情を入れ替えることが出来るのは、父上に対する隊員の人望のお陰だろう。

「・・・またファルディールか。一体何回攻めてくるんだろうな。アス。」
「・・・さぁ。この国が落ちるまで・・・じゃないんですか?」
「やっぱそうなのかねぇ。・・・この戦いが終ったらさ、一緒に休暇とって出かけないか?」
「もう戦闘後のこと考えてるんですか?・・・っていうか副隊長が二人ともいなくなれるわけないでしょう?」
「まぁ、そうかもしれないけどさぁ。・・・駄目もとで隊長にお願いしてみないか?」
「・・・ま、それもいいかも知れませんねぇ。やってみますか。」
「おし。決まり。・・・それじゃぁさっさとこの戦闘を終らせないとな。」

ファルディール軍が進撃して来たという知らせから一日半経った後、戦いの火蓋は切って落とされた。

ガン!!ギィン!!  所々で刃がぶつかり、肉が断ち切られ、血飛沫舞う音がこだまする戦場は、
ほぼ地獄絵図と呼んでも良いほどに悲惨な状況になっていた。敵は飛龍に乗り空中から。
こちらは地上から馬に乗り戦う。普通、戦況はこちらが不利だと思われるが、こちらの国、
コルドは主に幻獣を祖先に持つ人種で、幻獣の力、魔法と呼ばれる力を使える。
それにより、飛龍に乗っている者相手に互角以上に渡り合うことが出来る。もちろん、コルド出身者
以外でも、魔法を使える人種は存在する。

暗黒に揺れし一灯の灯火、紅く、蒼く揺らめいて、今彼の者に裁きを与えん!!・・・ジャッジメント・フレア!!

ブレイズの唱えた呪文により、紅と蒼の炎が空を飛ぶ飛龍とその乗者を燃やし尽くした。
炎が消えた後に残ったのは黒く焦げた飛龍と、たんぱく質の焦げたいやな臭いだけだった。

曇天に走りし紫色の閃光、全てを切り裂く刃となりて、今こそ敵を斬り刻め!!・・・ライトニングエッジ!!

私の唱えた呪文によって空を飛んでいた飛龍の翼を引き裂かれ、地に落ちた兵士は首を折り即死しただろう。
翼を引き裂かれた飛龍も雷によって首を焼き切られ、肉塊と化していた。

「おぉ。流石にやるねぇ。 『黒雷の戦姫』 様?」
「お前だってやるじゃないですか。 『月の焔』 殿?」

それぞれ分担していた敵を倒し、私達はそれぞれの通り名で呼び合った。私の通り名『黒雷の戦姫』とは
私がいつも黒い鎧を見に纏い、雷の魔法を多用するところから来たものだった。
そしてブレイズの『月の焔』とは、前の夜戦での戦いの最中、彼の金髪が光り輝いたその美しさから、そして
彼が炎の魔法を多用するところから来たようである。

「この様子だと明後日にはカタが付きそうだな。」
「そうですね。それにしても・・・隊長の方はどうなってますかねぇ。」


 「くそっ!!いくらなんでもこれほどの敵を相手にするのは・・・っ!!」

二番隊隊長『ゼルフィス』と六番隊隊長『ギルファルト』の名前は各地に響き渡っていた。
そのため、ファルディール軍もその二人に集中して攻撃を仕掛けていた。

「そんな弱音を吐いている場合では無いぞギル!!敵はまだまだいるんだ!!それに・・・あいつも来るだろう。」
「あいつ・・・ですか。そうですね。奴は絶対来るでしょう。片目と片腕の復讐として・・・」

二人の言っている『あいつ』とは、ファルディール四天王と呼ばれる男の一人、『アムルセン・ヴォーグ』の事で、
かつて二人と戦った時、アムルセンはゼルフィス殿に左目、父上に右腕を持っていかれ、その復讐を果たす為、
コルド進行の時、必ず二人に勝負を挑んできた。

「ほぅら。噂をすればなんとやら、来たぞ。」

青い飛龍の小隊の後に黒く大きい飛龍の影が現れた。その飛龍こそアムルセンの相棒である飛龍である。
その黒い巨体から各国では『カイザードラゴン』と呼ばれ、恐れられている。

「よぉ。久しぶりだなァ『白銀の弓帝』と『瞬冷の英雄』。決着をつけにきたぜェ。」
「そんな事言って・・・今まで何度来ても決着など付いておらんじゃないか。」
「ハッ!!つまりそれは『二人がかりでもたった一人を倒せない』とでも言ってるのか?」
「貴様!!いい気になってるんじゃない!!」

アムルセンはわざわざ公平さを保つ為カイザードラゴンから降り、二人に勝負を挑んだ。
奴は潰された左目に眼帯、斬り落とされた右腕には 小飛龍の腕 を移植していた。

「いくら喚きあってても決着はつかねェ。さァ、決着つけようぜェ!!てめぇら!!手ェ出すんじゃねェぞ!!」

そう言い放つとアムルセンは左手に剣を、右腕の龍の腕を構え、二人に向かっていった。
ガッ!! 父上の剣はアムルセンの右腕に受け止められていた。

「くっ!!やはり・・・その腕はこの刀じゃぁなんともならないかっ!!」
「当たり前だ!!飛龍は冷気に強く、灼熱にも負けねェ!!お前の剣の冷気何ざァこの腕にゃなんとも無いねェ!!」

父上の持つ剣はかつて北方に生息すると言われている氷狼・フェンリルを討伐し、その犬歯を取り、
その歯から削りだしたもので、その刃は冷気をおび、触れる物全てを凍りつかせると言う。
それが父上が『瞬冷の英雄』と呼ばれる由縁である。

「ほらっ・・・よォッ!!」
「ぐぁっ!!・・・ぐぅっ・・・あぁっ!!」
「ギル!!よくも貴様・・・これでもっ!!」

剣を掴まれ、身動きできない父上をアムルセンの刃が襲った。その刃は父上の左腕を瞬断していた。
その様子に怒りを覚えたゼルフィス殿は銀色の尾を引く矢を放った。
が、その矢はやはりアムルセンの龍の腕に弾き返されてしまった。

「ハッ!!こんなもので俺の左目がやられたとはなァ・・・ムカッ腹が立って来るぜェッ!!」
「くっ・・・やはり駄目なのか・・・」

ゼルフィス殿が放った弓矢は特別製で、矢の羽の部分には麒麟の鬣とペガサスの翼を利用した物で、
その二つの神聖なる物を使用した矢は神秘な光の尾を引いて飛ぶ。その光は全ての邪を滅すると言われている。
その矢の白銀の光と、寸分の狂いも無い狙いが『白銀の弓帝』と呼ばれる由縁である。


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「隊長!!ゼルフィス殿!!」
「・・・ッ!!大丈夫ですか!?ギルファルト隊長!!ゼルフィス隊長!!」

そこに私たちが到着した時には、父上とゼルフィス殿は横たわっていた。

「・・・ッ!!父上!?その腕は・・・」
「くっ・・・アスフェルレイト副隊長・・・なんだその呼び方は・・・・・・うぐっ!」
「なっ・・・今はそんな事を言っている場合では・・・早くその腕を・・・」
「なぁに・・・これしきの事・・・どうってこと無いさ・・・それよりこの場から早く逃げろ・・・奴はまだ・・・そこに・・・」
「・・・っ!!アス!!危ないっ!!」
「・・・・・・・・ッ!!」

バァン!! 岩陰から銃声が聞こえてきた。どうやらそれは私が父上の腕を心配している隙に、
隠れていたアムルセンはライフルで私と父上を狙っていたようだった。その弾は私の頭を狙っていたのだろう。
しかし、その弾は飛び出してきたブレイズによって阻まれた。

「チッ!!外したか。・・・まぁ良い。今日の所はここらで引いておくか・・・何?」
「・・・許さない・・・許しておけない!!」

アムルセンは父上に止めをさせなかった事を少々不満に思いつつ撤退をしようとしていたのだろう。
だが、私から発せられる雷を感じ取ったのだろう。

地獄に轟きし漆黒なる雷よ、我が前にひれ伏せし愚かなる者に断命の裁きを!!・・・ヘルズ・テンペスト!!

その漆黒の雷はアムルセンとその相棒、カイザードラゴンを飲み込んで塵一つ残さず消し去った。

「くっ・・・ブ、ブレイズ・・・私の為にこんな・・・」
「ハハッ・・・そんな泣いた顔すんなよ・・・ゴメンな・・・一緒に出かけるって約束したんだけど・・・な。」

その時のブレイズの声は弱々しく、顔にも血の気が失せていた。それはもう死人のように。
私も今まで知らなかった魔法を使った事により激しい頭痛が押し寄せていた。

「そ、そんな事はどうでも・・・それより胸の止血を・・・」
「イヤ、俺はもう助からないだろう。心臓近くをやられたからな・・・そこの血を固めてもどっちにしろ同じだ。」
「で、でも・・・」
「・・・・・・そうだ。お詫びと言っちゃぁなんだが・・・」

そう言うとブレイズは力無い腕で自分の黒い血に触り、一本の塊を作り出した。

「こ・・・これは・・・?」
「オ、俺の・・・残りの血を寄せ集めた・・・ある異世界の・・・東洋の国に伝わる剣・・・刀って言うらしい・・・
女の子に贈るにしちゃぁ・・・無骨なモンかも知れねェけど・・・これでカンベン・・・な。」
「・・・ブレイズ?・・・ブレ・・・ブレイズッ!?」

ブレイズはそのまま私の腕の中で息絶えた。青白い顔で・・・でも、安らかな笑いを浮かべて。
最期まで・・・ブレイズらしい・・・死に様だった。

***********************************

 そして、それから二年の月日が経った。

「ほらそこっ!!切り返し方が甘いですよ!!」

あの後父上は左腕を失った事により六番隊隊長を辞任、
そのまま繰り越しで私が六番隊の隊長を受け持つ事になった。
二番隊隊長だったゼルフィス殿はあの戦いの後病院で処置を続けたものの
その3ヵ月後に亡くなった。

「よし、本日の訓練はここまで。各自自己鍛錬、自己管理を怠らないように。解散。」
「「ありがとうございました!!」」

とりあえず私は隊長の任に慣れて来た。最初戸惑い気味だった隊員も、今では
私の事を隊長と認めてくれたようだった。

「・・・なぁ。隊長のあの指輪って・・・誰かから貰ったものなのかな。」
「さぁ?でも・・・隊長あの剣いつも持ち歩いてるけど・・・そんなに大事なものなのかな。」
「そうか、お前ら新入りは知らないんだな。あの指輪と剣はだな・・・」

あの時、初めてブレイズに会った時に貰った指輪は、今でも私の指で輝き、
最期にブレイズがくれた刀―「黒血刀・月之焔」は今でも私を守っている。





あとがき
と言うわけで、コルド王宮騎士団六番隊隊長、
『アスフェルレイト・クロノクル』の過去・・・と言っても2年前の話です。
・・・一気に書きすぎた・・・長い。でも、読んで頂けていれば幸いです。
これで『少しでもアスの事を分かって頂けたら』と思う今日この頃でした。


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