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第1話
一条の光すら差し込まない空間に一つ、また一つと火が灯されてゆく。
それは何かを呼び込むように。
それは何かを遠ざけるように。
暗い炎が照らすその空間に、一つの影が揺れ動く。
その顔は愉悦の表情に満ちていた。
男は、手にした粉末に一節の詩を乗せて床に撒く。
男は、手にした液体を一定の調に乗せて床に撒く。
芒-ぼう-っと床が淡く輝く。
轟-ごう-っと風が吹き荒ぶ。
男は笑う。
確かに繋がっている。
『この世界』ではない『別の世界』と。
いつもとは違う感覚に、男は興奮を禁じえない。
男は笑う。
芒と輝き、轟と荒ぶる陣を見て。
数多のハズレをひかされて、久方ぶりのあたりくじ。
さぁ、今日は何が起こるだろう。
―1―
「あ゙ー、めーんーどーいー」
「またサボってる・・・・ほら、もう少しなんだからさっさと片付けちゃおうよ」
「ゔーー」
「唸ってるばっかりじゃ終わんないよ?」
「なんで私がこんな事・・・・・・」
「宿題手伝う代わりに一つ言う事を聞く、って言ったのは誰だっけ?」
「・・・・・・私です」
都会とも田舎ともつかないような地区にある、ある中学校の一室で二人の少女が作業をしていた。
一人は肩にかからない程度のセミショート、一人は首のあたりでロングの髪を縛っている眼鏡の少女。
「別に今日じゃなくてもいーじゃん、今日はもう帰ろー?」
「そう言って、この間約束破ったの誰だっけ?」
「・・・・・・私です」
「それで?」
「・・・・・・・・ガンバリマス」
「よろしい」
二人はそんなやりとりをしつつ、図書室の本の整理を進めて行った。
作業を始めた時はまだ高かった太陽も、今では校舎を赤く染めている。じきに、日が暮れる。
「んー・・・・よし、今日の分はこれで終わりかな?燐、お疲れ様」
「やっと終わったー・・・・楓ー、帰りどっか寄って行かない?」
「少しだけだよ?」
「おっけおっけ、了解了解。さぁ行こうすぐ行こう今行こう!!」
「ちょっと燐?!まだ私準備が・・・・・・」
セミショートの少女、燐は言うが早いか図書室を飛び出していた。
その後を追うようにロングの少女、楓が部屋をでる。
「遅いよ?楓ー」
「仕方ないでしょ?職員室に鍵返しに行かないといけなかったんだから」
「ほら、もう時間無くなっちゃうって。急いで急いで!!」
「そんな急かさないでよ・・・・・・ん、行こう」
その場で足踏みをして今にも走りだしそうな燐を制止しながら靴を履き、楓も校門を後にする。
もう日が暮れ始めた頃、燐と楓は商店街を歩いていた。
二人の手にはスーパーの買い物袋が提げられている。中にはにんじん・たまねぎ・じゃがいも・肉。
今晩のメニューが見て取れる。
「今日から1週間ちょっと、お世話になります。楓さん」
「そんな下手に出ても、家事の手伝いはしてもらうからね?」
「ちぃっ」
「バレバレだよ?」
「私、お客さん。おもてなし、大事」
「自分から言って来たんじゃなかったっけ?宿題手伝って、って」
「その分の仕事はしたじゃんさー」
「じゃあ、ご飯に出しても良い?ピーマン」
「それだけは勘弁っ!!」
「だったら?」
「手伝わせてイタダキマス」
「よろしい」
渋々手伝いを了承させられてしまった。
燐と楓の関係は昔から変わらずこうなのである。
「それにしても、楓の両親も大変だねー。この間帰って来たと思ったらまた出張なんて」
「うん・・・・まぁ、二人とも忙しいから仕方ないよ。それにもう慣れてるし」
「そんな友達の為に泊まりに来てあげる燐ちゃん、優しい!!」
「見返りを求めない友達がいたらもっと良かったんだけどなぁ・・・・・・」
「・・・・・・・・ひどい」
燐の一言をさらっと受け流し、少し凹んでいる燐を残して楓はちゃっちゃと歩いて行く。
二人がそんなやり取りをしているうちに、公園に差し掛かった。
日が暮れた公園は既に子供達の影も無く、電灯が二人の影を伸ばすだけだった。
「そういえば、昔この公園でよく遊んだよねー」
「懐かしいね。あのブランコとか、砂場とか」
「そうそう。んで、こう地面に丸描いて『私の陣地ー』とか」
「やってたやってた」
二人が微笑みながら小さい頃の話をしていると、燐の描いた円が、輝き始めた。
「・・・・・・へ?」
「燐・・・・何したの?」
「私は何も――ってわぁっ?!」
「きゃっ?!」
円の発する光が強くなると同時に、風が渦を巻き始めた。
周囲の風を撒きこんで、しだいに眼を開けていられないほどの強風となる。
風が強まると同時に円自体が光を強め、目を焼くような強い光を発した次の瞬間、
二人の姿が、消えた。
―2―
「んっ・・・・んん・・・・・・?」
燐が目を開くと、見慣れない場所に仰向けの体勢で寝ていた。
灯りと呼べるものは周囲にある松明のみで、周囲の全容を把握する事は難しい。
身体を起こそうとして、隣で楓が同じように倒れている事に気付く。
「楓!かーえーでっ!!」
「ん・・・・・・燐・・・・・・?」
「良かった、気付いた?」
「うん・・・・ここは・・・・どこ?」
「わかんない。少なくとも、公園では無いみたいだけど・・・・」
二人が不安そうに周囲を見回していると、その空間の奥で揺らめく影が見えた。
影が少しずつ二人に近づき、二人はそのまま後ずさる。
影の主から声が発せられる。
「ふむ、今回もはずれか・・・・いや、しかし人を呼ぶ陣に関しての記述は見た事は無かったな・・・・・・」
影の主が視認できる位置に姿を現す――20代後半ほどの、長身の男。
二人の事を足元から舐めまわすように観察する。
正直二人は、引いていた。
「な、ななななな、なんなのあんた?!」
「私達に何の用ですか?!」
「何?!何かする気?!」
「何かって何?!」
「何ってそりゃあ・・・・・・」
「いやぁぁぁぁぁっ」
「・・・・君達、落ちつけ。別に君達に危害を加えては」
「ど、どどどどどどどど」
「~~~~~~~ッ」
「少しは他人の話に耳を傾けないか?」
二人が落ち着くまで、30分以上かかる事となった。
「それで、あんたは・・・・・・」
「私はアクナイト・グリラシオ。まぁ、しがない研究者だよ」
「・・・・外国の方・・・・・・ですか?」
「外国?まぁ、出身はこの辺りではないが・・・・・・君等は?」
「私は岸島 燐。まぁ、しがない中学生かな」
「・・・・矢車 楓です。」
「キシジマにヤグルマ、また変わった名前だ」
「私達からしてみればそっちの方が十分変わってるんだけど・・・・」
「・・・・・・そっちは名字で、燐と楓が名前です」
「ほぉ、ファーストネームが後ろに来る、と・・・・リンとカエデか」
「そんなことより、ここはど」
燐が現状所在地を問おうとしたところに、突然轟音が響き渡った。
轟音は頭上で唸り、天井の少し下を何か――金属のような物が走ったと思った次の瞬間、
見上げた先には、空があった。
「・・・・・・は?なにごと?」
「案外、今度は早めに見つかったな。いつまでも侮ってもいられないか」
アクナイトがそんな事を呟いていると、快晴とも言える頭上から声が投げかけられる。
「ようやく見つけたぞ!アクナイト・グリラシオ!!」
「いつもより早いが、いつも通りの強行手段はそろそろ考えた方がいいんじゃないのか?」
「黙れ!今日と言う今日は逃がさないぞ、大人しくしろ!!」
言うが早いか、アクナイトに向かって頭上から大きな腕が伸ばされる。
愕然とする、燐と楓。
「な、なに?!なにこれ楓?!本で何か見た事――」
「ある訳ないでしょ?!それこそSFか何かでしか・・・・」
アクナイトは腕に追われながら、見た目によらない俊敏さでかわしていた。
避けながら、二人に声をかける。よほど余裕があるように見える。
「招待しておいてすまないが、私はこの場を失礼させてもらう。くれぐれもそこのボンクラ君に潰されないよう気をつけろ」
「はぁ?!ちょっ・・・・・・」
燐の叫びが届いたか届かないか、アクナイトは部屋の奥へ消えて行った。
陽の光に照らされて部屋の全貌がはっきりする。
壁は岩肌、床は土。感覚としては洞窟の小部屋、と言ったところか。
「くそっ・・・・また逃げられたか・・・・」
「・・・・ん?エアデ、あそこに女の子が・・・・」
「・・・・・・え?」
頭上を見上げていると、そんな会話が聞こえて来た。
何の冗談か、SFやファンタジーに出てくるような、機械の巨人が姿を見せて。
―3―
「つまり、君達はあの男に連れて来られた、と?」
「はい、おそらく、ですけど・・・・・・」
「おそらく?」
「う、うん・・・・私達、公園にいたはずなんだけど、気付いたらあそこに・・・・」
二人は戸惑いながらも機械の巨人のパイロットとコンタクトをとり、近くの町に連れてきて貰っていた。
その町までの風景は、明らかに日本のそれと違っていた。
町に着いてからの光景も、二人を驚かせるのに十分すぎるほどだった。
目の前の女性も、その光景の一部であった。
「エアデ・・・・これってもしかして・・・・」
「あぁ、奴の実験が原因だろうな。成功か失敗かは知らないけど・・・・・・」
小さいのである。
背が小さいとか、幼いとかそういう意味では無い。いわゆる『小人』と呼べるサイズなのだ。
「えっと・・・・そちらの方は・・・・・・?」
「え?あぁ、自己紹介がまだだったね。僕はエアデ・ドラゴーラ。こっちは契約した精霊の」
「アルジレーム・グランディオ。よろしく、リン、カエデ?」
「はぁ・・・・」
「よろしくお願いします・・・・・・」
楓の問いへの答えは、更に二人を混乱させる答えだった。
二人は小声で会議を始める。
「何?精霊って何?からかわれてる?私達からかわれてるの?」
「でも、あのロボットの事もあるし、周り良く観て見ると・・・・・・」
「へ?・・・・・・・・え?」
燐が周りを見渡すと、そこには『精霊』と名乗った女性のようなものと至極当然のようにコミュニケーションをとっている人々が町中にいた。
「・・・・・・マジもんっすか」
「? どうしたの?」
「いえ、こっちの話で・・・・・・」
「とりあえず、町長の所に行こうか。行く当ても無いなら今日の宿だけでも確保しないと、だろう?」
「優しい人だから、一晩くらい泊めてくれると思うわよ?私達もお世話になってるし」
「えっと、じゃあ・・・・・・道案内、お願いしても良いですか?」
「よし、そうと決まればさっそく行こう。」
人間三人と精霊一人の四人連れは、町長宅を目指して歩きだした。
・・・・・・一人は空を飛んで、だが。
―5―
「アクナイトに連れられて・・・・・・と?」
「えぇ、詳しい話を聞かない事には分かりませんが・・・・・・」
二人を連れてきてしばらくして、町長と燐達を助けた青年―エアデがテーブルを挟んで会話をしていた。
「今日はもう遅い、詳しい話はまた明日聞く事にしよう」
「そうですね。それで、あの二人は?」
「あぁ、一人は家内を手伝って部屋の準備、一人は今風呂に入ってるよ」
言わずもがな、手伝いをしているのは楓で、入浴しているのが燐である。
「・・・・・・あれ?そういえばアルムは・・・・・・」
「お主・・・・自分の精霊の所在くらい把握しておかないか・・・・・・」
彼がポンコツと言われる所以が、そこにある。
―6―
「ふぃー、一軒家に露天風呂があるなんて、流石町長さんだねー」
全国の町長がそんな贅沢をしているわけではないが、燐の中ではそう言うイメージがあるらしい。
夜空を眺めながらぼーっとしていると、扉が開く音がした。
「ご一緒しても良いかしら?」
「あ、あぁ、どうぞ。えっと・・・・・・」
「アルジレームよ。アルムで良いわ」
「はぁ・・・・・・」
アルジレームと名乗った精霊が浴場に入って来た。
妖精である彼女は、サイズが小さいだけで、雰囲気としては大人の女性のそれであった。
ふと、精霊の視線が燐に向いているのに気付く。
「な、なに?私、楓と違ってあんまり育って無いから・・・・・・」
「え?あぁ、ごめんなさい。私が気になったのは、右胸の上のその・・・・・・」
「あぁ、これ?小さい頃からあるアザで、ちょっと前までは私も気にしてたんだけどねー」
「・・・・・・・・アザ?」
「ん?」
「いいえ、なんでも」
そこからぴったりと会話が途切れてしまい、気まずい空気が流れる。
「じゃ、じゃあ私そろそろ上がるね?」
「えぇ、また後でね」
「ごゆっくりどうぞー」
いそいそと、浴場を後にした。
―7―
町長夫婦等と夕食を終え、二人はあてがわれた部屋でくつろいでいた。
「なんかでっかいロボットとか、精霊だとか・・・・どう思う?」
「どう思うって言われても・・・・・・夢、じゃないよね」
「夢なら覚めて欲しいもんだけどねぇ」
二人して溜息をついて、燐が窓の外に目を向けて見ると、小さな人影が見えた
「うわぁぁぁぁっ?!」
「だ、誰っ?!」
「どうした?!」
「何事?!・・・・・・・・って、貴方、どうしてここに?」
燐の悲鳴を聞いて、エアデとアルムの二人が駆け付けたが、
どうやらアルムはその人影と面識があるようで、窓に向かって話しかけた。
「いや、なんか余所モンが来たって言うからどんな奴か見ておこうと思ってな」
「そんな理由で女の子の部屋を覗きに来たの?良い趣味してるわね、ヴェニティリオ?」
「男か女か知らなかったもんでね。ま、態々見に来るほどのもんでも無かったけどな」
「はぁ?!」
「んじゃ、邪魔したな」
燐の抗議を無視して、ヴェニティリオと呼ばれた精霊はその場を後にした。
呆然としてる燐に代わって、楓が疑問を口にする。
「エアデさん、今のは・・・・・・」
「あぁ、あれはヴェニティリオ・ブレンネア・・・・ここらをぶらついてる精霊だよ」
「誰とも契約しないでほっつき歩いて・・・・そもそも契約をする気すら無いんじゃないかしら」
「野良精霊?、ってワケね・・・・・・」
「ほら、夜ももう遅いんだし、カーテン締めて早く寝なさい。夜更かしは身体に毒よ?」
「じゃ、おやすみ、二人とも」
「ん、おやすみー」
「はい、おやすみなさい」
不思議な事だらけの二人の体験は、こうして1日目を終えた。
―8―
寝ぼけ眼をこすりながら、燐は階段を降りて来た。
「あら、おはよう、リン」
「・・・・オハヨウゴザイマス」
ほぼ反射に近い形で挨拶を返す。
「おはよう、燐。顔、洗ってきたら?」
「ん、そーするー・・・・・・はぁ、夢じゃなかったか・・・・・・」
溜息をつきながら、洗面台を目指した。
「え、出かけるんですか?」
朝食を食べながら、町長夫婦からそんな話題が持ち出された。
「あぁ、急に隣町に行かなくてはいけなくなってな、夜までには帰ってくる。話はそれからで良いか?」
「夜・・・・ですか・・・・」
「まぁ、構わないっちゃ構わないけど・・・・」
「じゃあ、それまで私達が町の案内をしてあげましょうか?」
「・・・・仕方ないね、そうしよっか」
「うん、アルム、よろしくね」
「えぇ、それじゃあ一時間後に出発しましょう」
「おー」
「・・・・・・僕の意思は?」
彼がポンコツと呼ばれる所以が、そこにあった。
―9―
昼を過ぎる頃には町を一通り回り終えたところだった。
「それにしても・・・・そこかしこにいるねぇ、精霊さん」
「精霊がそんなに珍しいかい?」
「えぇ、まぁ・・・・・・」
「精霊が珍しいなんてむしろこっちが珍しいと思ってしまうよ」
「そうね。まるで精霊が存在してない所から来たみたい」
「・・・・・・え?」
「いえ、なんでもないわ」
「・・・・・・・・あ」
四人で会話していると、少し離れた所から昨晩の精霊、ヴェニティリオが燐達を見つめていた。
「あいつ・・・・・・」
「あら、どうしたのかしら。もしかして、惚れられちゃった?」
「ほ、惚れ?!」
燐は顔を赤くし、あわて始めた。
そんな燐を尻目に、楓はエアデに疑問を問いかけた
「精霊もそう言う感情ってあるんですか?」
「いや、精霊の場合、ちょっと意味合いは異なるんだよ」
「と言うと?」
「契約したくなるような相手を見つけた、みたいな感じかな?まぁ、その相手の紋章が空いてるかどうかは別問題だね」
そう言って、彼は右手の甲に軽く視線を落とした。
「それが紋章ですか?」
「ん?あぁ、これが僕の紋章。アルムと契約した土の紋章だよ。君達は?」
「え?いや、私達は・・・・」
「その・・・・」
二人が質問の答えに戸惑っていると、大きな唸り声と共に爆音が響き渡った。
―10―
「ヲオォォォォォォォォッ!!」
怒号ッ!!-ドゴォッ!!-
燐達の視界に映ったそれを例えるなら黒い岩。
艶の無い黒。刺々しく荒々しい岩。
その黒い岩が唸り吼え、大地を抉り、石が舞う。
「何ですか一体?!」
「またファンタジー的な何か?!」
「魔獣・・・・こんな近くまで来てたとは・・・・・・」
「行くわよ、エアデ!」
「あぁ!二人は早く逃げて!!」
「ちょっと待って!あれは何?!」
「説明は後でするわ。今は一刻も早く逃げて!!」
「・・・・行こう、燐」
「・・・・・・・・うん」
燐と楓は戸惑いながらもエアデ達から距離をとるように走って行った。
「準備は良いか?アルム」
「いつでも良いわ。エアデ」
逃げながら振り返った燐の目には黄色い光に包まれた二人の姿が映り、
光が強まった次の瞬間、あのときの機械の巨人が立っていた。
―11―
「アルム、シルトティエラの調子は?」
『魔力供給と左腕部に少し異常、でも、あまり気にしなくていいかも』
「そうか、じゃあ、さっさとケリをつけるぞ!!」
『えぇ!!』
水色の機械の巨人――魔導機シルトティエラのコクピットに、二人の声が響く。
その姿を認識した黒い岩―魔獣と呼ばれたそれ―は一直線に突進してきた。
その突進を左手に持つ盾で防ぐ。
「くっ!!四足獣型の突進力は侮れないな・・・・・・」
『後ろにはリン達がいるんだから、尚更負けられないわよ!!』
「分かってる・・・・よっ!!」
魔獣を左手の盾でかち上げ、その腹を右手の剣で切り裂く。
だがその剣閃は深く傷をつけるまでには至らなかった。
そこから激しい攻防が始まる。
魔獣の爪が魔導機を襲う。
魔導機の刃が魔獣の腕に傷をつける。
魔獣牙が盾を穿ち、魔導機の剣が甲殻に罅を入れる。
盾を失いながらも戦う騎士、鎧が剥がれながらも暴れる魔獣。
永遠に続くとも思われた攻防の均衡が、崩れた。
「うわぁぁぁっ?!」『きゃぁぁぁぁぁっ?!』
盾を失った魔導機は魔獣の突進に耐えられず、地に押し倒された。
その衝撃で周囲の建物が崩れ、石や木片が飛び散った。
破片を追ったシルトティエラの目が映したその先に、子供の姿。
泣きじゃくる少年はその場でうずくまり、竦み、その場を動く事が出来ないでいた。
「?!まずい、アルム!!」
『ダメ、さっきの衝撃で間接部に異常、左腕は完全に動かない!!』
「くっそ・・・・・・!!」
二人が諦め、その言葉を頭に浮かべた瞬間、信じられないものがその目に映った。
―12―
目の前で常識を逸した光景が繰り広げられている。
ロボットと大きな獣がバトルを繰り広げている。
まるでアニメか特撮か。けれども、それは確かに目の前で繰り広げられている”現実”である。
「燐、これって・・・・・・」
「私に訊かれても・・・・・・・・あぁっ!!」
目の前で水色の巨体が崩れ落ち、黒い獣が雄叫びをあげる。
瓦礫が飛び散り、舞い上がる。
燐は、その破片の行方の先に気がついた。男の子が、いる。
そう認識した瞬間、燐は走りだしていた。
「ちょっと、燐?!危ないって!!」
楓の制止を振り切って、燐は少年のもとへ駆けだした。
男の子に覆いかぶさる形で破片が刺さるのを覚悟し、目を閉じた。
が、いつまで経ってもその瞬間は来なかった。
それをいぶかしんだ燐は、恐る恐る目を開けた。そこに待っていたのは
「馬鹿野郎!!一体何を考えてやがる!?危ねぇだろうが!!」
例の精霊、ヴェニティリオの罵声だった。
「何って・・・・この子が危なかったから助けに来たんでしょ?!」
「それで自分が危険な目にあってりゃ世話ねぇだろ!!」
「何も無かったから結果オーライでしょうが!!」
「俺がいなきゃ串刺しだったんだぞ!!分かってんのか?!」
「・・・・・・・え?」
「ったく、何考えてんだよ、本当・・・・・・」
「だって、ほっとけないでしょ?」
「は?」
「もし自分が助けられる人がいたら、手を伸ばしたい・・・・そう思ったら身体が勝手に動いちゃって・・・・」
「は・・・・ははっ・・・・・・」
燐が心中を吐き出すと、今度はヴェニティリオが笑いを吐き出した。
その光景を、今なお危険の中にありながら、少年と燐は唖然と見つめていた。
「ハハハハハハハハハハハハッ!!」
「な、何がおかしいの?!あんただって私が危なかったから飛び込んできたんでしょ?!」
「いや、すまない。面白いな、お前」
「は?!」
「お前、この危機を打破する力、欲しくないか?」
「え?そりゃ、なんとかなるなら・・・・・・」
「名前は?」
「え?」
「だから、名前だよ。お前の名前」
「えっと、燐・・・・岸島 燐、だけど・・・・・・」
「リン、緊急事態だから色んなプロセスすっ飛ばすけど構わないな?」
「よ、よくわかんないけど、オッケー!!」
「良い返事だ!!・・・・・・方陣展開、炎騎召喚!!」
地面に光の円が描かれ、円の中に複雑な紋様が描かれてゆく。
その紋様はやがて一つの図形となり、円は紅く輝いた。
光が最大限に膨れ上がった後、燐が次に目を開いた時、そこは見慣れぬ空間だった。
―13―
信じられない光景を見た。
エアデとアルムは目を疑った。
瓦礫に襲われた少年を燐が助けに駆けだす。
その二人を守るように炎が瓦礫を燃やし弾く、そこまでは、良い。
その次、だ。
燐と炎の主―ヴェニティリオが言い争いをしていたと思ったら、突然地面に円が描かれた。
地に描かれた円は複雑さを増し、紅い光を発する。
間違いない、あれは正しく、魔導機召喚の陣。
それを確認するが早いか、方陣が目を焼くよう光を発したその跡には、紅の巨人が、立っていた。
「・・・・・・え?えぇっ?!なにこれ?!」
『正式な手順を踏んで無いから出力は本来の七割程度か・・・・まぁ、充分だろ』
「ちょっと、どうなってんの?!」
『リッタールベリア、俺の呼べる魔導機。お前が望んだ、力だ』
「私が望んだ、って・・・・・・」
『見た所あの魔導機、内部がトラブって動けそうに無ぇ。奴を何とかするなら、俺達が何とかするしかない』
「・・・・・・卑怯だね、あんた」
『ここで逃げだす方が、卑怯じゃねぇか?』
「言ってくれるね、良いよ、やってやろうじゃない!!で、どうすりゃいいの!?」
『お前のやりたいようにやりゃあ良い!!足りないところは俺が補ってやる、思いっきりやっちまえ!!』
「オッケー、んじゃ、行くよ!!」
魔導機リッタールベリアの右手に一本の剣が現れる。
陽の光を受け輝く白銀の両刃剣。
姿勢を低くし剣を構え、標的をこちらに変えた魔獣に走り出す。
魔獣の牙がリッタールベリアの左腕にめり込み、腕自体が軋みを上げる。
「まずい、そのまま食いちぎられるぞ!!」
エアデは思わず大声を上げたが、その忠告は無意味に終わる。
「噛まれて上等ォォォォォォッ!!」
『無茶しやがるなぁ、オイッ!!』
身体を起こし、魔獣をそのまま、持ち上げる。
深くめり込んだ牙はなかなか抜けず、そのまま前足が宙に浮く。
『リン、今だ!!』
「おぉぉぉぉぉぉッ!!」
ズンッ!!
一番最初にシルトティエラが切り裂いた傷、そこに剣が突き刺り、刃が深く深く魔獣に刺さってゆく。
『よし!!リン、そのままブッ刺しとけ!!』
「う、うん!!」
ヴェニティリオが指示した後、リッタールベリアの剣が炎に包まれ、炎はそのまま魔獣を内側から焼き焦がす。
「ヲ、オォォォォォォォッ!!」
魔獣が断末魔の叫びを上げ、リッタールベリアの左腕から離れる。
動きは鈍り、その身体から炎が上がる。
『このままぶった斬るぞ、リン!!』
「オッケー、ハァァァァァァァッ!!」
リッタールベリアの剣の炎が勢いを増し、炎の刃を形成する。
魔を焼きつくす、灼熱の刃。
『これで・・・・・・』「トドメだぁぁぁぁぁぁっ!!」
炎の刃が魔獣を縦一閃に斬り伏せる。
その場に崩れ落ちた魔獣は、低い唸りを上げて紅い炎と共に消滅した。
「・・・・・・・・やっつけたの?」
『あぁ、お前が守ったんだよ。この町を、な』
リッタールベリアのコクピットで、現実感の無い様子で燐が呟く。
それが、燐の初陣。初の勝利だった。
―14―
「あの魔導機は・・・・・・」
『炎の精霊、状況からしてヴェニティリオでしょうね』
「それに、装主になったのは・・・・・・リン?」
『えぇ。そうでしょうね・・・・・・』
「・・・・・・どうなってるんだ、一体・・・・・・」
『そんなの、私が聞きたいくらいよ・・・・・・』
駆動系の異常で立ち上がる事すらできない魔導機の中で、エアデとアルムはただ呆然と、現状を把握できずにいた。
魔導戦騎 リッタールベリア
第1話『立ち上がる
紅
蓮の炎』
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