ナイチンゲールの世界 (25)
遠い異国の戦場に近い野戦病院で、怪我や病気の兵士を看護するのは、大変な仕事です。まして、看護婦という仕事は、いまだ社会的には卑しい仕事と考えられていたのです。こんな仕事の責任者を引き受けてくれる人物など、そう簡単に見つかるものではありません。
悩んだ末に、シドニー・ハーバーと軍務大臣は、ローマで知り合ってからというもの、家族ぐるみで、ずっと親しく付き合っているナイチンゲールに白羽の矢を立てたのです。フローレンスが、僅か1年でハーレー街の病院を立て直し、今では指折りの優良病院に転換させた手腕も、病院の理事を兼務しているリズ夫人から、折に触れて聞かされ、承知していたのです。
知り合いでもある上流階級の女性に、こんな危険な仕事を依頼してよいものだろうか。彼が逡巡する理由はそこにありました。ハーバーとは、思い切ってフローレンスに手紙を書きます。現存するその手紙には、「政府がスクタリに派遣する看護婦チームの責任者になって欲しい」旨が記されていました。(スクタリは、ボスフォラス海峡に近い黒海沿岸のトルコの町です)
ところが、そんな折、フローレンス自身も、『タイムズ』誌の記事を読み、自らクリミアの戦地で、傷病兵の看護をしたいと、考えるようになっていたのです。
それには先ず、、ハーレー街の病院における施設長の仕事を辞めなければなりません。フローレンスは、ハーバート夫人に手紙を書き、「病院を辞めさせて欲しい」と願いでたのです。
シドニー・ハーバートにとって、フローレンスが引き受けてくれるなら、それは願ってもないことでした。この難しい仕事を、安心して任せられる適任者は、彼女を置いてほかにはいなかったからです。教養があり、ナースの訓練も受けており、計数にも明るく、組織力も備えており、しかも社交界の付き合いを通して、政府関係者にも知り合いが多いと来るのですから……
妻に届いたフローレンスの手紙を見せられたとき、シドニー・ハーバートは、狂喜して喜びました。フローレンスもまた、ハーバート大臣の手紙に接して、大いに喜びました。
10月18日、フローレンスは、政府から正式の任命書を受領しました。そこには、「ミス・ナイチンゲールを、トルコのイギリス陸軍病院付き看護婦監督官に任命する」と書かれていました。
政府のこの決定は、『タイムズ』などの新聞を通じて、すぐにイギリス中に広まりました。気の毒な兵士たちに、救いの手が差し伸べられる。イギリス中がこのニュースを歓迎したのです。
しかし、フローレンスには、出発前にしなければならないことが、いっぱい残っていました。それでも出発は急がなければなりません。嵐のような日々が続きました。
続く
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